第43話 先輩も千歳さんも気にならないんですかあ!?
「えー、なんでえ、最悪じゃあないのー、ぷんぷーん」
「別に占いで人生の全てが決まる訳じゃあないんだからさあ、そんな事で騒ぐなよー」
「兄さんは占いを信じないんですかあ?」
テレビに釘付けになっている
『・・・あなたは全然意識してなくても、周りが勝手にあなたを巻き込んで大きなトラブルに見舞われるかもしれませーん』
「うわっ、マジで最悪な1日になりそう」
「はいはい、そう思っていて下さい」
『そんな双子座のあなたの運勢を変えるアイテムはアップルジュースでーす。朝からアップルジュースを飲んで気分一新頑張りましょう!』
「兄さーん、アップルジュース、うちにある?」
「缶のやつでよければ棚にあるよー」
「悪いけど出してー」
「はいはい」
やれやれ、『信ずるものは救われる』だね。ま、たしかに中学の俺のクラスの女子は大半が占いに一喜一憂してたし、中にはその日のラッキーカラーに合わせてハンカチの色を変えるという強者(?)がいたのも事実だ。俺の考えを千歳さんに押し付けるのはよくないね。
俺は棚の中から買い置きのアップルジュースを取り出したけど、当然だが冷蔵庫に入っていた訳じゃあないから冷えてない。千歳さんはアップルジュースを俺の手から受け取るとプルタブを一気に開けてアップルジュースを飲みだした。
「・・・っぷはー!おっし、これで悪霊退散よ!」
千歳さんはアップルジュースを一気に飲み干して空き缶をテーブルの上に『バン』と叩きつけるようにして置いたけど、そのままリモコンのボタンを押してテレビを止め、勢いよく立ち上がるとキッチンの空き缶入れに投げ入れてから階段をそそくさと上がっていった。俺はそんな千歳さんの後を追いかけるようにして階段を上がっていった。
さすがに今日は4日目だ。制服のブレザーを着る姿が何となくだが板についたと思うのは単なる自己満足か?それでも手早く着替えた俺は先に部屋を出てリビングで千歳さんを待つ形になった。
俺がリビングについたくらいに千歳さんの部屋の扉が『バタン』と開く音がして、千歳さんが颯爽と階段を降りてきた。今日も千歳スマイル全開で階段を下りて来る様は、まさに女神様のようである。あまりの可愛らしさにホレボレしちゃいます、はい!
「兄さーん、お待たせしましたー」
「はいはい、それじゃあ行きますよー」
「さすがに今日は『カノジョさんのお迎え』は無いようですねえ」
そう言って千歳さんはニヤニヤしているけど、さすがの俺も千歳さんが揶揄っているというのが分かってる。当然のように「俺にカノジョなんていないですよー」と切り返した。
「・・・今日も兄さんの可愛いカノジョさんか幼馴染さんがいないか監視しまーす」
「はいはい、好きにしてください」
「それじゃあ、好きにさせてもらいまーす」
そのまま千歳さんはリビングから玄関へ向かったから、俺は千歳さんの後に続く感じで玄関まで行った。
鍵を閉めるのは俺の役割だから千歳さんは先に靴を履いたけど、さすがに二人が靴を履いて玄関に立つのは無理だから先に靴を履いた千歳さんが玄関の扉を勢いよく開けた!
「おはようございまーす」
「うわっ!」
千歳さんが玄関を開けた途端、誰かが挨拶したからビックリして千歳さんは扉に手を掛けたまま固まっている。一体、誰が玄関前にいたんだあ?
「おはよー、キョーちゃん」
玄関前に立っていた人物はニコッとしながらまだ靴を履いてなかった俺に視線を合わせたけど、俺はその声を聞いた瞬間、マジで腰を抜かしそうになった。俺の家へ来て、しかも『おはよー、キョーちゃん』などと言う可能性がある人物は一人しか思いつかない!
「キョーちゃーん、早く行かないと遅刻するよー」
そう、玄関前に立っていたのは
先輩は相変わらずノンビリムードだけど、俺も千歳さんも「何で今日も先輩がここに来てるんだあ?」と言わんばかりの顔だ。
「さあさあ、千歳ちゃんもキョーゴ君も行くわよー」
先輩は俺と千歳さんを急かすようにして連れ出したけど、ほとんど強引ですー。だから俺も千歳さんも正直困惑を隠しきれないし・・・で、昨日と同じく先輩が千歳さんと並んで前を歩き、俺は二人の数歩後ろを追いかけるようにして歩いていた。
しかも先輩は何を思ったのか、歩道が広くなったら歩くのをピタッと止めた。何をするのかと思ったら後ろを振り向いてニコニコと俺が追い付いてくるのを待っていた。最初、千歳さんも俺も何を考えているのか全然分からなかったから、千歳さんは先輩と同じく歩みを止めて俺は普通に歩いていたけど、俺が先輩を追い越そうとして先輩の右側に並んだかと思ったら、俺と並ぶようにして歩き始めた!
俺は先輩が並んで歩き始めた瞬間、思わず『はあ!?』と言いそうになったけどそれは辛うじて堪えた。でも、置いてけぼりを食らったような形になった千歳さんは最初呆気に取られていたような顔をしたけど、『ハッ!』という表情をして慌てて駆け出して俺の右側に並んで歩き出した。つまり、俺は左の先輩と右の千歳さんに挟まれる形になったのだ。
「あ、あのー・・・」
俺は先輩に真意を正そうとして話し掛けたけど、先輩はチラッと俺の方を見ただけでニコニコ顔のまま何も返事をしないので、俺もそれ以上の事を話せなくなった。千歳さんはというと、いつも通りの千歳スマイルで俺の隣を歩いているから何を話せばいいのか全然分からない。そのまま俺たち三人は学校へ向かって歩き続けているから、周囲はどんどん清風山高校の制服を着た連中の密度が上がっている状態になっている。
あのー・・・なーんか、周囲の人たちが俺たちを見てヒソヒソ話をしているんですけどお・・・先輩も千歳さんも気にならないんですかあ!?
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