第31話 私も腹を括りましたから
俺はその言葉に思わず立ち止まって
俺はどう返事をすべきか迷ったけど、ここで嘘を言っても仕方ない。それに先輩はあの事を知っているのだから正直に話すしかない・・・
「・・・結論を言えばそうなりますね。俺はトキコーか
それだけ言うと俺はスタスタと歩き始めたが、先輩は「ちょっと待ってよー」と言って俺の右に並んで、そのまま歩き始めた。
「・・・清風山高校のスーパー特進科は海外へのショートステイがあるから費用的に厳しいという子は特進科を選ぶから、あながち特進科のレベルが下という訳ではないのは事実ね。実際、2年生の去年の学年末テストのトップはスーパー特進科だけど、トップ10を見れば5人ずつだから決して特進科が下とは言い切れないわ」
「そういう事です。父さんはスーパー特進科でもいいと言ってたけど、ショートステイにかかる費用を考えると迷惑を掛けたくなかったからなあ」
「その割に私と一緒に受けた夏期講習の模試で『合格確率30%以下』って評価された時のキョーゴ君は相当焦ってたわね」
「せんぱーい、その話はもう勘弁して下さいよお。あれが俺のターニングポイントになったのも事実ですからー」
「そうね、たしかにあの後からはキョーゴ君は中二病的発言というか妄言をしなくなったのも事実だからね」
「はいはい」
俺と先輩は横断歩道の赤信号で止まったけど、その時に先輩の表情をチラッと見たらニコニコしたままだ。その表情は今日の
「・・・ところでキョーゴ君」
「何ですか?」
「あの時、2年前の夏期講習の模試が終わった後に私と賭けをしたのを覚えてる?」
「へ?」
「あれ?覚えてないの?」
「ちょっと待ってください、2年前の模試が終わった後ですよね・・・」
「正確には、模試の結果が帰ってきた後の事だけど・・・」
「・・・・・」
俺は記憶の糸を必死になって手繰り寄せて何かの賭けを先輩としたというのは思い出したが、何を賭けたのかまではどうやっても思い出せない。でも、先輩の表情を伺う限りでは、先輩は覚えているとしか思えない。
で、でも、ここで「すみません、忘れました」と言うのもなあ。となると、ここは・・・
「あー、あれですね、たしかにしましたねー」
「あーあ、覚えていたのかあ、残念だなあ」
「あれー、先輩は忘れていてくれた方が良かったんですかあ?」
「当たり前です。キョーゴ君が私と同じ高校に入ったという時点で3つのうちの1つは確定ですから」
「?????」
そう言ったかと思うと先輩は青信号になった横断歩道を歩き始めたから、俺も慌てて先輩を追いかけて行った。
でも、先輩は横断歩道を渡ると、そのままセブンシックスに入っていった。
『いらっしゃいませー、セブンシックスへようこそー』
先輩は店内に入ったかと思うと俺の方を振り向いて
「カフェオレでもいいよね」
「へ?」
「私もお小遣いが少ないからカフェオレで許して欲しいんだけど、いいかなあ」
「い、いいですけど・・・」
「じゃあ、これで1つ目はコンプリートという事で」
そう言ったかと思うと先輩は店員さんに「カフェオレを2つください」と言って注文した。俺は先輩がmomocoを店員さんに差し出したから慌てて俺もmomocoを財布から取り出したけど、先輩が「これは私の負け分」と言って強引に自分のmomocoを店員さんに渡したから俺は黙ってmomocoを引っ込めた。
先輩は最初に受け取ったカフェオレを俺に渡し、次に受け取ったカフェオレは自分の左手に持って、右手でスティクシュガーをカップに入れて飲み始めた。俺はミルクだけを入れて飲み始めたけど、飲み終わるまで先輩はずっと無言だった。でも、何となくだが先輩が終始落ち着かないように感じられたのは俺だけだろうか?
先輩は半分くらい飲み終わったところで左手をブレザーのポケットに入れたかと思うとスマホを取り出した。
「はい」
先輩は左手に持ったスマホを俺に差し出した時、俺は一瞬何をしたいのか分からなかったけど直ぐにピンときた。俺の電話番号とアドレスを教えて欲しいという意味だと分かったから、俺は一度カップをカウンターに置くと自分のポケットからスマホを取り出し、俺が2台のスマホを操作する形で通信してデータ通信を行った。
先輩は俺からスマホを受け取るとニコッと微笑んで自分のブレザーのポケットに戻したから、俺も黙ってポケットに入れて再びコーヒーを飲み始めた。
先輩は先にコーヒーを飲み終わってたけど、俺が飲み終わるを待っていたかのように店を出たから俺も慌てて先輩を追いかけるようにして店を出たが、その時も先輩は俺が来るのに合わせて俺の隣に並んで歩き始めた。
そのまま暫く先輩は何も話さなかった。俺は先輩の事が少し気になったから先輩の方を振り向いたけど、俺と目線があった途端、急にニコニコ顔から真面目な顔になり
「・・・キョーゴ君、一つ、聞いてもいいかなあ」
「ん?何ですかあ?」
「君が主席入学者ではないのは新入生代表挨拶を妹さんがしてるから間違いないけど、まさかとは思うけど成績優秀特待生じゃあないわよね・・・」
「せんぱーい、俺が特待生だったら何かあるんですかあ?」
「またまたあ、惚けたって駄目だよ。まあ、私を気遣ってくれてるのかもしれないけど、私は正直に答えたから君もちゃあんと答えなさい」
そう言って先輩はちょっと怒ったような顔で俺を見たから、俺は「恐らく、あの時の賭けの中に入っていた事だ」というのはピンときたけど、相変わらずではあるが賭けの内容までは思い出せない。
でも、先輩が言いたい事は分かる。
「・・・成績優秀特待生制度はスーパー特進科と特進科に分かれた2年前から変わりましたよね」
「そうね、去年の卒業生までは10人だけだったけど、今の3年生が入学してからは20人になったけど、その扱いが変わったわね」
「うん。1年生は入学試験の一発勝負だけど、2年生は1年生の時の総合成績、3年生は2年生の時の総合成績で特待生の対象者が変わるようになった・・・」
「1年生は2位から20位までは授業料が一律30%割り引かれるど主席入学者は60%、2年生と3年生は前年の年間順位が11位から20位は15%で2位から10位は30%、年間総合1位は60%ね。さらに年間を通して1位をキープした場合は75%・・・」
「そんなバケモノみたいな人がいたら俺も見てみたいなー」
「あらー、あの生徒会長は2年間のテストで一度も2位以下になった事がないのを校内で知らない人はいないわよ」
「マジ!?」
「
「ある意味、入学後も競争させようという意味で制度が変わったと俺は受け止めてるよ」
「私もそう思うわ。それで、最初の質問に戻るけどキョーゴ君は?」
「言わないと駄目ですかあ?」
「当たり前です。私も腹を括りましたから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます