229.アキラ、追いたてる。
そして、翌朝。マシカ十頭狩猟の約束の日が訪れる。いつものように、狩りへと出かける。なぜあんな約束をしたのかと問われれば、
ある意味、これは自分へのケジメでもある。約束をしなくても、彼女たちは自分の言うことなら、最終的に聞いてくれるであろう。しかし、それではいけない。
ここで、約束を果たして、10000リラの貯金は可能であると証明して、安心させる必要があるのだ。
そんなことを考えているうちに、シカの足跡を発見する。そうして、辺りをイーグルビューで見渡すと、至る所に足跡がある。
どうやら、シカの群れの足跡を発見したようで、ハチが匂いを嗅いでいく。
「ワン! (ボチュ、こっち! )」
そう言って、進んでいくハチを追いかける。スキル【目的地】と現在地を照らし合わせる。するとこの先、切り立った崖があることに気が付く。
そうして、しばらく行くとシカの群れを発見する。数は、11匹、構成は、オス一匹に、メス7匹の子供のシカ3匹。さて、どうやって、狩ろうかと考える。シカの群れの向こうは、崖だ。
うまくいけば、シカの群れを袋小路にすることができるのではと、思いつく。それに、こちらにはハチがいる。
牧羊犬が、羊を追いたてるようにシカを追いたててみる。
「ハチ、あの群れを向こうに追い立てれる? 」
と聞くと、
「できまちゅ! 」
と言う。作戦をハチに言い聞かせる。
「合図をしたら、吠えて追いたててくれよ。」
そうして、二手に分かれる。それでは、さっそくシカを狩っていこう!!
まずは、確実に仕留めれる位置まで近づいていき、矢を構える。呼吸を整え、一頭のシカに狙いを定める。そして、矢を放つ!
草をむしっていたシカの頭を貫通する。突然の奇襲に群れは、混乱する。その隙に、二発目を構えて、射る!
閃光は、別のシカの胴体を貫き、そこから血が吹き出る!
やっと、状況が掴めたのかシカの群れは逃げだす。
「ハチ! 」
と合図を出す。手筈通り、ハチが吠えて崖の方へと群れを追いこんでいく。その間に、頭を貫いたシカに近づき、大動脈にナイフを突き刺す。
血が吹き出たのを確認したと同時に、群れの後を追う。そうして、追いこまれたシカたちは、僕達に対して強い嫌悪音をぶつけて来る。
「ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ!! 」
「ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ!! 」
「ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ!! 」
「ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ・ゲ!! 」
その圧に圧倒されそうになるが、スキル【平常心】がなんとか堪えてくれる。僕は、ただルーチンを行っていく。
矢を構えて、射る。一匹、また一匹と、群れの数はどんどん減っていく。
そのうち、一匹が僕達を通りぬけようとして、こちらに向かってくる。すばやくそれに反応して、対処する。この対応に、シカたちは完全に逃げることを諦める。
機械的に、だが的確に頭を射ぬいていく。そして、群れはその意味を次第に失っていくのであった。最後に残ったのは、小ジカたちだった。
「宿主、どうしますか? 」
と精霊さんが問うが、その答え、僕は躊躇わず、射ることだった。
恐怖に満ちた瞳達は、恨めしそうに僕を見てくる。しかし、ここで見逃しても、彼らには悲惨な未来しか待っていない。それなら、ここで仕留める。
そうして、群れは死体の山へと変貌するのであった。
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