第15話「お母さんの思い出 その1」
皆大好き 生レバー
あなたもわたしも 生レバー
居酒屋と言えば 生レバー
☆たまにユッケ☆
焼肉屋でも生レバー
お寿司屋でも 生レバー
生 生 生 生レバー
ユーッケ↓↓
私は女子高生未来人、神野真紀。幼なじみで同級生の橋本直美と一緒に図書館で調べ物をしに行き、様々な時代の怪しげな植物の図鑑を発見した(そしてその植物の写真を撮りに時間旅行に行くことになった)。
植物を巡る時間旅行に夢中になっていた私は、増殖するタイムボールトとワームホールの乱れに気づかなかった。私はワームホールの中から弾き出され、目が覚めたら……
過去の時代に不時着していた!
未来人が来ていると過去の人間に知られたら、タイムパラドックスを招き、時間の流れにも危害が及ぶ。青葉満君の援助で正体を隠すことにした私は、満君に事情を説明し、とっさに「神野真紀」と名乗り、未来に帰る手段を掴むために、満君が毎日暮らしている彼の家に転がり込んだ。
……まぁ、タイムマシンはもう直ったから、いつでも帰れるんだけどね。でも、私は残った。満君とかけがえのない愛を育むために。
そして、彼と共にこの時代の身の回りに起きる難事件を、未来の技術と知識を駆使して解決するために。え? 今まで満君しか活躍していない? 私はただ泣きわめいてただけですって? うっさいわね! とにかく始めるわよ!
過去に行っても時代は同じ、迷宮ありの未来人……
真実は、いつも一つ!
「真紀?」
「あ、ごめんごめん。ちゃんと見てるわよ」
土曜日の晴れた午後の昼下がり、僕と真紀は隣同士ソファーに座って恋愛ドラマを見ている。
「俺達はいつまでも一緒だ」
「えぇ……」
テレビに映っているそのカップルは夕焼けで赤く染まるビーチで身を寄せて抱き合う。筋肉質でダンディーな男の人が、背の低く顔も美人と呼べる程の綺麗な女の人のカップルだ。
こういう男らしい俳優さんを見ると、どうしても自分に劣等感を抱いてしまう。僕ももっと男らしい人間になりたいと思っているから。
チュッ
すかさずカップルが熱いキスを交わした。絶妙なカメラアングルで映される二人の幸せそうな顔。すごい、大人のキスだ……。
「きゃ~💕 素敵♪ ねぇ満君、負けてらんないよ! 私達もやろう!」
「えぇ!? もう……」
僕は真紀の体を抱き寄せ、その唇を奪う。あの男の人に比べたらまだまだ下手くそだけれども、僕は一生懸命真紀の口を潤す。こんなことで一生懸命になるなんてねぇ……。十数秒経った後、ゆっくりと唇を離す。
「……///」
真紀の頬が火照っている。まだドキドキしているらしい。さっきまでのはしゃぎっぷりはどうしたんだ……。僕達は真紀の両親の許しを得て、キスもハグも好きなだけしていいことになった。僕達は今堂々とやっている。
「満足した?///」
「うん。続きは今夜ね……///」
「今日はもうおしまい!!!」
「えぇぇ……」
僕は真紀を軽く叱りつける。毎日キスする度にこっちは心臓が破裂しそうな程ドキドキしている。このままじゃ理性が抑えられなくなるのも時間の問題だ。真紀にはなるべく性的に乱暴はしたくない。
真紀とその……“そういうこと”をするのは、もっと大人になってからだ。大人になるということが一体何なのかは僕にはわからないけど……。
え? “そういうこと”って一体何かって? だからその……/// せっ……セックs……/// いや、言わないよ!!!!!
「ちょっとアナタ、また真紀と満君が! ほら、私達もやるわよ!」
「えぇ!? わざわざ対抗しなくてもいいだろう……」
「何言ってんの! 愛の強さで娘に負けてらんないでしょ!」
「はぁ、仕方ないなぁ……」
その場のノリで愛さんとアレイさんも抱き合ってキスを始めた。とうとうこの家は愛さんまでおかしくなってしまった。どうやら僕達に対抗しているらしい。する必要なんてないのに……。
「アナタ、いつの間にそんなにうまく……///」
「僕をナメてもらっちゃあ困るなぁ♪」
キスを終えた二人。突如愛さんの顔が真っ赤に染まる。アレイさんのキスは舌を巧みに使ったとてもえっちなものだったらしい。流石結婚までしている男女。キスはもはや大人のクオリティだ。
「この続きは今夜……」
「しないわよ!!!!!」
愛さんがアレイさんの頬を思い切りつねる。
「いはははっ、ひょうはんはっへ~」
愛さんとアレイさんも僕達に負けないくらいイチャイチャしてる。
「……」
そんなラブラブな二人を、僕のお母さんは微笑ましそうに眺めていた。
「……」
かと思いきや、眉が垂れ下がった。そのままうつ向いてキッチンの方へ向かう。どうしたんだろう……。何か悩みでもあるのかな?
