230.アキラ、貯めれる。

 自分が作った死体の山を、切り崩していく。一頭、一頭の大動脈にナイフを当てて、血を抜いていく。その血で辺りは、真っ赤な池となる。


「ハチ、皆を呼んで来て。」


とハチに頼み、僕はシカの腹を裂いていく。小ジカの死体に直面した瞬間、自分が子供も殺したことを実感する。


だが、今の僕はそれに対して、何の感情も抱かなかった。前の僕なら、可哀想や酷いことをしたと嘆くだろう。しかし、今は違う。


これも自然の摂理。弱肉強食の世界、そう割り切ってしまう。それは自分にも当てはまる。いつ、クマやオオカミに殺されてもおかしくない。


そうならないために、もっと力を着けていく必要がある。そう考えながら、

内臓を取り出していくのであった。


しばらくした後に、彼女らが到着する。その光景に驚愕の表情を現す。


「これ、全部ひとりでやったの・・・。あなた、すごいわね・・・。」


イリスがその光景が信じられなかった。


「いち、に、さん・・・十頭!! 本当に狩ったんですね!! 」


指で数を数えながら、テラがその事実を口にする。これで、自分の中でのケジメをつけた。晴れて、僕は10000リラを貯めることを許される。


そうして、アルテシアの水魔術で、死体をきれいに洗浄したのち、イリスが魔術で、氷を詰めていく。一方のハチは、内臓をムシャムシャと食べている。


その光景を見て、


「嗚呼、その手があったか。」


ピン! と閃く。今度の狩りで、それをやろうかと思いつく。


そうして、すべての死体の処理が終わる。彼女らにその場に待機してもらっている間に、僕は一頭ずつ家へと持ち帰る。


夕方くらいには、すべてのシカを家へと運びこむ。そうすると、家は、至る所に、干し肉、塩漬け肉。さらに、今日狩ったシカ肉と全体的に赤色が多くなる。


まゆきが一言、


「これ全部、食べきれる気がしませんね。」


とはっきりと申す。う~~ん、明日、馬車で今日狩ったシカ肉でも、売り行こうかと考えるのであった。


 そして、翌日、馬車に狩った群れの死体を運び入れ、少し迂回するが村へと向かうのであった。なぜか、皆付いてきた。


多分、僕がほしがる魔術書がどういうものか、見たいのだろう。それと、村で買い物もするらしく、何を買うかで、彼女たちは盛り上がっていた。


馬くんは、けっこうな重量にも関わらず顔色一つ変えず、引いていく。馬君と呼吸を合わせながら、手綱を操っていく。


どれくらいで、売れるだろうかと考えながら、お昼ぐらいには到着するのであった。しかし、村は前に来た時とは打って変わって、異様な雰囲気に包まれていた。

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