135.アキラ、阻害する。

 傷が癒えてきだした頃、私はイリスに支えられながらルベルゼの前に座る。




開口一番、




「取引をしましょう。ルベルゼさん、あなたを解放する変わりに教祖と結社の真の目的を教えてください。」




そう言って、取引を持ちかける。その提案に驚いたのか、ルベルゼは少し考え込む。




「若いの。いや、異邦人とこの場合は呼ばせてもらうよ。君はすこし勘違いをしているようだ。結社の容疑者でこの牢屋に繋がれていることは、遅かれ早かれ私には、どの道、死しか待っていないのだよ。」




そう悲しそうに答えてくれる。なぜ、それがわかっていてこのようなことをするのか、僕には理解できなかった。それでも、そのことを聞かずにはいられなかった。




「なぜ、結社に参加されたのですか・・・?」




その質問が来ることを理解していたかのように、




「君は、竜がこの世界に存在すると言ったら信じるかね。私は信じているのだよ。そして、彼らが今後我々の脅威となることも信じているのだよ。」




その言葉は、嘘偽りのない言葉だった。




「じゃあ、結社はその竜に対しての対抗組織だとおっしゃりたいのですか!!」




静かな怒りが芽生える。だが、気持ちを落ち着かせて、今自分のやるべきことに集中する。




「例え、それが発展のための犠牲だとしても、私はあなた方のやっていることには、・・・。」




言葉に詰まる。災いに抗う為に人は迷信にすがってきた。その歴史を後になって否定するのは簡単だが、彼らなりに必死に考えてのことだと頭では、わかっているが、感情がそれを処理できずにいた。




「もう、この話はよそう。ほかに聞きたがっていることがあるんじゃないのかね。」




「感謝します。あなたの教祖とは、誰なのですが。」




「・・・・、アリクバートン枢機卿。この世界の最大宗教のシラ教のナンバー2さ。まぁ、今の教皇の様態を鑑みれば実質トップだね。次の敵は手強いよ。異邦人君、がんばってくれよ。」




それさえ、聞ければもうこの人に用はない。僕は立ち、一礼をして、その場を後にした。この人なりにもう死の覚悟はできていたというわけだ。




そうして、僕たちは牢屋を後にするのであった。




 その後、牢屋で舌が引き抜かれて、死んだルベルゼの遺体が見つかるという事件が起こる。




その事実に僕は驚きもせず、ただその事実を受け入れて、異邦人だからこそできる、次なる一手を打つのであった。

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