69.アキラ、人を射る。
森の中の整備された街道を進んでいく。鳥のさえずりや葉音が森の中に木霊して、神秘的な雰囲気を感じる。
進むにつれて木々の間隔は、狭くなっていく。
時折、交易商人らしき人々を見かけて、この道も一応、使われていることに少し安心する。さしたる問題もなく、順調に馬車は進んでいく。
イーグルビューを使うと、獣の足跡らしきものが街道を横断しているのがいくつか見られる。運よく獣に会わないかと願うが、今のところ姿すら見えないでいた。
大分、森の奥地へ進んだ頃、馬車を進めていると左方向の遠くの林から誰かが走ってくる様子が見て取れた。
ハンターセンスが反応し、僕は皆に警戒を促す。段々と近づいてくる人影に、弓を構える。
走ってくる者の後ろから、また新たな人影が見えてくる、どうやらその者は追われているようだ。
そして、追われている者の姿が鮮明にわかる。金髪の少女の様で、そして後ろから、男達が武器を持ち追っている。これはただ事ではないことを直感する。
「皆、すこし隠れてて、山賊っぽい奴が少女を追いかけてる。」
と三人に言う。三人は荷車の陰に隠れ、イリスとアルテシアはいつでも魔術が使えるような態勢をとる。
ここで人を殺すことを覚悟しようよするが、手が震える。だが、迷っている暇はない、でなければ少女を救えない。
矢を手に取り、一番近い男に狙いを定める。手が震えているのを感じとる。一瞬のためらいが生まれたまま、矢を放つ。
そのまま直線に飛んでいき、男の足部分に刺さり、その者はバランスを崩す。男たちに動揺が生まれ、一瞬止まる。
その瞬間を逃さず、矢を連続で放つ。弓術スキルのおかげで、すべての矢は命中する。
その命中率に恐れたのか、動ける者達は木の陰に隠れる。その間に、少女はこちらに気付き、走って来る。
どうやら、一人の男が弓を構えて、撃ってくる。
しかし、その矢は前方10mくらいの場所に落ちる。すぐに矢を撃ってきた者に狙いを定め、撃つ。
矢はその男の腕に刺さる。男たちの苦痛の声が聞こえる、嫌な音だ。
「精霊さん、まだあいつ等諦めていないようだね。」
「そのようですね。」
と山賊がまだ少女を諦めていないことに気付く。
少し矢に電流を流し込み、指示を出している大柄な男に狙いを定める。
「覚悟はよろしいですか?」
と精霊さんが聞いてくる。
「まだ。殺すつもりはないけど、かなり痛い部分に刺すつもり。」
自分でも、人を殺す覚悟をできてないことを承知して、腹部分に狙い定め、弦を離す。
「ウアァツ!!」
と大柄な男は声をあげ、身体を震わせてからその場に倒れ込む。
さすがに、山賊もそれを見て、何かを悟ったのか負傷した仲間や倒れ込んだ男を介助しながら、森の奥へと逃げていった。
ハンターセンスが無反応になり、この場を切り抜けたと一安心する。
追いかけられていた少女がこちらに近づいてくる。この時、僕は少女の容姿に驚くのであった。
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