164.アキラ、すがる。
その川の水は濁り、真っ暗な闇の中を突っ切っているようであった。僕は、流れる方に向かって足を向けて、仰向けで流されるような体勢をとる。
こういう時は、間違っても、立とうとしてはいけない。水の流れには、水圧が生じる。もし、足が川底などの障害物にひっかかって抜けなくなると、水圧によって溺れる危険性があるからだ。
目を瞑り、ハンターセンスを頼りに、濁流を下っていく。時折、浮上した際に、近くに岸辺がないかと探す。そして、川の流れに沿って、対岸の岸に近づいていく。
ダイブした所からかなり下った場所に流れ着く。満身創痍になりながら、飲んでしまった水を吐き出す。
「宿主、Powerが向上し、スキル【免疫力】を獲得しました。これにより、免疫力が向上し、感染症などを防ぐことができます。」
おお、ナイスタイミング。というか、最近の戦いで抵抗力が付いたのだろう。段々と人外染みていくことに、若干の戸惑いも、感じながら今はできるだけ遠くに、逃げることを最優先に行動する。
幸運にも、近くに荷物も流れてついていた。それを持って、僕はできるだけここから遠くに、逃げる。多分、死神も川を渡ろうとしてくるはずだ。
一刻も、この街から脱出しなければならない。雨にも負けず、走る。そして、ちゃんとしたあいさつもできずに、この街を出ていくのであった。
僕をあざ笑うかのように、降っていた雨が止み、湿った空気が辺りを包む。どれくらい走っただろうか、シラ城の城下町が遠くの方に見える。
このまま、僕は北へと歩いていく。
「これから、苦難の旅になるが、よろしく頼むよ。」
と精霊さんに、告げる。僕がこのまま、逃げながら結社の注意を引かねばなるまい。そう考えて突き進む。
気が付けば、僕は、国境を越えていて、未知の国のノルディン王国の領土に足を踏み入れていた。このまま、ずっと北に行けば、ノルディン王国の王都、ヨルダへと続く。
途中、馬を買う。このまま、歩いていては、いずれ追いつかれるからである。
そうして、ひたすらヨルダに続く街道を駆けていく。このまま、逃げ続けていいのだろうかと、そんな思いが芽生えるが、すぐに消える。
「やっぱり、今の僕じゃ敵わない。」
そう呟きながら、自分の無力さを痛感する。
「宿主、今は逃げましょう。きっと、勝機が訪れるはずです。」
そう精霊さんが励ましてくれる。その不確実な希望に今は、すがるしかなかったのである。
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