23.アキラ、値上げする。

 3度目にもなると、慣れた手つきで血抜きを行う。




色の変わった血が出るかと覚悟していたが、そんなことはなく普通の赤色が、ウサギもどきから滴る。




変異種の頭を下に向け、血の排出を促しながら、葉っぱの尻尾を恐る恐る触ってみる。




「これは・・・葉っぱっぽいけど、尻尾のフワッティ感も残っている不思議な感覚だ・・・。」




独り言をつぶやくと、精霊さんが、




「その通りです。元々は普通のウサギでしたが、何世代にも渡るマナの蓄積により尻尾が、そのような様相に変異したと考えられます。」




精霊さんが、変異した理由を解説してくれる。ん?ということは、




「て、ことは人間にもそれは当てはまるってこと?」




精霊さんが答える。




「はい、個体差はありますが、テラさんのような変化が出てくるのでしょう。」




なるほど、マナってすごいなぁ・・・と思いながらも、処理したウサギもどきを担ぎながら、目的地の村へ歩みを進めるのであった。




 歩いてどれくらい経っただろうか、所々、ヒトの痕跡らしきものを発見し、始める。不自然に切り株の間が、空いた木々たちの、おかげで幾分か歩きやすい。




そしているうちに、道らしきものを見つけ、村の方角に向かって歩き出す。十数分も歩いている内に村らしきものを発見する。




後ろを振り返ってみると、昨日登った小高い頂上が、遠くの方に見える。




(やっと、ここまで来たか。)




となんとも言えぬ達成感を味わいながら、歩を進める。




 そして、ついに村に着く。村人がめずらしそうに、僕を見ている。トレーダーの店を探すため、僕は村を探索がてら、見物するのであった。




ほとんどの村人が、テラと同じように頭にケモノ耳がついている。




想像では、ついていないと考えていたが、そうではなかった。一人のケモノ耳少女が、話しかけてくる。




「お兄さん、どこから来たの?」




と可愛げのある声で質問する。




「僕はあっちの東側から、来たんだよ。」




と優しく答えると、少女は




「ふぅ~~ん、白神の所の方から来たんだね。」




と答える。白神って何に?と聞こうとしたところ、少女はどこかへ行ってしまった。




僕の勘が当たっていれば、もしかすると・・嫌な予測が思いつく。




ふと、周りの様子にハっと気付く。じっと僕の方を観察している。




どうやら、ここでは普通の容姿はとても珍しいようだ。すると、人だかりから、村長らしき人がこちらにやってくる。




「いやいや、王都の方でございますか。わざわざこんな辺境の村へお越しになるとは、どのようなご用件でしょうか?」




と腰が低い対応をしてくる。




「いやいや、そのような大層な身分ではございません。遠くの方で、この村が見えましたので、見物と持っている毛皮を売りに参りました。」




と答えると、




「ほぉ、そうですか、あちらに商いをやっとるものがおります。終わりましたら、私のうちにおいでください。」




と言って、娘のような子を残して、村長らしき人は行ってしまう。




「さぁさぁ、こちらにございますよ。」




と彼女が僕の手を引き、店へと案内してくれる。




 トレーダーの店に着くと、中から商人らしき男が




「いらっしゃーい、おっ、村長のところの娘さん。なんだ、横に連れてるのは王都の人か、でもめずらしい服装してるな。王都じゃそんなのが、流行ってるのか聞いてないなぁ・・。」




と挨拶する。村長の娘さんが、商いをしたいと説明してくれると、商人は、了承してくれる。狩ったウサギともどきの毛皮を渡す。




「ほぉ~~これは珍しいな、マウサギの毛皮か、こっちは普通のハウサギだな。う~~ん、41リラだ。これでどうだい。」




と商人が言う。条件反射で、




「もっといけるでしょ。」




と僕は言ってしまう。この世界の相場も知らないのに、よくハッタリをかませるな。と我ながら笑う。




「やるな。兄ちゃん負けたよ、51リラ。」




「いや、もっといけるでしょ。」




「おいおい、兄ちゃん、ん~~56リラ。」




ん~~それくらいなら、と妥協しようとしたところ




「話術の習練度がアップしました。」




と会話に、唐突に絡んでくる精霊さんにビックリして。




「ゥワアップ!!」




と大声を叫んでしまう。




「どうやら、兄ちゃん。相場を知ってるな、61リラ。これ以上は出せない。」




商人が、降参っぽいジェスチャーしてこちらを見る。




「じゃあ、それで。」




と交渉が成立する。61リラ・・・これって日本円で、いくらと思うアキラなのであった。

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