196.アキラ、死に抗う。

 洞窟の中へと入っていく。ガスの異様な鼻を刺す匂いが漂ってくる、それでも、突き進むしかない。奴も洞窟内に入ってきたのか、




『コツコツ』




と足音がする。もう前も後ろも死の匂いしかしない中、この状況を打開する糸口を必死に模索する。




刻々と、匂いがきつくなっていくのが、ますます僕を焦らす。動揺で、足を竦みそうになるが、それでも走る。




ガスの影響で頭がクラクラとし始める。相手も、同じなのか先ほどから、斬撃はなく、それでも足音は聞こえる。




しかし、それは何の打開策にもなっていない。もうすぐ行けば、行き止まりが来る。もう終わりなのかと、思ってしまう。ガスを吸い込んで、胸が焼けそうなくらい、苦しい。




その時、胸の痛みで、ハッと思いつく。しかし、それはあまりにも無謀で、捨て身で、作戦と呼ぶのには、程遠いものであった。それでも、確実に相手の方がダメージは、大きいはずと思いながらも、微かな希望にすがる。




分かれ道、迷わず空気が通っている方を選ぶ。多分、奴も同じ選択をするはずだと信じる。もうこうなれば、自棄だ。自分の運命を時の運にまかす。




 はるか彼方に一筋の光が見える。そして、風を感じる。奴の足音は後方に、聞こえる。そうして、刹那、身体を180度させて後ろを向き、矢を手に取る。そして、放つと同時に、




全身全霊を持って、光へ駆ける。矢は奴の方へ飛んでいくが、奇しくも奴はそれを




『カーン』




と弾く。




一瞬の出来事であった。弾いた瞬間に、火花が散る。その花は、空を舞う。刹那、焚きこめる匂いに引火し一瞬で、緋色の花びらを咲かす!!それに音色を付け加えるように爆音を起こす。




『ッーーーー!! 』




「なっ・・・。」




奴の断末魔さえかき消すほどの、爆音!! 




そして、紅蓮の炎が迫ってくる。それに押されるが如く風圧を感じ、身体が浮いた瞬間、一気に吹き飛ばされる。そして、気がついた瞬間には、




『バッシャーーーン!!』




と水の中に飛び込むように、吹き飛ばされる。




『ガラガラガラガラン!!!!!! 』




と洞窟内の天井が崩れる音を聞くと、同時に、重力が池の底に身体を打ち付ける。意識が飛びそうになるが、気力がそれを掴み、なんとか踏みとどまる。




無意識に、身体が空気を求めて、浮上する。まだ熱い空気が送られ、肺を駆け巡る。その瞬間、意識が覚醒する。




そして、砕け散った欠片たちが、斜光に照らされ輝くのであった。

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