36.アキラ、修羅場に入る。
アラキは、これから起こりうることを考えていた。
現在、テラの家にあと少しというところまで来ている。
人見知りのテラは、イリスを素直に受け入れてくれるだろうか。イリスは、テラの前で婚約したなどと言わないか。
そんなことを心配しながら、何か対策は建てれないかと思ったが、なにも思いつかないまま、テラの家に着いてしまう。
精霊さんが
「宿主、ハンターセンスの習練度が上昇しました。心中お察しします。」
と気遣った言葉をくれる。
腹を括り、いざ参らん!! という覚悟でドアを開ける。
すると、テラが気付きかけ寄ってくる。
「あ、お帰りなさいアキラ!!今日はどうだった?あっ・・・!! 」
と後ろにいたイリスに気付き、僕を壁にしてイリスから隠れる。そんなテラにイリスを紹介する。
「あ、この人は、東の森で出会った人で、イリスって言うんだ。悪い人じゃないよ、本当に。今晩だけ宿を貸してあげたいんだ。」
心の中では、やり方が悪い人ですが、と付け足す。そして、家主であるテラに、この人を泊めてあげてもいいかと許可を仰ぐ。
テラは、少し戸惑いもしたが、僕の頼みならと、
「はい、良いですよね。狭い家ですが。」
と了承してくれる。その様子を見たイリスは、深く一礼をして、
「テラ殿、このたびのご厚意、誠に感謝しますわ。」
と節度ある行動してくれた。
このまま穏便に行けば、僕何にもいりません。そう思った矢先、イリスが、場を静かにする発言をする。
「して、我が婚約者とテラ殿はどういったご関係なのですか?」
はい、恐れていた言葉キター!! この発言により、この時をもって、ここは修羅場と化した。
テラの耳が逆立ち、こちらを睨みつける。
「アキラぁ~~さぁ~~ん、どういうことですかぁ~~~!! 」
素直に怖いですテラさん。テラのドスの効いた声が、僕にプレッシャーをかける。
どう言い訳するんだ、どうしようどうしよう。それを見ていたイリスが、さらなる追加制裁を加える。
「嗚呼、先ほど私たちは唇を合せることも致しました。」
もう余計なこと言わないでよ!!
そう思いながら、必死にこの場を穏便に、終わらせる糸口を探す。
テラの表情は無だ。何も感じない無になっている。
一方のイリスの表情は、悦に浸った顔をしている。この女、僕をいじめて楽しんでるな。
婚約をどうごまかそうと考えているうちに、持ち前のハンターセンス君が働く。
「婚約を打ち消すには、それ以上のものをぶつければいいんだよ。」
なんとういう発想だ!! だが、そんなことできるか・・・一瞬、考える。時間的猶予は、残り少ない。
はっ! あった。すべてを穏便に、済ませることのできる言葉が。
僕はテラの肩に触り、イリスにこう告げた。
「内縁の妻です。」
その瞬間、テラの顔に生気が戻り、顔が紅に染まっていくのが、見てとれた。
イリスもまさか、そんな解答が来るとは思っていなかったようで、苦虫を噛んだような顔をしている。
これなら、婚約していても、契約破棄にはならないよね。捨て身の発言は、テラの体裁を保ち、イリスとの関係を維持するには十分だった。
しかし、この発言によりさらにややこしくなることを、まだこの時の僕は知らなかった。
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