194.アキラ、掛ける。
森の異様な静けさで目が醒める。朝食をいつも通り食べるが、心は穏やかでは、なかった。直感が告げる。これが、最後の食事になるかもしれないと。
「ごちそうさま。」
と手を合わせる。僕の異様な雰囲気を、ハチとウサギも感じとっているようであった。ウサギを囲っている柵を取り外してやる。
「今日から、君は自由だ。好きなところへ行きな・・・。」
ウサギは、少し頭を傾げる。
「ナンデ?オマエ、オレキライ?」
と困惑するウサギを置いて、ハチを連れて拠点を去るのであった。
森と街の境目付近では、怪しい集団が列を成していた。ハンターセンスが奴らは、危険であると告げる。いよいよ始まる戦いに足が震える。
「精霊さん、今までありがとうね・・・。」
言わなきゃいけないと思い、自然と、その言葉が出る。その言葉、心のどこかで、死ぬかもしれないと、思ったからであろうか。それを聞いた精霊さんは、
「宿主、それはこれが終わってからにしてください。」
やはり、僕以上に、僕のことを信じてくれていたようだ。
「・・・、ああ、そうだね。 じゃあ、そろそろ始めますか・・・っ! 」
その時を以て、長い長い戦いが始まるのであった。
初手、僕は超遠距離から、スキル【絶中】を使い、その集団の中で一番体格の良い大男に、狙いを定め、矢を放つ。
矢は高く伸びていき、大男目掛けて飛んでいく。
「アッッゥッ!!!」
と男の悲鳴が森に響く。集団は、騒然となり一時混乱するが、すぐに落ち付き、こちらに向かってくる。どうやら、奴らはこの手のことには、慣れているようだ。
奴らが、動き出すのを見て、こちらも森の奥へと逃げていく。しかし、段々と彼らが近づいてくるのを、背後に感じながら、森の中を走っていく。
一方の男たちは、森中の至るところに、血で見た事のない文字が描かれていることに、気付きながらも、矢を撃ってきたものを追う。
僕は、0と描かれた木の太い枝に、よじ登り、男たちが近づいてくるのを待つ。
その時、森の中に仕掛けた罠たちが、牙をむく。
「うわぁぁあぁぁ!! 」
「ぐわぁあああああ!! 」
と一人の男が、叫んだかと思えば、別の奴がまた叫びだす。
「ようこそ、第一次防衛ラインへ・・・。」
呟くように、言い放つ。男たちは、大混乱に陥る。それを感じとった僕は、矢を引く。
まずは、ツモに足をとられた男たちを射る。普段は、狙ってもなかなか命中しない距離だが、今は力加減がわかる。
なぜなら、罠を仕掛けている木の近くに、30、50、70などという、数字を描いているからだ。それを見ながら、力を考慮し、放つ。
矢は、吊るされた者の胴体や、足を貫いていく。下にいるものたちは、すぐにその文字周辺は危険だと、察知してその周辺から、離れてこちらに近づいてくる。
しかし、そんな行動を取ることぐらい、こちらも予測して、罠を配置している。スキル【罠師】の読み通りに、落とし穴に、残っていた半数が、落ちていく。
「うわぁああ、な、なんだこれは!! 」
「い、痛いっ!助けてくれ!」
と男たちはまた混乱に陥るが、残った十数人は、仲間の悲鳴を無視して、こちらに向かって来る。できるだけ、それを引きつけつつ、矢を放つ。
「うぎゃあああ!! 」
「ああああああ!! 」
と何人かを射ることに成功する。残るは、十人ほど。そして、追いつかれる前に、僕はさらに、森の奥へと逃げていくのであった。
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