第6話

人間は、普通は自力では空を飛べない。

まあ、普通でなくても、飛べないが・・・


しかし、夢の中なら自由に飛べる。

特にそれが、明晰夢なら想いのままだ・・・


そう、普通は・・・


でも・・・


「飛べない、落ちる・・・」

空を飛ぼうとしている夢をみた。

それが夢だとわかる明晰夢。


でも、飛べない。

落ちていく・・・


空を見る。

夢の中でも、狭いのか・・・


なんで、飛べないんだろう・・・


「太り過ぎなんだよ」

「何?」

見上げると、そこには女神さまがいた。


「女神って、大袈裟だよ、私はそんないいものじゃない」

「そうなの?」

「強いて言うなら、天使かな・・・」

気がつかなかったが、白い翼が生えていた。


「さあ、つかまって。」

差し出された手を握る。


「どこまで行きたい?」

「この世界の、空をみたい」

「OK。じゃあ行くよ」


天使となのる女の子に、手を握られて上昇している。


「君、本当に重いね?何キロ」

「80キロ」

「身長は?」

「167くらいかな・・・」

「痩せなさい」

それを言うなって・・・


僕も悩んでるんだから・・・


「あっ、まだ名前教えてなかったね」

「そう言えば・・・」

「私は、リャナン・シー、君は?」

そういう妖精が、アイルランドにいたな。

確か、ある意味では怖い妖精だったが・・・


「気がついたみたいだね。でも、私は夢の中でしか、現れないから・・・」

「そう・・・」

(今のところはね・・・)


小さく聞えたが、聞えないふりをしておこう。


「僕の名前は、杉山裕哉」

「ゆうくんね。よろしく」


丁寧な挨拶で、固くなってしまった。

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