43.アキラ、狙い撃つ。

 ふと疑問に思い、精霊さんに質問する。




過去に得たスキルは使えるのか、という問いに精霊さんは、




「使えます。」




と当然のように答える。




内心、ほっとする。




もし、使えないなんて言われたら、どうしようかと思ったが、杞憂に終わった。




これで、おいらもチートの仲間入りか~っと考えるが、




「ええ、そうだといいですね。」




と精霊さんに大人の対応をされる。あっ・・・、まだ仲間入りじゃないのね・・・。




 時折、耳を澄ませば風の音が優雅にあたりに響く。




なんてのどかなんだ、馬車の揺れさえなければと思いながら、西に進む。




しばらくすると、旅人や商人らしき人とすれ違い、そのうちのひとりが、




「この辺りは、盗賊が出るから気を付けた方がいい。」




と親切に教えてくれる。




この異世界でも、悪人はいるものだなと思いながら、先に進んでいく。




この世界では、当たり前なのだろうか、テラ以外誰も驚かない。テラは、




「ここでは、これが普通なんですね。」




と悲しい声で言う。




 日が南中する頃、辺りはのどかな草原が広がっていた。テラは初めて見る草原に目を輝かせていた。




「アキラさん、アキラさん、木がありません、見渡す限り草原です。」




彼女の反応は、見ていて面白い。




対する、イリスは見なれた光景なのだろうか、じっとこちらを観察して、ふと質問を投げかけられる。




「ねぇ、アキラの精霊ってどんななの?」




僕も気になっていた質問だ。




「ええ、僕の精霊?う~~ん、雷の鷲の人かな?よく説明とかしてくれるよ、厳しいけど優しそうな人だよ。」




と言うと、イリスやその他の従者が、驚いた表情をする。




どうやら、他の精霊は違うらしい。そのうち、イリスが自分の精霊について語りだす。




「私の精霊は、氷の熊なのだけれど、話しかけても、片言しか言わないの。




汝とか承るとか。私でもあまり意思疎通はできないのに、やはり異邦人とは、通じ合えるものがあるのかしら。




そういえば、アキラの血を飲んだ時、微かながら疎通が、できたような気がしたわ。」




と羨ましそうに言いながら、僕をじっと見つめる。




そんなに、見つめても血はあげませんという表情する。意志表示、大事! 




 すると、ハンターセンスが、敏感になにかを知らせる。




あ、これ絶対、またろくでもないことが、やってきていると感じる。




周囲を見渡すと、遠くの後方で、何かに追われているのか、馬車が猛スピードで走ってくる。




よぉ~く目を凝らして見ると、その後ろを、馬に乗った盗賊らしき者達に追われているではないか。




すぐにイリスたちに知らせる。




「後ろの方で、馬車が盗賊に襲われているぞ。助けなくて大丈夫か?」




と言うと、イリスたちは答えを渋る。




「私たちのことにいることは、あまり外部には漏らしたくありませんのが、ここは見逃すわけにはいきません。」




そうして、盗賊を追い払うことになる。




しかし、距離が離れており今から引き返しても、間に合わない、それでも、手はないかと考える。




そして、ピッカーンと閃く! それを精霊さんに打診する。




「それなら、できなくはないのですが、よろしいのですか?」




と問われる。




「お礼なんか望んじゃいないさ。さぁ、いっちょかましますか。」




と言い、精霊さんを納得させる。




ちょっとでも、狙いやすくするため、馬車の上に登る。




「あぁぁあぁぁあ、立つよ立つよ!! はい・・・立った。」




なんとか立つことができる。機敏性が、あってよかったと、内心思いながら、ありったけの電流を、矢に込める。




そして、盗賊の集団を狙い定め、矢を全力で引っ張る!!そして、放つ。




その矢は、命中のスキルにより、奇妙に飛距離が伸び、狙った場所へと届く。




そして、走っている盗賊たちの足もとに突き刺さり、電気がその場に広がる。馬がそれに驚き、混乱する。




十数秒間の時間を稼げた。それにより、後ろの馬車は、盗賊から離れることができた。




盗賊もこちらに気付き、分が悪いとわかったのか、離れていく。




そして、馬車の中から少女らしき人影が見えた様な気がしたので、僕は一礼をしてから、助手席へと戻る。




「機敏性が上昇しました。」




と精霊さんの事後報告を受けながら、西へと向かうのであった。

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