86.アキラ、のこぎりを使う。

 朝、腕に押し付けられている、やわらかな果実により、煩悩君が起き出す。




目を開け状況を確認する。ふたりの美女に身体を押し付けられている状況に気付く。




僕のパーソナルスペースはどこにいったと言わんばかりの密度である。抜け出そうとモゾモゾするもガッチリ掴まれて抜け出せない、動いたことにより、ふたりから妖艶な声が出る。




このふたりエロすぎるよと思いながら、祖父母のことを考える。多少は、気持ちが平常に戻った。




 しばらくの後、まゆきとテラが目覚め始める。まゆきに、




「おはよう。」




朝のあいさつをすると、至近距離に顔が近くにあったことに気付いたのか、少し顔を赤らめてそっと離れる。




「ご、ごめんなさい。私こんなに近くで寝ていたなんて。」




と謝り始めるが、仏のような顔で気に病むことはないと告げる。




テラは寝ぼけた様子でじっーーとこちらを見ている。そんなテラに慈愛の目を向けると、拗ねたような顔をする。




これは後で頭撫でないと機嫌治らない奴だと推測される。そして、僕はアルテシアの拘束から、抜けだそうと腕を引っ張ってみるが抑えている力が強いため引き抜けない。




仕方がないので、彼女が起きるのを待つことにする。そして、アルテシアが目を覚ます。




「ああ、起きた?」




優しく声をかけると、




「ええ、昨日は大変よく眠れましたわ。やはり愛しい者のおそば眠るのは、いいことですね。」




僕の腕を抱きかかえたままアルテシアが感傷浸りながら話す。あのもう理性が限界に近いんですけどと思いながら解放の時を待つのであった。




 朝食を食べ終わると、さっそく、買っておいたのこぎりを手に持ち森へと出かける。




他の4人は今日は畑仕事をするようだ。久しぶりの1人の時間に、少々気分が高揚する。




「モリモリゴー、モリモリゴー。」




と歌いながら、ちょうどいい太さの木を探す。




その声に驚いて動物たちが逃げているようにも思えたが、今日は狩りじゃないから結果オーライと、思いながら進んでいく。




良い具合の木を見つけて、のこぎりを使う。




まずは、倒れる方向を考えて、三角の切り込みを入れる。初めて木を切ることへの胸の高鳴りを抑え、のこぎりを使い始める。




キコキコとのこぎりが木を切っていく。これがなかなかうまく斜めにまっすぐ切れない。悪戦苦闘しながら、切れ進めていくと小さな溝ができる。




あとは、その溝にのこぎりを当ててキコキコと切り進める。木くずが段々と多くなるのがわかり始める。




「最初は、切れるかと思ったけど案外やってみるといけるもんだね。」




話し相手になってくれている精霊さんにそう呟く。




その後も黙々と作業を行っていく。ちょうどいい切れ込みを入れた所で休憩をとる。




木に切り込みを入れただけだというのに、けっこう重労働になる。爽やかな風が草木を鳴らして、僕を過ぎ去っていく。ふぅ~~涼しいと思いながら、少しの間ぼぉーとするのであった。

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