175.アキラ、設置する。
罠、それは野性動物との知恵比べである。当たり前だが、罠を適当に置けば取れるというものではない。
獲物の習性を利用して、それを応用した罠を適切に設置することが必要である。それを踏まえて、獲物の縄張りを探っていく。
手始めに、近くを森から手をつけていく。注意深く、森を探索していると、鬱蒼としげる草花の中に、小さな小人が通ったような道が、出来ているのを発見する。
どうやら、小さな獣道を発見する。その道を注意深く観察しながら、その道を辿っていくと、この道を作ったであろう者の古い糞が、落ちていた。
その形状から、すぐにあの生き物のものだとわかる。ウサギの糞だ!
どうやら、ウサギはここにまで、生息しているようで、たくましい繁殖力に、驚く。
それはそうとして、どうやって、このウサギを仕留めるかと考える。自分の記憶を頼りに、どんな罠を仕掛けるか考える。
そして、昔どこかで、読んだ本に似たようなことが、書かれていたことを思い出し、発想を得る。
手始めに、V字に開いた木の枝の片方を、地面に撃ち込む。次に、高い木の枝に、蔓を巻き付け、引っ張る。そのピンと張った蔓を、木の枝に巻き付け、V字に開いた木の枝に引っ掛ける。
そうして、余った部分で、輪っかを小さなけもの道に作る。これで、完成だ。
あとは、獲物が来るのを待つだけだ。そうして、僕は何箇所かにそうした罠を、設置するのであった。
その日の夕方、習練を終えて小石を、何かに取りつかれたように、投げて続けていると、突然、ハチが、
「ワン! ワン! 」
こちらに、向かって吠える。なんだと思ってハチを、見ると、どこに行こうとして、こちら頻りに見る。
「う~~ん、ついて来いってことかな?」
そう考え、ハチの後をついていくと、微かに、
「キュー! キュー! 」
という音が聞こえる。近づくにつれ、段々とそれが、はっきりと聞こえてくる。すると、今日罠を仕掛けていた場所に、ウサギが掛っているのを、発見する。
どうやら、ハチはその音に、反応して、僕に知らせてくれていたようだ。
「おお、ハチ、でかしたぞ。」
とハチを撫でてやると、嬉しそうに尻尾を振る。ああ、いい子だね、あんた。
それはさておき、早速ウサギの耳を抑え、逃げない様に連れて帰る。ウサギは、
「キュッキュッ! キュッキュッ! 」
と怯えた様子で、音を出してこちらを見つめる。つぶらな瞳が、殺さないでと訴えてくるようであった。ああ、可愛いウサギちゃん、あまりにも、可愛すぎて、殺すのを躊躇ってしまう。
「宿主。ややこしい表現をしないでください。ただ単に、生け捕りにして、シカ肉がなくなったら、食べるだけですよね。」
と精霊さんに、考えを読まれる。まぁ、それもあるけど、これから狩っていくウサギの習性を、理解しておく必要もあると考える。
そして、ウサギをハチに、見張らせておく間に、僕は、拠点に簡易的な木の檻を作る。
そして、そこにウサギを投入。なにが起きたかさっぱりわからないウサギは、どうにか出ようとするが、出れないでいた。
その時、
「宿主、異能のSagaの向上を確認し、スキル【罠師】を獲得しました。おめでとうございます。」
と精霊さんが報告してくれる。その瞬間、頭にいろいろな罠の新しい発想を、思いつく。
どうやら、このスキルは、効果的な罠を思いつけるスキルのようだ。そして、僕は、湧き出てくる罠に、期待を膨らますのであった。
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