第41話 ある意味、羨ましい
教室に入ったら入ったで、クラスの人気者(?)
俺は登校早々、シンタ君に声を掛けられて教室の後ろで立ちながら話をしていたけど、そこに割り込む形で複数の男子から声を掛けられた。
「「おーい、キョーゴ」」
最初に声を掛けてきたのは・・・えーと、顔が似ているから見分けが付きにくいけど、肉まんみたいな(失礼)二人組、
「・・・あのさあ、同じ年齢の妹という存在は、キョーゴから見たらどういう感じなんだあ?」
東兄弟の兄貴の方、
「・・・いやー、今でこそ普通に話してるけど、以前は口も聞かないほどだったよー」
「「「「「マジかよ!?」」」」」
「ホントだよー」
・・・いや、これは全部嘘だ。昨日の千歳さんと先輩の会話の中で千歳さんが言った通りの嘘を押し通す事で俺と千歳さんの間で話がついているから、俺もその通りにしている。具体的な話は一切しないで出来るだけお茶を濁して中学校の時の俺たち二人に関する話を出さないように気をつけているだけ。さすがに小学校、中学校ともに公立・私立で別々だったというのが幸いにして校内の事は話せるが家での事は話せない。だからお互いに「以前は不仲だった」で押し切るしかないのだ。
「うっそー、同じ家に住んでながら口も聞かなかったのー?」
突然、向こうから話に割り込んでくる声が聞こえたので、ここにいた男子6人が一斉に声がした方向を向いたけど、そこにいたのは
「わたしたちは同じ女同士だからー、殆どプライバシーなんか無い位に四六時中お喋りしてるから、全然想像できないんだけどねー」
「やっぱり、同じ双子でも男と女では話が合わないの?」
神楽さんと瑞穂さんが不思議そうな顔で俺を覗き込んできたけど、俺だって西姉妹の質問に本当の事を言いたいのはヤマヤマだけど、もう既に『双子のきょうだい』で押し通す事にしているから、嘘の上塗りをしていくしかないのだ・・・
「・・・いやー、小学校が別々だったというのもあってさあ、しかもあっちが私立でこっちが公立だから俺の方が心理的な壁を作ってたから、余計に喋りにくい雰囲気を作ってたのは事実なんだ。この年齢で『
「「「「「「「ふーん」」」」」」」」
スマン、これも千歳さんと口裏合わせをした内容に過ぎないんだ。だからこれ以上詮索するのは正直勘弁してくれー。、こうでもしないと義理のきょうだいになったばかりというのがバレてしまうというのを分かってくれー。
「・・・キョーゴ」
「ん?シンタ君、何か?」
「いつ頃から普通に話すようになった?」
「うーん・・・今年の正月。お互いに同じ学校の同じ科を第一志望として受験するというのが分かったあたりから」
「「「「「「「へえー」」」」」」」
「・・・『お互いに頑張ろう』てな感じで、いつの間にか普通に話すようになったけどねー」
「「「「「「「ふーん」」」」」」」
「まあ、逆に言えば俺もどういう距離感で接すればいいのか、今でも測りかねているところがあるけどねー」
「「「「「「「なーるほどねえ」」」」」」」
「ところでさあ、東君たちのきょうだいは二人だけ?それとも他にいるの?」
俺はこれ以上話すとボロを出しそうだったから話題を強引に東兄弟に振ったけど、東兄弟は声を揃えて「いるよー」とあっけらかんとした表情で言った。
「いやー、オレたちのところは男ばかり三人で兄貴は専門学校の2年生だけどー」
「男ばかりだからお母さんに言わせたら大メシ食らいの困り者らしいけど、北たちはどうなんだあ?」
「うーん、オレたちのところは小学校4年生の弟だから、こっちも男ばかりなんだよなあ」
「まあ、お父さんやお爺ちゃんに言わせれば漫才トリオらしいけど、西さんのところはどうなんだあ?」
「6年生の妹がいるけどー」
「本人はお笑い芸人を本気で目指してるからー、勉強よりもお笑いネタ作りばかりしてるよー」
そう言って本物の双子3組は大笑いしてたけど、俺もシンタ君もそれに釣られる形で大笑いしていた。
「・・・そういえばさあ、
ひとしきり笑い終わった後で北兄弟の弟、北比布君がシンタ君に話を振ったけど、シンタ君が言うには中学1年生の弟がいるようだが、兄弟揃ってヒョロヒョロの上「本気で漫画家を目指している」とかで勉強よりも絵を書く事に熱中しているらしく、暇さえあれば挿絵のような物や四コマ漫画を描いていて、家ではマンガの話しかしないらしい。
「・・・へえ、それじゃあ、この中では異性のきょうだいがいるのはキョーゴのところだけかあ」
「ある意味、羨ましいけどなー」
そう言って北兄弟が俺の左右の腰を肘でゴリゴリ押したけど、けっして嫌味とかで押したのはない、その逆で「おまえが羨ましいぞ」と揶揄っているようだ。
「・・・おーっす、おはよー」
朝の予鈴が鳴る前だけど、早くも
朝のショートホームの担当は当たり前だが天北先生だから入ってくるのは別におかしくないけど、昨日と同じく上はメンズでジーンズだけはレディース、しかも足元はこれまたメンズのスニーカーで、クラスの女子連中が一斉に「せんせー、この靴、メンズですよね?」「わざと履いてるんですか?」「どこで買ってるんですか?」「どうやったらメンズの服を上手に着こなせるんですか?」などとショートホームルームが始まっても質問責めにしていた。
さすがの天北先生も返事に窮するところがあったけど、先生ほどの人ならどんな服をコーディネートしてもお似合いだと思うのは俺だけかなあ。
天北先生曰く「〇ーボックは一番のお気に入りシューズブランド」(当然ですが流暢な英語で披露してくれたけど俺には無理)らしいです。クラスの連中が大爆笑したのが「あちこちのDepartment storeで品定めしてから楽園市場で買ってる」だったけどね。でも、その後に「おまえらー、デパートは和製英語だから気を付けろよー」と釘を刺すところはさすがだ。
「・・・おーい、これ以上やってるとshort home roomが始められないぞー」
天北先生のファッションコーナーはショートホームルームが始まっても暫く続いたけど、さすがにマズイと思ったのかこの一言で俺たち1年2組の賑やかな時間は終わりとなり、ショートホームルームと、それに引き続いての1時間目の日本史の授業が始まり俺たちの高校生活最初の授業はこうして幕を開けた。
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