173.アキラ、習練する。

 遠くの離れた木にナイフで丸い円を描き、そこに向かって矢を撃っていく。十発撃って、一発外してしまう、矢を拾って、また距離を保ち、撃つ。かれこれ、十回ほど続けている。




今度は、全発命中させるぞと思いながら、矢をとり、弦を引いて、狙いを定めて離す。矢は放物線を描きながら、円の中心点に命中する! 




「宿主、おめでとうございます。スキル【命中】が向上して、2になりました。」




と報告してくれる。




おお、スキルがレベルアップしたようだ。さっきから、この調子でどんどん、スキルがレベルアップしている。矢を撃ちながら、精霊さんに、現在のスキルと異能の状態を確認する。




「現在、すべてのスキルがレベル2以上に向上しました。そして、異能のPSYCHOも、PSYが2、CHが4、Oが3という状態です。」




異能はなかなか、上がらないものだなと思いつつも、習練を続けていく。隣にいる、狼のハチは興味深そうに、見ている。




「お、ハチ。矢が好きなのか、そうかそうか。ちょっと、待ってろよ。これが、終わったら、遊んでやるからな。」




と言って、切りのいいところで、一旦習練をやめて、ハチと戯れる。鹿の骨を投げてやる。




すると、ハチはそれを追いかけていき、それを咥えて戻ってくる。また、投げてやる。ハチは尻尾を振りながら、それをおいかける。




今、やっていることは、遊びだが、これも立派なスキルアップだ。こうして、ハチとコミュニケーションを計ることで、以心伝心や異能のCが向上するのだと、そう精霊さんが言っていた。




「いくぞぉ~、ハチ! そ~れ!」




そして、持ってくる。そしたら、シカ肉を少しあげる。そして、また投げる。それの繰り返しである。僕が投げ疲れた頃でも、ハチは元気に尻尾を振っていた。




やはり、野性はタフであった。




 腕が、もう上がらなくなってきて、この日の習練を終わり、拠点へと帰えるのであった。上腕に乳酸が溜まっているような気がしたのであった。




帰り道も、ただ歩くのではなく、目を瞑り、ハンターセンスを頼りに歩いていく。しかし、躓いていたり、木にぶつかったりしながら、うまく歩けない。




しかし、段々と、スキル【KY】の潜在能力に気付く、寸前のところで、木があるような気配を捉えれるようになる。しかし、確率は10回やって1回。まだまだ、習練の余地はありそうだ。




この調子で、いろいろなことにトライしていき、まだ眠っているスキルが目を覚ましだすのを、僕は感じ始めるのであった。

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