134.アキラ、火の中へ。

 放たれた矢は天高く飛んでいく。星空に消えていく流れ星の如く、見えなくなる。しかし、当たったという直感だけを頼りに、屋根を伝って飛び越えていく。




平穏な街並みに炎が舞う。その炎を頼りにどんどん距離を詰めていく。所々火がまだ燻っている。かなり、近いことを実感する。




そして、ついに先ほどの男を目視するところまで来る。男は不自然に足を引きずりながら、逃げている。頻りに後ろを気にしながら、時折、炎を地面に噴射しながら、逃げている。




矢を手に取り、弓を引いて放つ。しかし、それも炎によって、跡形もなく消える。このままでは、近付けない。距離を詰めていくが、炎に邪魔されてなかなか近付けない。




このままでは、逃がしてしまう。そんな考えが頭を過る。駄目だ駄目だ、こんな時にこそ、冷静になれと自分に言い聞かせる。今、現状でできることを考える。そして、一か八かの賭けに出る。




 矢を仕舞い、コインを手に取り、先ほどは、水に溺れて濡れていたが、これくらいなら、防火になると考える。そして、風向きを肌で感じながら、後ろから近づいていく。




男もそれに気付き、炎で牽制してくる。掛ったと感じながら、下に行くとフェイントをかける。男がそのフェイトに反応し、手の向きを下に向けて炎を噴射する。すると、その炎影響により、風が生じる。




全力で足を開き、その上昇気流に乗る。少しだけ身体が浮く。その一瞬の滑空に全てをかけて、コインを奴にぶち込む。その一閃は振り向いていた男の鳩尾をぶちのめす。




手の平から出ていた火が消えるが、残った炎の中に飛び込む格好になる。足を閉じ、フードで顔を覆い、身体を丸めながら炎の中に突っ込む。




あついあつい。体中に痛みが走る。そして、意識が持っていかれそうになるが、なんとか耐えて、炎を脱する。焼けるフード切り落として、倒れている仮面の男に向かって走る。そして、電流を奴の身体に流し込む。身体中が紅くただれている。近くにあった井戸の中に飛び込むのであった。




 気がつくと、僕はベッドに横になっていた。全身に包帯が巻かれていた。テラやイリスたちが起きたことに気付く。皆が涙ながら、僕が目を開けたことを喜ぶ。




精霊さんにどれほど寝ていたかと問いかけると、




「2日ほど。」




という答えが返ってくる。あの後、男はどうなったかと聞くと、全身を縛り今も、拘束しているそうだ。そして、仮面の男はこの国の大臣をしていたルベルゼという男であった。




今、この傷が癒えたら、男に会いに行こう。そして、教祖とやらの情報を聞き出そうと考えるアキラなのであった。

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