42.アキラ、備わる。

 馬車に揺れながら、僕は目を覚ます。体中が痛い。精霊さんが起きたことに気付き、話しかけてくる。




「宿主、おはようございます。お加減はどうでしょうか?」




「最悪です。」




と僕が告げると、




「大丈夫そうですね。」




そう軽くあしらわれる。状況を把握しようと周りを見ると、イリスが僕を抱いて眠っていた。




ワォ!! どういう意味!! と混乱している最中に、イリスが気付いたのか、目を覚ます。




「アキラ!! 起きたんだね。身体は、大丈夫どこもおかしくない?」




と心配そうに身体を確認してくれる。




この優しい女性は、誰だと思いつつ、気遣うイリスに




「ありがとう、身体動かないんだ。」




と照れながら、お礼を言う。




イリスは瞳に少し涙が浮かぶ。よかった、よかった、と言いながら、ぎゅっと抱きしめてくれる。




イリスの鼓動が微かに聞こえ、僕は安心して目を閉じる。




皆もそれで気付いたのか、一同に大猿を仕留めたことを労ってくれる。




カルラさんは、イリスを助けてくれたことに深々と感謝していた。




テラはというと、どうやら泣き疲れて眠ってしまっていた。起こしてしまっては申し訳ないと、そっとしておくことにした。




 朝食は、荷車の中で摂る。未だ、身体は動かずじまいであるが、テラがまた例の如く介助してくれたので、何の心配もなかった。




こんなに人に見られながら、介助されるのはいつ以来だろうか。幼児以来かと思いながら食する。




テラは慣れた手つきで行うので、周りが優しい目で見てくる。




イリスが少し拗ねた様な態度をとったように思えたが、すぐにいつもの凛々しさが戻る。




そしてイリスは、カルラさんと今後の予定について話している。




テラに膝枕してもらいながら、身体を癒している途中に、精霊さんが




「宿主、スキルアップデートが完了しました。」




そう通知をしてくれる。どうやら眠っている間も、アップデートをしてくれていたようだ。




「へぇー。どんな風に変わったの?」






 その言葉を、待ってましたと言わんばかりに、精霊さんが、その内容を話し出す。




「宿主との親和性の向上により、今まで多岐に渡っていた習練項目を6つの異能にまとめました。




忍耐を現す、Perseverance。




賢を現す、Sage。




機敏を現す、Yare。




意志疎通を意味する、Communication。




狩人を現す、Hunter。




奇妙を現す、Oddity。




これらの頭文字を取ってPSYCHOと名付けましょう。今から、この6つの異能の力を使い、高めていき、宿主の力になればと思います。」




今この時を持って、僕の新たな異能が備わった。




女の子に介助してもらいながらで、とても締まらない状況ではあるが、確かな手ごたえを感じる。




そして、西へと向かっていくのであった。

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