100.アキラ、仕返しする。

 時刻は夕方、先ほど作った土器をさっそく使ってみる。




事前によく洗ったので、衛生面では大丈夫だ。




木の器と違い、すこし重みを感じる。土器にスープが注がれる。僕はそれを掬いながら異常がないかと確認する。




幸いなことに、何もなくスープを飲み干す。どうやら、初土器は無事にその役目を果たしてくれた。




そして、女性陣は談笑の時間へと移る。まゆきの通訳は、必要な時が多々あるので、まゆきの隣に座り、女性陣の会話を聞いていなければならない。




まぁ、でも独りですることもないので、苦にはならない。しばらくの後に、誰かがこくりと眠たそうにし始めて、お開きとなる。




 ついに、僕は今日、テラの家を飛び出してマイハウスで就寝する。家の中は仄かに土の匂いがふんわりとする。




そして、ベッドに横になる。二人分のスペースをとっているため、広く感じる。僕もやっと、床ではないところで寝ることができたのである。




「ふ~~やっとベッドで寝れるよ~やわらかいな。」




と精霊さんに呟くと、




「宿主の睡眠の質が改善されますね。」




そう言ってくれる。




本当に毎日、床で寝てたから朝、身体が痛かったんだよなと思い返しながら、ゆっくりと眠りにつくのであった。




そうして、初の新居での睡眠を貪っていると、ふと誰かが近づいてくる気配がする。




ハンターセンス君がそれに敏感に反応し、意識を目覚めさせる。




「んんん、なんだ、こんな夜更けに。」




少しだけ、寝ぼけた様子で辺りを警戒する。家にいる4人はあまり反応しないハンターセンスが警告を鳴らすということは、今、近づいてきている者は、家にいる者ではないということになる。




眠っていた意識を急速にフル回転させて、危険に対応する。




「こんばんわ。夜分、遅くに失礼しますよ。」




その者は小さな小声で律儀にこちらに挨拶をする。




どうやら、向こうはこちらが眠っていると思っているらしい。そしてその声はどこかで聞き覚えのある声であった。




「精霊さん、僕の血を求めたあの女の子だ。」




「その通りです。注意して対処してください。」




と精霊さんと少女が接触してきたことを確認する。




寝ている体勢でその子の位置を確認する。




「へぇ~、よくできた作りですね。おっと関心している場合じゃなかった。」




と僕の家を物色しながら、近づいてくる。




「さぁてと、それではまた血を頂くとしましょうか、ちょっとチクっとしますけど、起きないでくださいよ。」




そう言って少女はごそごそと自分のバックを漁り始める。




その時、直感する。今この時を持って奇襲を開始するほかないと、そう思った時にはもう身体は動き出していた。少女をこちら側に引き寄せベッドに倒す。




「えっ・・・」




少女はそう言って何が起こったのか理解できていない様子だ。




間髪いれないうちに、二本の指に電流を集中させて、そっと彼女に触れる。




「痛い!!!」




そう言った瞬間、彼女の身体は硬直し、ふっと脱力したようにベッドに横たわる。すぐに脈を触り、呼吸も確かめる。




「脈はあるし、呼吸もある。」




それを確認して、今日やられたように腕を縛り、目を布で覆い、足を縛る。




「謎の少女X確保!!」




まるで、警察のように宣言する。




「お見事な手際であります。機敏性が少し上昇しました。」




精霊さんのお褒めに預かる。そして担ぐ、イリスぐらいに軽い体重である。ちゃんと食べているのかと心配になりながらも、その身柄をテラの家へと連行するのであった。

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