第2話 俺が兄貴?それとも、あっちが姉貴?
「おーい、そろそろ行くぞ」
「あいよー」
俺は父さんに促されて立ち上がった。
時刻は午前10時半。今日は土曜日だから父さんも休みだ。
今日は父さんの再婚相手、
昨日の段階で、汐見さんの娘さんは超がつくほど可愛いというのは分かったが実際にこの目で見たら評価が変わるかもしれない。いや、多分変わらないとは思うけど。ただ『同い年の姉、もしくは妹になる』というのだけは分かっている。俺の誕生日は5月22日。半分以上の確率で俺は『兄』、汐見さんの娘さんが『妹』という事になる筈だ。
でも、そんな事はどうでもいい!仮に俺が兄だったとしても、俺にとっての妹は
そんな俺の葛藤を見透かしたかのように、さっきまで無言だった父さんは俺に優しく話しかけてきた。
「
「ん?どうした」
俺は父さんの方を振り向いたけど、父さんは俺の方を向いてなかった。運転中だから当たり前なのかもしれないけどね。
「・・・お前にはすまない事をした」
「ん?・・・俺に黙って再婚した事か?」
「いや、違う・・・あの時、お前だけ引き取った事を・・・」
「・・・父さん、それは言わない約束だ。俺はその事を責めるつもりはない!」
「・・・そう言ってくれると助かる」
「俺は父さんの事も、母さんの事も伯父さんだとも伯母さんだとも思った事は一度もない!それだけは言っておく」
「・・・ありがとう」
「母さんもそれは何度も俺に謝った。だけど俺は母さんを責めた事は一度もない。だから父さんも母さんを責めないでくれ」
「・・・分かった」
「父さんは今まで俺の為に自分を犠牲にしてきた。だから父さんがこれ以上苦しむのを俺は見たくないんだよ」
「・・・ありがとう」
それだけ言うと父さんは再び無言になった。俺はなんか重圧に耐えきれなくなったからラジオのスイッチを入れたから、ちょっとだけ気分が晴れた。
『いらっしゃいませー、ボストにようこそー』
ボストについて車を駐車場に止めてから俺と父さんは店に入ったが、どうやら俺たちの方が先についたようだ。でも、入口で突っ立っているのも悪いし、他の客にも迷惑をかけるから、俺たちは禁煙席の4人掛けテーブルで座って待つ事にした。
俺は正直、汐見さんの娘さんとどう接したらいいのか全然分からなかった。だから「どうすればいいんだ?」「最初は何と言えばいいんだ?」という事ばかり考えていたから、汐見さんと娘さんが来て、しかも俺の正面の席に汐見さんの娘さん、つまり俺の義理の姉もしくは妹になる女の子が座った事に全然気付いてなかった。父さんが俺の脇腹を何度か小突いていたみたいだが、俺が全然気付いてなくて頭を『ゴツン!』と軽くゲンコツで叩かれて初めて気付いたというのが正解だ。
その子は、汐見さんの娘さんは今日はラフで可愛い赤系の服を着ていたが、写真で見た以上に可愛いと思った。『綺麗』とか『美しい』と表現するのはちょっと違和感がある・・・どちらかと言えば『可愛い系』であり、一言で言い表すなら究極の妹!!!
俺は内心「ホントにこの子ときょうだいになってもいいのかあ!?」とマジで焦ったくらいだ。多分、100人いれば100人が「可愛い」と答えるだろう。
「おーい、京極、お前、何を冷や汗をかいてるんだあ?」
父さんはそう言って俺を揶揄ったけど、たしかに俺の両手はベトベトになってたし、おそらく額には相当な汗が流れてるんだろうな。
俺は右手の人差し指で自分の頬を軽くポリポリしながら苦笑いしたけど、その子も俺のその仕草を見て
「フフ、京極君、私の事を見てビビっちゃったのかなあ?」
そう言ってニコッとしたから、俺も「うわっ、マジで声まで可愛い!」と思ってしまった。マジでこいつときょうだいになれて、俺、最高!
「あー、京極、掛澗
父さんが俺にその子を、掛澗千歳さんを紹介したから、その子も
「掛澗千歳です。よろしくお願いします」
それだけ言って丁寧に頭を下げた。その仕草がまた可愛くて、思わずホレボレしてしまった。俺、もしかしたらデレーっとしてるかもなあ・・・
あれ?・・・今、たしか・・・『ち・と・せ』
俺はハッとなってその子を、掛澗千歳さんを見たけど、たしかに超がつく程可愛いけど、俺の妹、正しくは俺の双子の妹だった
それに・・・南千歳にもあった左目の下のホクロがこの子にもある!
俺はそれに気付いた瞬間、思わずテーブルを『バン!』と叩いて立ち上がった。
「お、お前、ま、まさか、あの千歳だよな!そうだよな、そうだろ?」
「えっ?え、えっ、ちょっと待って下さい!人違いですよお」
俺は思わず掛澗千歳さんの両肩を掴んで激しく揺すっていたから、慌てて父さんが俺の両手を押さえたくらいだ。その間、掛澗千歳さんは困惑の表情を隠しきれないといった感じだった。
「落ち着け、京極!」
父さんは俺を叱りつけたから俺も我に返り、「す、すまない」と言って大人しく座って、もう1回掛澗千歳さんに「ゴメン」と言って神妙に謝った。
掛澗千歳さんは再びニコッとして
「その件は
それだけ言って軽く笑ったから、俺も「ハハ、ハハ」と言って軽く笑って誤魔化した。
俺たちはメニューを見てから各々好きな物をセレクトして注文した後にランチドリンクバーのところに行った。
俺は最初はコーヒーにするつもりだったけど、千歳さんが紅茶を選んだ事に気付いたから「今日は紅茶にしてみよう」と考えを変え、俺もコーヒーではなく紅茶を、正しくは彼女と同じダージリンを選んだ。
「あらー、京極君も紅茶なの?」
「あー、いやー、俺もたまには紅茶にしようと思って」
「ふーん、じゃあ、普段は何を飲むの?」
「こういう時はコーヒー」
「あれ?コーラとオレンジとメロンをミックスするんじゃあないの?」
「俺は幼稚園児かよ!?」
「あー、これは失礼いたしましたあ」
そう言って千歳さんは笑い、俺もそれに釣られる形で一緒に笑い、二人並ぶ形で席に戻ってきた。
父さんと汐見さんは先に席に戻って烏龍茶を飲んでいたが
「あらー、早速和気あいあいですかあ?」
「若いって、いいねえ」
「ホントね」
おいおい、早速二人で俺と千歳さんを揶揄ってるのかよ!?だから俺も千歳さんも負けじと反撃し、しばし楽しい時間となりましたあ。
互いに注文した料理が運ばれてきたから和気あいあい(?)の時間は終わりとなり、ここからは楽しいお食事タイムとなり、俺はちょっと豪勢なミックスグリルランチ、千歳さんはヘルシーなチキングリル。父さんたちは和食だったけど、かなりいい雰囲気でのお食事タイムだ。
でも、その和やかなお食事タイムの時、汐見さんが思い出したかのように言った一言で俺は再び固まった。
「そういえば、京極君はお兄ちゃんになるの?それとも千歳がお姉ちゃんになるの?」
「へ?・・・」
俺は千歳さんを見たけど、彼女はニコニコしたまま手を止めて俺を見ている。父さんも俺を穏やかに見ている。という事は二人とも汐見さんが言った言葉の意味を理解している・・・。
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