第三章  秘密

22.アキラ、未知る。

 この日、村に行くと決めたからには、例えテラの地雷であろうと、進もうと決意している自分に驚きつつも、荷物を準備する。


テラもそんな僕を察してか、狩った二匹のウサギの毛皮を、渡してくれる。


「じゃあ、行ってくるよ。」


とテラに向かって正直に言うと、


「うん、いってらっしゃい。絶対戻ってきてね。」


とテラはすべてをお見通しの様だ。そんなテラに帰宅は、夕方になりそうなことを伝え、僕は西に向かって歩き出す。


誰かが、自分の帰宅を心待ちにしてくれている。


そのことに嬉しさを感じつつも、絶対にその気持ちを裏切れないと、心に固く誓うのであった。


とりあえずの目的地を昨日登った頂上にして進む。昨日違い勝手がわかるので、ペース配分に気を付けながら歩いていく。


途中何が起こるかわからないので、弓を背中に背負いながら進んでいく。


「モリモリゴー、モリモリゴー、ムラムラゴー、ムラムラゴー・・。」


自作の曲を口ずさみながら、異世界の村が、どのような感じなのかを考えながら進む。


その足取りは軽快であった。


 昨日と同じく頂上を登っていく。着くとその景色を眺めながら、少し休憩する。


そして、彼方に見える村に目的地をセットして下っていく。


ここからは、未知のエリアだ。気を引き締めて、歩みを進める。


周囲の音や気配に気を配りながら、慎重に進んでいく。


ここは、野性動物の住む場所だ。人間の想像など及ばない範疇で、何が起こるかわからない。


一応、僕は木には登れるので、クマとか出たら木に逃げようと考える。


「隠密が上昇しました、いい傾向です。」


と精霊さんが、急にしゃべる。それに心臓が、飛び出るほどおどろく!!


「うわぁっ!!びっくりしたぁ!!」


大声を出してしまう。


「もう精霊さん急に話しかけないで、ビビるから。」


 そんなやり取りをしながら、進んでいくと少し開けた場所に出る。


すると、そこにウサギっぽい何かがいる。だが、様子はいつも見るウサギと少し違っていた。なんか尻尾が大きな葉っぱみたくないか・・・。よぉ~~く凝視する。


すると、精霊さんが


「あれは、マナが蓄積して様相が、変化したものになります。」


と教えてくれる。


「てことは、あれ食えば、普通のウサギより多く手に入るってこと?」


「いいえ、マナが蓄積して様相が、変わるほどの量を一度に取ると宿主にとっては毒となり、異常をきたす恐れがあります。」


な、なるほど一日摂取量があるって、意味ですね。


「不便ですね。」


と僕が答えると、


「はい、この世界は、あなたが思っているほど簡単ではないので。」


と諭される。


「しかし、食べれないからと言って、その身体を捨てるようなことはありません。」


確かに、何かの素材になるだろうし、この後村に行くんだから売れるはずだと思い、矢に指をかけて、慎重に近づいていく。


バレないように身を屈めながら、慎重に慎重に近づいていく。


隠密性が、前より上がったのだろうか。ウサギもどきはこちらにまだ気付いていていない。


ウサギの狩り方は二匹も狩っているので、慣れつつある。


そして、間合いに入り弦を引く。その音にウサギもどきが気付いたのか、警戒する。だが、もう遅い。弦を離すと、矢はまっすぐウサギの変異種を狙う。


そいつは、矢に気付いたのか、尻尾を盾に身を守る。だが、前よりも経験や技術を磨いたことにより、矢がその盾を貫く。


変異種は、致命傷はさけたものの、下半身の上あたりに矢が刺さる。


そこから、血が滴る。矢は脊椎を掠めたのか、ウサギの後ろ脚は思うように動かない様子で、ぎこちない足取りで逃げるが、すぐに諦める。


そして、何かを理解したのか、変異種は尻尾の大きな葉を振り回しながら、こちらを威嚇する。


 「もう一発、次は頭だ。」


矢をもう一本取り、弦を引く。変異種もそれ気付き、より早く葉を振りまわす。


「ワァッ!!」


と僕は大声を出すと、変異種の動きが一瞬止まる。


その隙を逃さず、頭に矢を放つ。少しずれたのか、矢は的の上あたりの軌道を描き始める。


しかし、そこでスキル【命中】が働き、矢が不自然に軌道を調整しながら進む。


そして、狙い通りの場所に、命中する。異世界に来て僕は異形のものを仕留めるのであった。

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