195.アキラ、燃やす。
奥に進んでいくうちに、木が鬱蒼と茂り、それにより見通しが悪く、入り組んだ地形となっており、まさに獣道もなにもない場所だ。
しかし、こちらは、伊達に何日も住んでいなかったので、獣道を把握しており、森の主のように、どんどん奥に進んでいく。
「宿主、そろそろ、ホットラインに到着します。」
その言葉を聞いた瞬間、少し森が開けた場所に出る。すると、僕はおもむろに後ろを向く。そして、何かが染み付いた地面に、電流を放つ。すると、地面から扇状に火が吹き出ていく。そうして、木々に燃え広がっていく。
その火は、瞬く間に、目の前の森を駆けていく。そうして、まだ鬱蒼と茂る森の中にいるものたちを炎が飲み込む。
「熱い! 熱い!! 」
「誰か、誰か助けてくれ!! 」
その悲鳴が炎の中から聞こえる。なぜこんなにも、火の手が早いかというと、原油を少々多めに、捲いておいたからだ。森の精霊さんがいたら、申し訳ないと思いながらも、燃えている森を迂回していく。
しばらく、進んでいくと火の手を逃げ切って、ボロボロな3人組を見つける。物陰から、隠れて、放つ。一人の頭に命中、ほかのふたりは、まさかの奇襲に動揺している。続けて、もう一人に狙いを定めて、放つ。
見事、足に命中し、体勢を崩してうずくまる。最後のひとりに、ナイフを手に持ち、近づいていく。
男もそれに気付き、剣を持って走って、近づいてくる。そして、剣を大きく振りかぶる。その瞬間、茂みに隠れていたハチが男の足に噛みつく。まさかの伏兵に、男は怯む。その瞬間、持っていたナイフを顔に、向かって投げる。
スキル【命中】により、突き刺さり、男が倒れる。うずくまっていた男が、
「助けてくれ!! 助けてくれ!! 」
と叫ぶが、僕は、容赦なく追撃の一撃を加える。
周りは火の燃える音だけしか、聞こえない状態になる。ハンターセンスで、周囲を察知するが、反応はなく、これで終わったかと思った。
しかし、次の瞬間、異様な寒気と身の危険を訴える感覚が、身体全身を伝わる。すぐに、足が動き、洞窟の方へと駆ける。
奴が来た、最後の最後で、お出ましだ。どうやら、先ほどの男の声に反応して、こちらに向かってきているのだろう。どんどん、寒気が大きくなってくる。ハチもそれに気付いたようで、一緒に逃げていく。
「ハチ、ここからは、僕の戦いだ。お前は、逃げろ。」
と訴えかける。ハチはそれを了承するが如く、僕から離れていく。
「またな、ハチ。」
そう僕は呟きながら、洞窟へと駆けていく。段々と微かな足音が近づいてくる。しかし、正確にこちらに向かってきている。何の対策もできないまま、デッドラインへと目指す。
ついに、斬撃が後ろから飛んでくる。
「そう何度も、喰らうか! 」
と言って、避けようとするが、避けきれず二の腕が細い傷が付く。そして、斬撃に追い立てられるように、ガスが充満する洞窟内へと逃げるのであった。
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