152.アキラ、吹っ切れる。

 翌朝、僕はウグリナス卿の邸宅で目を覚ます。




自分の中で、人を殺すことへの抵抗感が段々消えていくことを自覚する。しかし、それでも屍を、超えていくしかないことを理解させられる。




多分、今こうして殺しの罪悪感に苛まれていないのは、精霊さんのスキルおかげであろう。




そんな自虐的な考えが、精神を蝕もうとしていた時に、コンコンと誰かがドアをノックする。




「どうぞ。」




と条件反射で答える。現れたのは、リーシェその人であった。どうやら、食事を持ってきてくれたようで、




「昨日、あの後ライト様は人殺しを行ったのですか・・・。」




そんな嫌な質問に対して、僕はこくりと頷く。その解答に、リーシェはなんとも言えない悲しい表情になり、




「また、次も人を殺すんですよね・・・。」




泣きそうになりながら、リーシェは言葉を語る。




「それでも、殺されそうになった時、私を救ってくれた事は本当に、ありがとうございます。ですから、どうか気に病まないでください。」




そう言って、彼女は不自然ながらも作り笑いをし、僕を励まそうとする。その姿を見て、どうか彼女が、これ以上病まないことを願うのであった。




 そうしながら、朝食を食べていると、精霊さんが呟く。




「私達は、どこで間違えて、人殺しに手を染めるようになったのでしょうか。」




そうボヤキ始める。その意見に同意するも、




「しょうがないよ。精霊さん、あともう少しで結社を追い詰めれるんだ。もうここまで、来たら自棄だよヤケ・・・。」




そう自分に言い聞かせるように、答える。あと何人殺せば、野性に帰ることができるのだろうか。




そう思いながらも、もうここまで来れば、教皇だろうが、皇帝だろうが、やってやるよという気持ちになる。




「宿主、罪悪感、ゼロって逞しいですね・・・。」




と精霊さんにドン引きされる。自分でも、驚きながらも案外人というのは、慣れだよ慣れと思うのであった。




 そうして、また、ウグリナス卿に呼ばれる。




「昨日の暗殺大いに我が陣営の助けとなりました。これでアクリバートン陣営の資金提供者を一人潰すことができました。」




ああ、この流れ、また人を殺すことになるぞと、ハンターセンス君が呟く。ウグリナスは、ごまをするように、




「つきましては、アクリバートンの孫娘のユラという少女を誘拐してもらいたいのですが・・・。」




と神もびっくりするほどの、鬼畜なことを申し出てくるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る