37.アキラ、荷造りする。
「ほぉ~~ほぉ~~、あなたにそんな子がいるとは、思いもしませんでしたよ。まぁ、わ、私は、妾の一人や二人、気にしませんが。」
と口では、冷静に振舞っているイリスだが、肩がふるえており、動揺が隠し切れていない。
対する、テラは顔が湯でタコの様に真っ赤で、完全にのぼせている。これはこれで、対応に困る状態だ。
「テラ、テラ、大丈夫ですか~?」
とテラの肩を揺らすと、意識が戻ってきたのか、
「は、はい。大丈夫です。アキラさん・・・。」
返事をするが、目は泳いでおり、こちらも動揺を隠し切れていない。
「と、とりあえず、ゆ、夕食にしよう。ね! ね! 」
この空気に耐えきれなくなり、僕は話題を変える。テラもそれに便乗して、
「そ、そうですね。今日は何を獲ってこられたのですか?」
と聞いてくる。布に包んでいた鹿の心臓とレバーを渡す。
「この大きさ、もしかしてウサギ以上のものを、仕留めれたんですね!! 」
とテラが喜んでくれる。
「うん、鹿を射止めたんだ。わけあって、肉は置いてきちゃったけど。ごめんね。」
と謝るが、テラは、首を横に振り許してくれる。
「ふたりで、戯れている所、申し訳ないが、時間もないのですばやく腹ごしらえしてほしい。すぐにここを出発して、王都へ向かいたいのだが。」
とイリスが割って入る。テラさんが、それを聞いてまた魂が抜ける。テラさんを揺すりながら、イリスにこの事情を説明してよと懇願する。
テラの魂が戻り、イリスに事情を説明してもらうことにした。二人をそのままにして、僕は包んであったハツとレバーを一口サイズに、切る作業をするのであった。
「そうですか、理由あっての婚約でしたか。びっくりしちゃいました。」
とテラは理解してくれているようだ。しかし、
「アキラさんを独りで、王都へは行かせません。私も一緒にお伴します、ねぇ!! アキラさん、私たち内縁の夫婦なんですもんね!! 当然ですよ・・・ね・・・」
と圧を感じる発言をした。イリスに目を向けると、顔を膨らませながらも、
「まぁ、私は目的を達成できれば、それでいいし、双方がそれでよければ、いいと思うが、4日か5日ほどはかかる。それに、テラ殿の髪の毛は目立つので、フードなどを被って移動してもらうことになるぞ。」
と言い、テラの方を見る。テラも首を縦に振っている。その表情を見たイリスは、こちら見てほくそ笑んでいる。
どうやら、僕に拒否権はないらしい。
そうして、切った内臓肉を串に刺し焼いていく。時間がないので、これで腹ごしらえをして、荷物をまとめて出発といった具合になった。
僕の荷物は精々、弓矢と、寝袋、ナイフぐらいだ。余裕があるので、テラの荷物も持つことにした。テラもそんなに荷物はないらしい。
一方で、イリスに何やら畑のことを相談している。
すると、イリスは、畑にあるかかしに魔術っぽい落書きをする。そして、発動する。かかしが光を纏う。
「これで10日くらいは大丈夫だ。」
と言う。どんな仕組みだよと気になるところだが、多分、精霊関連かと思う。
時間が、ある時に聞いてみよう。そうこうしている内に、荷物をまとめ出発ができるようになる。
そして、僕は初めてこの土地から、遠く離れるのであった。
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