192.アキラ、決心。
僕は、絶望に打ちひしがれていた。食料が、すべて食い荒らされていた。
「どうしよう、今日の食べる分がない・・・。」
その言葉しか出なかった。獲物を追いかけようと考えたが、お腹も空き、確実な方を取りたくなる。精霊さんも、
「私もその意見に賛同します。」
そして、僕たちは、もう一度、街に出向くこととする。
この短期間の間に、街に戻ることは避けたかったが、生存のためには、仕方ない。残った荷物をまとめ、ハチとウサギちゃんを連れて、街を目指す。
道中は、空腹との戦いであった。
「お腹すいた~~、ああ、空いた~~。」
とさっきから、そればかりしか言っていない。ハチは、適当にどこかに行ったかと思うと、獲物を連れて戻ってくるが、持ってくるものがネズミばかりで、ちょっと怖いので、僕は、遠慮して食べない。
一方のウサギちゃんは、草をムシャムシャとお腹いっぱい食べている。あまりにも、満足気においしそうなお腹に、目が奪われる。
「ウサギちゃんって、元々、非常食で飼い始めたよね。じゃあ、今何じゃない!! 」
その殺気を感じとってか、勢いよく距離を取る。精霊さんに、
「宿主、食欲に飲まれてはなりません。」
となんとか自我を取り戻す。それほど、僕の空腹は限界に近い状態であった。遠くの方に街が見え始める頃には、空腹の峠も、越えていた。ほとんど財産がないので、ノルディンの司教さんに無心しようと考えて、街に入るのであった。
「おや、アキラ殿、よくぞご無事で、ささ、中へどうぞ。」
と気前よく建物の中へ入らせてくれる。狼とウサギは外でお留守番になる。
司教さんが
「今日はどういったご用件ですか?」
と優しく聞いてくれる。
「実は、猿に食料を全部荒らされまして・・・。」
と事情を正直に話すと、司教さんは、
「それは大変だったでしょう。さぁさぁ、今日はここで、身体を休めてください。それとあとで、少しお話がございます。」
と何やら、深刻そうな顔をしていた、身体を休め、料理を頂いた後、司教さんの部屋に向かう。
『ドドン』
「どうぞ。」
と言われ、中に入ると、司教さんが深刻な顔をして、立っていた。
「突然、お呼び出して、すまないな。まずは、この手紙を読んでくれた方がいい。」
手紙の内容は、ユラとリーシェが無事にアルトリア王都に付き、伝言を伝えることが、できたというものであった。次に、その伝言についての皆の意見が書かれていた。いろんなことを書いてあったが、それでも、最後には、皆あなたのことを信じて待っていますから。と綴られていた。
その手紙の内容に、思わず涙がで、出そうになる。僕だけが淋しかったわけじゃないんだ。僕だけがつらかったわけじゃない。皆同じ気持ちだったんだとわかった。
そして、誰かに信じて待っている。
そのことをしっかり胸に刻み、もう待たせるのは、これで終わりだ!! と腹を括る!!
司教さんが暗い顔で、もう一件の用件を話す。
「アクリバートンが明後日この街に来ます。そして、成果が得られなかったら、アルトリア王都に行くそうです。」
もう賽は投げられたようで、もう一刻の猶予もない状況であった。
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