206.アキラ、驕る。
牡丹肉、つまりはイノシシだ。その肉は、元いた世界で一度、食べたことがあるのだが、うまかった。本当にうまかった。ならば、何が何でも狩るしかない。
ハチと一緒に足跡を追っていく。すると、う●こを見つける。状況からして、このイノシシのう●こであることは、間違いないのだが雑食の生き物のう●こは臭いと聞く。
「精霊さん・・・嗅がなきゃ駄目?」
と聞くと、
「はい、宿主。お願いします。」
と仰る。恐る恐るイノシシのう●こを嗅ぐ。シカの糞より、強烈な臭さ!!
「くっさっ!!! 」
ただその一言の感想が出る。そうして、精霊さんの糞チェックの結果が出る。
「宿主、これは、たいぶ新鮮です。」
その結果を鑑みて、この近くにイノシシが、いることがわかる。それが分かれば、足音が出ないように移動していく。
そして小さなイノシシを発見する。そのイノシシは鼻を器用に使い、地面を掘っていた。どうやら、餌を探しているようだ。そのイノシシに気付かれないように、慎重に慎重に近づいていく。
「今の僕なら、このサイズ余裕だな。」
と余裕をかましていた次の瞬間、運が悪いことに背後からイノシシに向かって風が吹いてしまう。その瞬間、餌さがしに夢中になっていたイノシシが頭を上げて周囲を警戒する。
「まずい・・・っ!バレた!」
と思った瞬間には、イノシシはその場から足早に逃げていく。すぐに矢を取り、弦を引いて発射する!!
矢は、放物線を描きながら、イノシシの方へ吸い込まれるように、飛んでいく。仕留めたと思った瞬間、イノシシが急に方向転換をする!
矢は目標を見失ったように、木に貫通する。
『ガッ!』
と木を抉る音が響く。
その音を聞いたイノシシは、猪突猛進の如く走っていく。そうして、気付いた時には、森の中に消えていたのであった。
「くそぉ!!」
まさか、獲物に逃げられるとは思っていなかったため、思わず声が出てしまう。スキル【平常心】がすぐに働いて、冷静になる。
そして、先ほどの失敗を振り返る。なぜ、仕留めれなかったか、考えるに運がなかったことは仕方ないと言え、心のどこかに強くなったことへの驕りがあったのではないかと、考える。
それが、結果的に、仕留め損ねる要因になってしまった。もっと冷静に判断していれば、イノシシを狩れていたかもしれないと反省し、気持ちを切り替える。
逃げてしまったものは、しょうがない。それでもいつまでもクヨクヨしていたら、肝心の獲物が逃げてしまう。幸いなことに、獲物は若い小さなイノシシであるため、
ちょっと、距離を離せば、また警戒心を解くはずだ。そう思い、再度イノシシの足跡を追うのであった。
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