177.アキラ、情が移る。
「まずは、魔術書を読んで、その術の概要や理論を把握しなければなりません。」
その言葉に少し、困惑する。
「それって、つまり僕のように文字が読めない人間には、使えないってこと?」
と聞くと、精霊さんは、
「はい。」
残酷に僕を切り捨てる。だ、駄目じゃんか・・・、僕、幻覚魔術使えないじゃん。そう思わざるおえない。そもそも、アキラという文字をどうやって書くのかすら、知らない人間なのだ。
「まぁ、そう落ち込むことはありません。もしかすると、スキルでそれっぽいことができるように、なるかもしれません。」
と苦し紛れの精霊さんの解答に、少し己の語学力の無さを嘆く。ああ、スキルで補えればいいなと、この時の僕はそう願うのであった。
次の日、2つの気配を感じ、目が覚める。ひとつは、ハチがこちらをじっーと見ている。すぐに、ご飯の要求だと理解する。もうひとつは、昨日、生け捕りにした、ウサギちゃんである。
こちらも、同じように、ご飯の要求である。まずは、ハチにシカ肉の端をあげる。ハチはそれに喜んでカブリつく。
その様子を、もの欲しそうに、ウサギが見ている。
「・・・」
無言の圧がこ奴、すごい。その圧倒的圧力に負けて、近くの草をとりに行く。
その最中に、ウサギの言語ラーニングがどれほど、進んだか聞いてみると、
「現在、50%ほど完了しました。これなら、若干ですがウサギの言っていることを理解できると思います。」
精霊さんが、そういうので、試しに注意深くウサギを観察しながら、餌をあげると、ぴょんぴょんと餌に向かって跳ねて来る。
そして、ムシャムシャと草を食べ始める。何か、言ってくるかと思っていたが、何も聞こえてこない。あれ、おかしいなと思っていると、
「宿主、ウサギには声帯がないので、食事中は話さないのです。」
と言われ、ああ、そうなのね。と納得する。野性のウサギと狼が一緒の空間で、食事を食べている光景を見て、なんだかこれすごい状況なのでは、ないかと思う。
しばらくすると、ウサギが草を食べ終わる。満腹したのか、ウサギは幸せそうな顔をしている。そして、ついに、
「プゥプゥ、プープー」
とウサギから音が出る。これは屁ではない。そう感じたのは、微かに、意味がわかったからである。もう少し集中して音を聞く。
「クゥクゥ、クークー(バラ、ウッパイ。)」
多分、お腹、いっぱいと言っていると思う。次に、頭を撫でてやる。
「プゥプゥ(ソケ、ソケ、アアキテムキテム)」
と撫でていくと、こいつ可愛いなと思う。ついには、このまま食べてしまうのは、可哀想だと思ってしまう。この時を以て、僕はウサギちゃんに、情が移ってしまったのである。
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