178.アキラ、躾ける。

 恥ずかしながら、食おうとしていた獲物に、情が移ってしまった。この愛くるしい姿に、心が揺さぶられる。




なんという可愛さ、この子を食べようとしてた人は誰だ! 俺だわ! と自問自答してしまう。その心を読んだのか、精霊さんが、




「宿主、お気を確かに、これは食料であって、愛玩動物ではありませんよ。」




そう告げる。しかし、この可愛さの前では、そんな正論はいとも簡単に論破される。




「いや、これは緊急用の非常食だから、ちゃ、ちゃんと食べるよ。で、でも、今は別に、食べなくていいじゃん。」




僕はウサギを撫でながら、そんな言い訳をし始める。




「宿主、説得力が皆無です。」




とバッサリ切り捨てられる。それでも、なんとか説得して、飼っていいことになる。餌は、その辺の草だし、なんとかなるだろう。




そう思っていると、ウサギ君が




「クゥクゥ・・・クゥー」




と音を鳴らす。それに耳を傾け、よく聞くと、




「クゥクゥ・・・クゥー(デヅデヅ、ウドゴデヅ)」




と言い始める。ハハハ~~ン、こいつ、う●こ出す気だな!! と咄嗟に、ウサギ君を担ぎ上げ、拠点の外に出る。ちょっと拠点から、離れた所で、ウサギを降ろしてあげると、ポロポロとウサギ特有の糞が出て来る。




最初のう●こは、間違った場所でさせると、後々苦労するから、最初が肝心なんですよ。と心の中で思う。その意見に、




「私もそう思います。」




と精霊さんも賛同してくれる。ちなみに、ハチはそこら辺、ちゃんと理解しているようで、ふらっと居なくなった時に、排便しているのだと思う。




そうしていると、ぴょんぴょんとウサギ君がそこらへんを飛び始める。すぐさま、確保して、拠点に戻す。




「ブーブー(ワズ、ダッドヘピテェ! )」




と音を鳴らしながら、柵の中をぴょんぴょん飛び跳ねる。意味はまだわからないが、行動からして、多分もっと外で遊びたいと言っているのだろうと思う。




明日、ちゃんと外で遊ばせてやるから、今日は大人しくしていてくれと思いながら、放置する。今はそれしかできない。




 さて、そんなウサギ君は、置いといて、今日の予定を決める。食料は、あと残り、1日分ほどになっており、何か別の獲物を狩らねばならない。




しかし、毎度毎度、肉ばかりは少々飽きてくる。だって、最近ほとんど肉しか食べてないのだ。石器時代の人並みに、主食が肉なのだ。




さすがに、そればかりでは、飽きてきたので、今日は気分を変えて川へ、ハチと一緒に向かう。ウサギ君はお留守番である。




来る時に、目星をつけていた川へとやってくる。よぉく、目を凝らすと、いるわいるわ、群れを成して川魚が泳いでいる。




そして、考える。どうやって、魚を獲るか。精霊さんも、一緒になって考える。手元に道具はないし、どうしたものかと考えていると、ふとあることを閃くのであった。




試しに、石に電流を込めて、川魚の群れに向かって投げる。




『ビリビリ! 』




と電流の音がする。その後、ぷかぁ~っと3匹ほど、魚が浮かび上がってくる。川に入り、それを捕まえる。我ながら、うまくいったと思う。




今日の収穫は、川魚3匹。それを拠点に持ち帰って、僕はさっそく、それを焼き始めるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る