99.アキラ、土器土器する。
森に出向くとふとある考えが思いつく。土器を作ろうという考えだ。
現在、5人で暮らしているが、食器はギリギリな状況である。そこで、新たに食器を作ればその状況も打開できると思い立ったのである。
まずは、粘土集めだ。粘土というのは、崖などの斜面に露出している粘土層が、風雨等により上下の土・砂礫層と混ざって崖下に堆積していることがある。
その土は土器作りに適しているため、今から崖の場所に行ってみる。
森周辺の地図はおおよそマッピングが完了しているので、崖らしき場所は大体見当がつく。
崖下につくと、思った通り土が堆積している。その土をひと掴み取って、ギュッとする。
そのまま握った形になる。まさに天然の粘土を見つけた。
「懐かしいな、ちっちゃい頃、粘土でいろいろ作ったなぁ。」
昔を思い出しながら、いろいろと粘土を手に触り、感触を確かめる。
そして、粘土をこねくり回し、お茶碗の形にしていく。これを6つくらい作る。
そのうちのひとつは、更に紐状にした粘土を何回も上に乗せ、深さをつけいき、壺のような形にする。
大方、粘土や木の棒で形を整えたら、一応、土器作りの第一段階は終了。
次に薪を集めてくる。集めた薪の上に土器を密着させて置いていく。そしたら、全体を薪で覆い隠す。その上に枯葉を覆い被せる。
一時期、縄文・弥生時代にハマっていた時期の知識を頼りに、土器を作っていたが、案外うまくできるかもしれないと思いながら、枯葉に着火する。
火は徐々に燃え始め枯葉全体を焼いて、薪の部分に移っていく。その間、暇なので、近くの木になっている食べれそうな木の実を適当に取りに行く。
焦る気持ちを抑えつつ、木の実を食べながら、待つ。
パチパチと薪の焼ける音が、心地よい音を出している。
どれくらい待っただろうか、薪の所々が真っ赤になっている。温度が上がっている証拠だ。そして、段々と薄茶色の物が見え始めてくる。
そして、完全に火が鎮火して数十分たった時、その物体を手に取る。
微かに温かみがまだ残っている。そして、指で突いてみるとトントンと軽い金属音みたいなものが聞こえる。
ついに、土器の完成である。ほかの茶碗も、同様に作ったそのままの形である。思いのほかうまくいったのであった。
その土器を集めて、壺には、薪を少々いれて、家に戻るのであった。
家に戻って土器を見せると、皆驚いていた。
「アキラさん、これお皿ですか!!新しいお皿ですね。」
「へぇ~~土器か、趣深いわね。」
「これアキラ様が、作ったのですか!!すごいですわ!!」
と皆、僕の力作を褒めてくれた。こうも、面と向かって褒められるとなんだか、照れてしまう。テラが僕の手を取り、
「アキラさん、ちょうどお皿がないところだったんですよ。助かりました。」
上目遣いのそのきれいな瞳に、僕の心はドキドキするのであった。
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