第9話 3年間同じクラスになることも確定かよ!?
父さんと母さんがリビングに来て全員で記念写真を1枚だけ撮ったら早速出発した。でも、時刻は間もなく入学式の受付開始の1時間前になろうとしている。
今日は車で学校へ向かう。「えっ?いいのかあ?」と思うかもしれないが、遠方から来る保護者も多いから校庭を臨時駐車場として開放しているのだ。もちろん、今日だけだが。そんな訳で父さんの運転で出発したのだが、俺も
学校まで徒歩なら20分弱だから、車なら5分程度・・・と言いたいのだが、それは無理。なぜなら途中に信号待ちがあるのだが、どうしても国道側の青信号の方が長いから待たされる時間は結構ある。おまけに朝の通勤ラッシュが始まっているから、ここで相当待たされるのは必至だ。
「父さーん、何かいつもより時間が掛り過ぎのような気がするけど・・・」
「気のせいじゃあなくて、ホントに掛かり過ぎだぞ」
「えー、勘弁してよお」
「仕方ないだろ?この交差点を右折して札幌市内へ向かう車の方が圧倒的に多いから、なかなか進まないんだぞ。しかも右折レーンを作る工事をしている際中だから余計に道幅が狭くなってるからなあ」
「はああ・・・仕方ないかあ」
「でも、それもこれも兄さんが寝坊したからです!」
「すみません・・・」
「まあ、これ以上言うと愚痴になるから、事実は事実として冷静に受け止めましょう」
そう言うと千歳さんはニコッとして俺の方を振り向いたが、たしかに全ての原因は俺にあるから肩身が狭い。なんだかんだで5回の信号待ちでようやく国道に出てからはスムーズに進んで、やがて進行方向左手に清風山高校の建物が見えてきた。正門は次の信号を左に曲がった先にあり、臨時駐車場であるグラウンドには、さらにその先の交差点を左に曲がった先の臨時出入口から入るのだが・・・信号を左に曲がった途端、行列が目に入った。
「うわっ!これってまさか全部写真待ちの列なのかあ!?」
「多分そうでしょうね。早く行かないと入学式前の撮影は厳しいですよー」
「父さーん、正門の前で車を止められる?」
「いや、無理だ。臨時のバリケードが置いてあるし、先生方も交通整理をやってるから降ろすのは無理だぞ」
「兄さんの寝坊がここまで響くとはねえ」
「反省してますからこれ以上言わないで下さーい」
「はいはい」
父さんは車をグラウンドに入れたけど、駐車場整理を担当している先生に誘導される形で駐車したところで俺と千歳さんは鞄だけを持って正門に向かった。俺たちが正門前に行った時、列の最後尾には『最後尾』という看板を持つ男性教師が立っていたけど、その写真撮影待ちの列は50組を超えていた。既に撮影し終えた組もあれば、俺たちよりも後に並ぶ組もあった。
「あー、君たち、ちょっといいかなあ」
いきなり俺たちは看板を持った男性教師から声を掛けられたから、一瞬、誰の事なのかと思ったけど、その教師が俺の方を見ていたので俺に話し掛けたというのだけは分かった。
「あー、はい、何でしょうか?」
「うーん、正直に言うけど受付終了時間前に写真を撮れるかどうか微妙だよ」
「「えーっ!本当ですかあ?」」
「ああ。間もなく入学式の受付開始時間になるけど、9時15分までに受け付けを済ませて教室に入るとなると、ちょっーと厳しいよ」
「たしかにそうですね・・・さっきから列が全然進んでない」
「だろ?さっきから先に受付を済ませた方がいいと伝えているから列が伸びてないけど、一番後ろに並んでる人たちも撮れるかどうか微妙だからね」
たしかに男性教師の言う通りで、写真を1枚撮ってハイ終わり、なら間に合うだろうけど、どの新入生も親御さんも、生徒だけで撮る写真と自分たちも一緒に撮る写真の最低2枚撮ってるし、中にはセルフタイマーを使って、お爺ちゃん・お婆ちゃんたちも含めた大勢で撮ってる人もいる。これじゃあ受付終了前に撮影出来るかどうか微妙というのも納得だ・・・。
俺は正直迷っていたけど、俺のブレザーの右袖を誰かがグイグイと引っ張っている事に気付き、そちらを向いた。
俺の袖を引っ張っていたのは千歳さんだった。
「兄さーん、ここは素直に諦めた方がいいかと思いますよ」
「うーん、俺もそう思うけど、取りあえず父さんと母さんがもうすぐ来る筈だから、それまで待っていよう」
「それもそうね」
「父さんたちが帰りでいいというなら帰りにして、ここで並んで待つというなら待つでいいと思う」
「そうですね、母さんたちが来るのを待ちましょう」
そう言うと俺と千歳さんはそのまま列の最後尾に並んで父さんと母さんが来るのを待っていた。父さんと母さんが来てから事情を話したけど、二人とも「それなら帰りに撮りましょう」と言ったので、俺たちは列から離れ、先に受付をする事にした。
が・・・受付も相当な列だ。1年生の数だけでも300人近い人数がいるし、今日はその保護者もいる。それらが集中するのだから、列が出来るのも仕方ない。
でも、大半の1年生はクラス分けが書かれたボードの前に一度行き、その後に受付へ行く。そう、普通科の生徒は3組から8組のどこになるのか今日になるまで分からないからだ。
でも、俺はそこに行かない。それは父さんも承知している。なぜなら、俺は既に2組だというのが分かっている。学年に1クラスしかない『特進科』は2組と決まっているからだ。
俺は靴を履き替えると、一番左側のテーブルの列の最後尾に並んだ。このテーブルの列に並ぶのは1組と2組と決まっている。だから俺は父さんとこの列に並んだのだが・・・そういえば、千歳さんはどこに並ぶのだろう・・・俺はそう思って首を右に左に向けて千歳さんを探してたのだが・・・
“ツンツン”
俺はいきなり背中を指でツンツンされたから思わず後ろを振り向いたけど、そこにはニコニコ顔の千歳さんがいた。
「はあ!?」
「兄さーん、何を挙動不審になってるんですかあ?」
「お、お前、俺の後ろにいたのかあ!?」
「あれー、気付かなかったんですかあ?最初から後ろにいましたよ」
「という事は、1組か2組なのか?」
「あれ?全然聞いてなかったんですか?」
「何を?」
「私も兄さんと同じ1年2組ですよ」
「マジかよ!?」
「嘘じゃあないですよ。この列に並んでるのが何よりの証拠ですよ」
「・・・・・ (・_・;) 」
おいおい、これで俺は千歳さんとは3年間同じ学校へ通うどころか3年間同じクラスになることも確定じゃあないか。しかも、『
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