197.アキラ、打つ手なし。
水の中から、這い出て周りの状況を把握する。どうやら、爆風で飛ばされたようだが、運よく水の中に落ちたおかげで、助かったようだ。
奴が、まだ生きているかと辺りを見渡すが、ハンターセンスは危険を知らせてこない。どうやら、運命が味方したらしい。
しかし、爆発により洞窟内は崩れてしまっていて、帰り道がないことに気付く。死の淵から脱したと思ったのに、困難が待ち受けていた。
天井の出口は、気の100mほどあり、壁を伝って登るのは、困難だとわかっていた。
どうやってか、ここから脱出する手立てを考える。
「おーーーい、誰か! 誰か! 助けてくれ! 」
大声で叫ぶが、何も反応がない。ここで、誰にも知られず死ぬのかと、そんな、不吉な考えが頭を駆け巡る。死にたくない! 死にたくない!
しかし、助かる方法が見当たらない。絶望の淵に突き落とされている時に、その声は洞穴に、響く。
「ワン! ワン! 」
上を見上げると、そこには、ハチが居た。
「あ、あっ! おーーーい、ハチ! ハチ! 助けてくれ! 頼む助けてくれ! 誰かを呼んできてくれ! お願いだ! 」
必死に、懇願する。すると、ハチはその場から、走り去っていく。一瞬、見えた微かな希望に、自分の命を託す。どうか、お願いだ。
それからは、唯一の出口を塞いでいる岩をどかそうと、足掻くがビクともしない。出口は完全に埋もれてしまっている。僕はその場で、踏ん張っていろいろと試すが、すべて徒労に終わる。
それから、どれくらいの日が経っただろうか、今は空腹で身体が動かない。空腹を紛らわすため、水を飲むがそれでも、段々と効果がなくなってきている。
走馬燈のようなものが見え始める。段々と意識が遠のいていく。その時、
「ワン! ワン! 」
と鳴く声が聞こえる。目を開けて上を見上げると、そこにはハチがいた。おお、最後に見届けに来たかと思って、見惚れていると、その後ろに人影
が見える。
「おーーーい! 大丈夫ですか!! 」
と聞いたことのある声が、洞穴内に響く。その声の主は、街の司教であった。その呼びかけに答えるために、身体にわずかに残っている気力を振り絞り、手を振る。
「少し、待っていてください。街に戻ってロープをありったけ持ってきます。」
あと、少しの辛抱だと思いながら、彼が戻ってくるのを待つ。しばらくの後、彼がロープを洞穴の下に、落としてくれる。それに僕は、必死にしがみつく。
上には、何人かの男達がいるのだろうか。
「よし、引き上げるぞ!」
「おーー!!」
と大人数の掛け声が聞こえてきて、ロープが段々と引き上げられる。気力で、なんとかロープにしがみ付き、上を見上げる。
希望の光が、僕を優しく包み込むのであった。
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