265.アキラ、後ずさる。

 漬けておいた梅漬けを一粒食べてみる。




「おおおぉぉぉ・・・酸っぱいけど、うまぃ!! 」




自分で漬けておいてなんだが、いい出来である。もう一粒食べる。




「ああ、これは白米がほしくなるなぁ・・・。」




そう白飯を欲していると、様子を見ていた女性陣が物珍しそうに見てくる。どうやら、梅漬けを食べてみたいようだ。




どんな反応をするか、見てみたくなり1人づつ食べさせてみる。皆、恐る恐る梅干しを見つめている。最初に口をつけたのは、アルテシア。




パクっと一口、梅漬けを齧る。すると、




「 >x< 」




やはり、酸っぱかったようで予想通りの反応する。続いて、イリスとミユが味見する。




イリスも齧るとすぐに、




「 >x< 」




アルテシアと同じ反応する。見てて面白い。一方のミユは、あまりの酸っぱさに、目から涙がで始める。




「 ;x; 」




テラはというと、匂いからして酸っぱい顔をしており涙目になっている。無理に食べなくても大丈夫だよと、言うと少しガッカリした様子で諦める。




どうやら、食べては見たかったようだが、あまりの酸味の香りに断念したようだ。今度、テラでも食べやすい梅干しを作ってみるかと考える。




一方のまゆきはというと、梅干しがお口にあったようで、




「 ´ω` 」 




と甘美な表情を浮かべてもう一個食べていた。




 それから、皮を漬けた樽を外へと出していると、ハンターセンスが近くの林に違和感を感じる。いつも違い、様子が変だ。そう思い、近づいてみる。




嫌な予感が脳内を駆け巡る。なんと林に生えていた山菜が何物かによって、食い荒らされていた。




そして、そこに見たこともないような大きさの糞が残されていた。しばらく、言葉を失ってしまう。強烈な鼻を刺すような臭いが漂ってくる。




その匂いからして、雑食性の糞だとわかる。そして、精霊さんもこの臭いから、その動物が近くいる判定を下す。




人間のような糞、今まで見たことがない。嫌な汗が噴き出てくる・・・。




ハンターセンスが、前方の林に何かがいるのを感じとって警戒をならす。




その場から、すぐに走り去りたかったが、その何物かを刺激しないようにゆっくりゆっくりと家の方へと離れていく。




その殺気から、その物の正体を察する。




『ブォォォオオオオオオオオオオオオ!!!!』




凄まじい音が森に響く!! この音からして、猪なんて小物ではない。森の支配者たるクマが、林を挟んだ向かい側にいる!! 




その事実に肝が冷えるが、ゆっくりと後ろ向きに下がる。林の中に大きな二つの目がこちらをじっと見つめていることに気付く。




そうして、後ろ向きに下がって林を抜ける頃には、その大きな二つの目は林の奥へと消えていた。




あまりの恐怖に、顔が笑っていたことに気付く。




「ハハッ・・・生きてら・・・。」




腰が抜けて、その場に倒れ込むのであった。

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