第十四章 燃水

187.アキラ、見つける。

 その臭い匂いに、思わず鼻を摘む。




「くっさっ!! でも、どこか工業的な匂いだな・・・。」




そんな感想が出る。もしかしてと、逸る気持ちを抑え、その匂いを辿っていく。ひょっとすると、元の世界へ戻れるかも知れない、そんな淡い期待を抱かせるような匂いその元を辿っていく。




しかし、待っていたのは、暗く薄暗い洞窟であった。それでも、強烈な匂いが立ち込める。ハンターセンスもこれ以上行くのは、危険と知らせてくれる。




仕方ないので、近くの散策していると、ドス黒い池を発見する。その池には、生命を一切感じさせない異様な雰囲気を放つ。それでも、どこかで嗅いだ匂いが、僕を突き動かす。




これは、なんぞやと疑問に思いながらも、ためしに、木でその池を突く。木の先に、べっとりとした黒い液体が染み付く。




この匂いといい、この黒い液体・・・。もしやと思い、黒く染み付いた木の棒を持って、ここから離れていく。元いた場所に戻ると、ハチは肉をもう食べ終わっていた。




僕が、戻ってきたことに、気付き、近寄ろうとするも、




「ヴァァン!! 」




と聞いたこともない声を出して、僕から離れていく。でしょうね。と思いながら、木の棒を地面に置き、離れた場所から電流を流すと、




『ボォ!! 』




と爆発に似たような火の付き方をして、勢いよく燃えていく。それを見た瞬間、素人でも、この液体が原油であるとわかる。




まさか、異世界で、原油に出会うなんて、思ってもみなかった。異世界とは無縁の液体は、僕のすぐそばに、眠っていたようであった。




池の周辺を探してみると、何やら小さな祠が祭られていた。やはり、現地の人々も原油は、認知していたようではある。しかし、その異臭や池の状態からあまり積極的に、利用はしていない様子であった。




まぁ、この時代の文明レベルなら、そうであっても、仕方ないのであろう。そう考えながら、せっかく見つけた原油の利用方法を考える。




 しかし、燃やす以外に、方法が思いつかない。原油が工業製品に使われていることぐらいは知っているが、どうやって、使われているかは、知らない。




まぁ、まず思いつく利用法と言えば、壺に詰めて、相手に投げつける方法だ。火炎瓶的な奴を思い浮かべるが、取り扱いに注意が必要なので、却下する。




となれば、原油を染み込ませた矢に、繊維の縄を括りつけて、縄に点火して、発射すれば火矢として、運用する方法を思いつく。これなら、いけるのではないかと考える。




これぞ、まさにエンチャント武器の完成になる。別に、雷があるから、いいじゃんと思いつつも、その威力、検証してからでもいいじゃない、と自分を説得する。




モノは試しで、さっそく作ってみることにするのであった。

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