179.アキラ、繊維を剥ぐ。

 まずは、内臓を取っていく。これを取らないと生臭くなったり、身にうまく火が通らないのである。




次に串で身を貫き、塩をまぶし、焚火でじっくりと魚を焼いていく。その光景は、久しぶりに見たような気がする。今、肉塊ではなく、魚を焼いているのだ。魚から、ポタリと水分が滴り落ちる。




『ジュッ』




という音が、食欲をそそる。火が十分通っていないと、いろいろまずいことが起きるので、少し焦げ目が着くくらいにする。




そして、魚から水分が落ちなくなった頃、




「宿主、そろそろ、大丈夫かと思われます。」




精霊さんのOKもでたところで、川魚のお腹に被りつく。




「モグモグモグモグ・・・。」




もう一口、




「モグモグモグモグ・・・。」




うまい。あまりのおいしさに、反応が遅れてしまった。肉とは違い、さっぱりとした味わいである。それでいて、ふわふわの触感。




嗚呼、これぞ魚! という味であった。久しぶりの魚に、食が進み、3匹をペロリっと完食する。




「ごちそうさま。」




と手を合わせる。今度は、釣り竿を作って、釣ってみよう。電流で取れた魚は、サイズが少し小さかったので、次回は、正攻法で、挑んでみる。




 まずは、針だが、これは魚の背骨を使ってみる。これは昔の人も使っていたのである。




次に、竿の部分だが、そのためにと、長くて、真っ直ぐな木の枝一本、切りだす。それを、川の水につけて放置する。




時間が立てば、木がしなりやすくなり、竿や弓に使えるというわけだ。




さて、問題は、糸だ。どうやって、見繕うかと、近くの森を散策する。どこかに、いい植物はないかなと探してみるが、なかなか見つからない。




ぐるぐると歩きまわっていくうちに、1メートルほどに育った長い草たちを発見する。おお、と思い、近くにいってみる。草の先には、青い花が咲いていて、とてもきれいな色をしている。




そのうちの一本を引きちぎり、茎の皮を切らぬように剥いでいく。剥ぐ際に、弾力を感じる。おお、まだまだ剥げる剥げる。そうして、剥ぎ終わると、長さ1メートルほどの繊維がとれる。




引張り強度が高く、引っ張っても千切れない。これなら、釣り糸などに適していると考える。それから、何本か繊維を集めていく。




ついでに、この場所をスキル【目的地】でマッピングしておく。まさか、こんないい繊維が近くにあったとは、驚きであった。糸は何かと使う機会が多いので、後のち、助かる。




そうして、釣りに必要な、素材を集めたのであった。


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