「満君、どうしたの?」
「あ、いや……何でもないよ」
それからもお母さんの様子は少しおかしかった。なかなか箸が進まなかったり、せっかく作った晩ご飯を食べ残してしまったり、食事中に新婚夫婦ごっこをする落ち着きのない愛さんとアレイさんを、黙ってじーっと見つめたりしていた。
そういえば、時折何かの写真を悲しい表情で見つめていたりもしていたな。結局何をしているのかを聞きそびれ、僕は真紀と一緒にベッドに潜った。
時刻は午前1時頃、僕は突然尿意を感じて目が覚めた。起き上がろうとすると、真紀が隣で僕の腹を両腕でがっちりと挟んで寝ていた。いくらはがそうとしてもなかなか離れてくれない。
「真紀……離してよ」
「んんん……ダメ。好きな人とは……むにゃむにゃ……片時も離れちゃダメェ……なの」
「トイレ行きたいんだけど」
「なら私も行くぅ……」
「えぇ……」
僕は眠気を引きずる真紀と一階のトイレに向かった。お化けが苦手な真紀は僕のパジャマの裾をずっと握ってきた。そんなところが不覚にもきゅんとくる。
ジャー
真紀を暗闇の中一人で不安にさせないために、出すものをさっさと出してトイレから出た。
「終わるまで待っててよ?」
「わかってるよ」
ガチャッ
トイレのドアを閉める真紀。時間がかかることを覚悟した。
「……スン」
「ん?」
どこからか鼻をすする音が聞こえた。真紀かな? いや、今のはトイレの個室からじゃない。僕は周りを見渡す。
「あっ……」
和室の襖の隙間からオレンジ色の光が溢れていることに今さら気がついた。あれは仏壇の明かりだ。おかしいな、点けっぱなしにした覚えはないのに……。
とにかく僕は和室へと向かう。こんな夜中に誰かいるのか? 泥棒か? まさかお化けなんてことはないよね。
スー
僕は襖を少し開け、中の様子を確認する。
「……お母さん?」
驚いた。そこにはお母さんがいた。お母さんは仏壇の前にある座布団を枕にして横になっていた。顔を座布団に突伏させながら。一体何をしているんだ? 具合が悪いわけではないようだけど……。
目を凝らしてよく見ると、座布団の周りに写真がいくつか散乱していた。さっき見ていた写真だろうか。
「うぅぅ……」
「え?」
鼻をすするお母さん。まさか、泣いているのか? もっとよく見てみると、座布団にうっすらと水に濡れたような染みができている。涙の跡だ。本当に一体どうしたと言うのか。
ジャー
トイレの水を流す音が聞こえ、真紀が個室から出てきた。
「ふ~、すっきり♪ ん? 満君何やってるの?」
「真紀! しっ~」
僕は人差し指を口に当てる。大きな声を出したらお母さんが気づいてしまう。
「満?」
上半身を上げ、こちらに振り向くお母さん。もうバレていた。まぁ、トイレを流す音で普通バレるよね。
「咲有里さん? こんな夜中に何やってるんですか?」
真紀が廊下から顔を覗かせてお母さんに聞く。
「こ、これは……その……」
お母さんは涙を拭いながら、返答に困っておどおどする。僕と真紀は和室に入ってお母さんに近づく。
「咲有里さん、泣いてるんですか?」
真紀が心配そうに聞く。僕は座布団の周りに散らばった写真の中から一枚を拾い上げて見た。
「お母さん、これ……」
それはお母さんとお父さんのツーショット写真だった。お父さんが後ろからお母さんの首元に両腕を回して抱きついている。二人とも眩しくて素敵な笑顔だ。
二人とも指輪をしていて、僕が写っていないということは、結婚して少し経った頃に撮られたものだろう。とても幸せそうな写真だが、僕はそれを見た途端、お母さんが泣いていた理由を垣間見た気がした。
そうか、仲睦まじい愛さんとアレイさんを悲しそうな目で見ていたのは……。
「咲有里さん……もしかして……」
パシッ
真紀が何か言おうとした時、僕の手から写真がするりと抜けた。お母さんが取り返したのだ。お母さんは早足で和室を出ていこうとする。
「お母さん!」
僕は大声でお母さんを呼び止める。お母さんは立ち止まり、ゆっくりと僕と真紀の方を振り向いた。
「大丈夫。お母さんは……大丈夫……だから……」
その顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。こんなお母さんの顔はお父さんの葬式以来初めて見る。心も体も悲しみで押し潰されていた。
「お母さん……」
お母さんは階段を上っていく。真紀と二人きりになった和室で、僕は小さく呟く。
「全然大丈夫じゃないだろ……」
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