小説を投稿する意義

 貴方あなたは中島敦先生の「山月記」を読んだことがあるだろうか。いやむしろ教科書にるほど有名な作品であるから、一度は読んだことがあるのではなかろうか。


 ここから先は読んでいない人には少しネタバレになってしまうのでしからず。













 その中に出てくる往年の秀才(もっとも彼は詩人ではあるが)李徴は、自分が何故虎になってしまったのか、についてこう語っている。

 

 「人間であった時、おれは努めて人との交わりを避けた。人々は己を倨傲きょごうだ、尊大だといった。実は、それがほとんど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかった。

 勿論、かつての郷党きょうとうの鬼才といわれた自分に、自尊心が無かったとは云わない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいうべきものであった。

 己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。かといって、又、己は俗物の間にすることもいさぎよしとしなかった。(中略)己は次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶ふんもん慙恚ざんいとによって益々己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果になった。

 人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えてしまったのだ」


 ……私は虎にはなりたくない。


 私が最近になって投稿し始めたのは、改めてこの「山月記」を読み、そう思ったからであった。

 投稿という形であれば、たとい私がどんなに稚拙ちせつで面白くない小説を書いていたとしても、それについての意見をもらうことができる。

 だからこそ、同じように投稿している人たちと批評を交わし、もっと自分の文体に改善をほどこしてゆきたい。

 

 なにせ私はまだ新参者であるから(投稿していないだけで、本当に小説を書き始めたのは小学5年生ぐらいからであるが)。


 2019年9月25日

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日常の狭間 木魂 歌哉 @kodama-utaya

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