第23話 あーあ、折角同じ塾出身の子が隣の席に座ってるのに
俺は教室の後ろでボーッと立っている事しか出来なかったけど、俺の左隣、つまり出席番号29番の席に座っている眼鏡を掛けて水色リボンのポニーテールにしている女の子と目があった。その子は俺の視線に気付いたのか、ニコッとして
「ねえ、るべ・・・しべ君」
「あー、
「じゃあ、キョーゴ君と呼び直すけど、キョーゴ君、君は
「はあ!?どうしてそれを知ってる!! ( ゚Д゚)」
「あったり前でしょ?わたしだってそこに3年間通ってたんだからさあ」
そう言うと、その子は立ち上がって俺の左に来た。
俺は必死に名前を思い出そうとしたけど、結構変わった苗字だというのは覚えていたけど結局思い出せなかったから、仕方なく
「あのー、名前、何と言ったかなあ」
「はーー、あの苗字で覚えていてくれなかったのは悲しいなあ」
「悪かったな!どうせ俺は他人の名前を覚えるのは下手糞ですよーだ」
「まあまあ、それはお互い様という事で・・・」
そう言ったかと思うとニコッとしていた顔が凛々しい、超がつくくらいに真面目な顔になって
「あーあ、折角同じ塾出身の子が隣の席に座ってるのに覚えていなかったとは、ちょっと悲しいなあ」
「あのー・・・どうして中学が違うのに俺の事を知ってたんですかあ?」
「あれー、分からないの?」
「うん」
「キョーゴ君、練習会は模試の成績優秀者の名前を大々的に張り出すから、新札幌校の上位者の中にいつも『留辺蘂』という変わった苗字の男子がいたから覚えてたし、それに、新札幌校の中で
「たしかに、新札幌校で清風山高校の特進科に合格したのがもう一人いたけど、さすがに名前までは憶えてなかったよ・・・」
「まあ、正直に言うけど私の第一志望はトキコーの特進科だったけど、そっちは不合格だったから、トキコーの普通科に行くよりは清風山高校の特進科に行く方がいいに決まってるから、こっちに進学したんだけど、場合が場合だったらこうやって話す事は絶対に無かったよね」
「それもそうだね」
「まだ中学3年の時の練習会グループの模試上位者一覧のプリントを持ってるようなら、上位者の中では結構下位になるけど『新札幌校
「うーん、多分まだある筈だから見てみるよ」
「頼むわよー」
そう言うと、その女の子、東町門さんは再びニコッツとしたけど、ここで2時間目開始のチャイムが鳴ったから俺も東町門さんも自分の席に戻った。俺の席周辺にいた大勢の連中も自分の席に戻ったから座れるようになったけど、まだ
“ツンツン”
あれ?誰かが俺の背中を突っ突いてる。でも、この位置でこの時間に背中を突っ突く事が出来るのは
「ん?呼んだかあ」
「当たり前です。こっちは大変だったのに兄さんは呑気に女の子と喋ってるし、早くも可愛い子を見付けて口説こうとしたんですかあ?」
「おいおい、そんな事をする度胸は俺にはないぞー」
「あー、もしかして、今度こそ本当にカノジョさんの登場ですかあ?」
「おい、冗談も程々にしてくれー」
「まあ、冗談に決まってるわよ」
「心臓に良くないぞ!」
「それはそうと、あの子とどんな話をしてたの?」
「あー、それはだなあ、俺は全然気付いてなかったけど、俺が通っていた塾にいた子なんだけど、別の中学だったから同じ塾に通っていたという事も全然知らなくてね、あっちから声を掛けてきたから初めて一緒の塾にいたというのを知ったくらいだぞ」
「へえー、という事は兄さんはあの子を知らなかったけど、あの子は兄さんの事を知ってたんだあ」
「そういう事らしいよ。『留辺蘂』という苗字が珍しいから覚えていたみたい」
「なるほど。たしかに珍しい苗字ですからね」
「そういう事だ」
そう言うと俺は東町門さんの方を見たけど、向こうも俺が見た事に気付いて頭を軽く下げると同時に右手を振ってきた。千歳さんも軽く頭を下げて右手を振ったから東町門さんも千歳さんに手を振った。
ここで
正直、2時間目の2組は大人しかった。この時間は明日以降の授業内容の概要説明、それと校内の施設についての紹介や注意事項の説明に終始したからだ。だから俺たちが1時間目のように沸く事は無かったと言っても過言ではなかった。
そーんな退屈な(?)2時間目が終わったところでホームルームは終了。今日は特別時間割だから、ここで少々長めの休み時間になった後は3時間目の生徒会主催のオリエンテーションとなるのだが、この時間配分も特別時間割になってるからオリエンテーションが終われば早めの昼休み、それが終われば部・同好会合同説明会となる訳だ。どちらも去年の4月に新しく生まれ変わった講堂、つまり昨日入学式が行われた会場で行われるのだ。
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