183.アキラ、野菜不足。
先ほどの同じように、もう一匹釣ってみる。目を瞑ると、自分の感覚が鋭くなるのを感じる。邪念を一切払い、竿の先に神経を集中させる。
餌が生きてるが如く思わせるため、竿を上下に動かす。それを何度か繰り返すうちに、竿に違和感を感じる。次の瞬間、魚が食らい付き、竿がしなる。
魚に合わせて、竿を引く。すると、魚が暴れ出す。これで、針が引っ掛かったのを確信し、川に落ちない様に、竿を引っ張る。
先ほどの魚とは、違う。すごい力で、引っ張ってくる。こちらも、負けじと引っ張っていく。しかし、糸が両方からの引っ張りに耐えきれず、
『ブッチ!! 』
と切れてしまう。その反動で、思わず僕は、尻もちをつく。そして、悔しさがこみ上げる。逃した魚は大きいだけに、その気持ちは大きいものであった。
それでも、なんとか気持ちを切り替え、釣りを再開するが、そこからは、まったく釣れず、時間だけが無情に過ぎていった。思い当たるとすれば、先ほどの魚が逃げたことによるものかと、予想がつく。
仕方ないので、今日のところは、釣りをやめる。成果は一匹、だけとなってしまったが、大きさは十分あるので、良しとする。
戻る際に、仕掛けていた罠を見回っていくと、そのうちの一つに、リスが引っ掛かっていた。そいつに、止めを刺しハチ用の餌とする。
拠点に戻ると、早速、魚を調理していく。内臓とエラを取り、塩をまぶして、炙っていく。毎日、肉を焼くばかりで自分の料理のレパートリーの無さがほとほと嫌になる。
焼くか、干すしかないし、最近、肉しか食べていないことに気付く。野菜などを取らないとこのままでは、栄養不足になってしまう。
その対策を、どうにかしなくてはならない。残念ながら、僕には、野草や木の実の知識は、少ししかない。このまま、ビタミン類を取らずに、生活すればいずれ、身体に不調を来すことは明白である。
仕方ないので、明日は近くの王都に行き、新鮮な野菜を買って来ようと考える。毛皮を売り、そのお金でいろいろと買おうと考える。ついでに、釣り竿も、そこでちゃんとしたものを買おう。
ついでに、この際、畑も作ろうと考えつく。土地はいっぱいあるのだし、ちょうど近くの木々は、木炭作りで切り倒していたので、手頃な広さは、あったのだ。鍬を買ってこなければなるまい。
そうして、必要なものを考えうる限り思いつく。野菜に、釣り竿、鍬に種。はたして、金は足りるのであろうかと少し不安になるのであった。
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