21.アキラ、驚く。

 テラの家に辿りつき、西側に行った先に村が、あったことを報告する。




「ねぇねぇテラ、西側を少し歩いた先に、村があったんだよ。今度、一緒に行ってみないか?」




テラの表情が微かに曇る。




「へ、へぇ~そ、そんな、と、ところに村がぁ・・あったんですね・・。」




と呂律が回らなくなりながら、平常を保とうとしているが、目から薄らと涙を流しながら言葉を出す。




尋常ではないテラの姿を見ていられなくなる。




「な、なんのことかな~、やっぱ僕の見間違いじゃないかな。アハハハ。そ、それより今日のご飯なにかな、ねえ、テラ教えてよ。」




と話題を逸らそうとする。テラもそれに便乗して、涙を拭き、




「きょ、今日はな、何にしましょう。何か食べたいものはないですか。今日は、特別になんでも良いですよ。」




自信げに胸を張る。この村とテラの関係は、何かありそうだと考える。




明日、あの村に行ってみてテラについて探ってみよう。こんなに純粋でいい子が、村から離れてひとりで生活しているなんて、きっと何かがあるはずだと考えるのであった。




 翌日、身体に違和感を覚えながら目を開ける。真っ暗な世界、だが、鳥のさえずりが聞こえる。なにか布で目隠しされてるようだ。




僕は平常を装いながら、この状況からの改善を求める。




「テラさ~~ん、今日は、朝からびっくりで楽しい生活の幕開けだね。こりゃ、一本取られたよ! びっくりしたよ。さぁ、紐を外してくれよ。これじゃあ、君を褒め称える拍手を送れないじゃないか。」




と怒ってないよ~、とアピールする。 実際、肩がそんなに凝ってない様子を見るに、僕の起きそうな時間帯より先に起きて、紐で縛り上げたのだろう。




テラの足音がする。そして、嗚咽しながら、




「ほ、ほんと?私のこと捨てて、どっかに居なくならない?村に行っても戻ってくる?」




と話しかけてくる。




「うん、テラには、いつも助けてもらってばっかりじゃないか。むしろ僕の方が、捨てられるんじゃないかって、心配してるくらいだよ。」




とテラを諭す。おもむろにテラが布をはずし、紐を解いてくれる。僕は手を頭の上に乗せる。




そして撫でる。テラが涙を浮かべながら、




「ありがとう・・・ありがとう・・・」




と小さな声で、そう呟くような気がした。この問題は、いつかテラが話してくれるのを、待とうと思うアキラであった。




その後、テラはいつも通り、朝食の支度をし始める。




だが、朝食は、一回も自分で食べることなく、テラがすべてやってくれた。この甘やかし方は嫌いじゃないです。


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