ラノベの読めない理由となろう系の意義

では、まず皆様に質問です。

貴方はラノベの読み方をどうやって、習得しましたか?


基本的には誰に教わる事なく、ラノベを読んでいたと思います。また、人からラノベを勧められても、読み方まで教わった事もないと思います。

つまり、ラノベは純粋に学校での国語力だけで読む以外ありません。


でも、ラノベは一般小説とは少し違います。何しろ、大概の舞台はファンタジーです。国語では教えられていません。

そのため、小学生ではなかなかラノベは難しいモノです。

そもそも、ラノベはジュブナイル、10代向けですから。


ですが、思い出してください。小学生の頃に皆さん、ファンタジーは読んでいたはずです。

白雪姫、シンデレラもファンタジーです。そして、古典である西遊記も小学生向けにも要約されて、古代の話なのに何処かSF的です。日本でも竹取物語は月へ帰るというスケールの大きいファンタジーです。

さらなる低年齢でも、『かいけつゾロリ』などはメタも含むファンタジーですね。これが長年愛されている、現在進行というのはすごいものです。


つまり、ラノベの読み方はこういった児童文学にふれていく事で、自然と読書力と理解力が、レベルアップしていくのです。これがラノベを読む基礎となっていく。ここは一般小説でも同様ですが。


また近年、「マンガを読めない子供が増えている」と聞きます。

一部のマンガでは小説並みに複雑化しているためです。あと、マンガにもマンガの読み方がありますが、これを教えてくれる人もいません。


『昔はBSマンガ夜話』という番組で、マンガの読み方を教えてくれていたのですが・・・


少し話は逸れますが、作品の主人公とともに読者も一緒にレベルアップ、育っていくスポーツマンガ『スラムダンク』や『キャプテン翼』などの類いも少なくなりました。

これらの作品はスポーツ選手に愛読されているのは、マンガだけでなくスポーツ自体の教科書の側面もあったからです。それだけ分かりやすい構造となっていたのです。


さて、ここで筆者の話となります。

最近のラノベ、特に例として『86-エイティシックス-』が読めないのは、若者文化が理解できないと年のせいにしていました。

果たしてそうでしょうか?


ここで読書力を可視化して考えてみましょう。


まず筆者の読書力はゼロ年代前後のラノベをそこそこ読んでいたので、レベルとしては仮にこうしましょう。


――――――――――――

名前 筆者

読書LV20

得意ジャンル

ファンタジー

☆☆☆

オカルト、伝奇

☆☆

SF

――――――――――――


そして、ゼロ年代以前は『スレイヤーズ』などの単純明快な作風が多かったので、作品としてのレベルも低めと仮定します。


――――――――――――

名前 90'ラノベ

作品LV30

作品要素

王道ファンタジー

☆☆☆☆☆

ギャグ

☆☆☆

シリアス

☆☆

――――――――――――


筆者の読書力はゼロ年代前後では何とか作品を読めるレベルとなります。

むしろ、何とか読んでいたので、そういうレベルを仮定しています。

一応、※数字はイメージです。


ですが、それ以降は色々あって筆者はラノベにはあまり触れていません。


ゼロ年以降のラノベ業界は大きくレベルアップしました。

大きな出来事ではラノベ作家でもある桜庭一樹氏が、2008年『私の男』で第138回直木賞を受賞。


ここでラノベは新文芸、ライト文芸などへシフトしていく事になります。

当然、業界の全部が全部ではないですが。有川浩氏の『塩の街』はこの流れで文芸へと移ることになります。氏もまた、第148回直木賞候補に挙がる存在でした。


これによりラノベ作品のレベルが大きく上がることになりました。

しかし、筆者はそういった作品にふれることなく、レベルはそのままでした。ただ、この流れについて行けなかったのかも知れません。何しろ、ゼロ年代以前のファンタジーは絶滅しかけていたからです。


このあともそんなラノベに触れてデビューを目指す作家達が続くわけです。

そうして、作品レベルだけでなく、高レベルの選考委員に評価されて世に出た、第23回電撃小説大賞、大賞受賞作が『86-エイティシックス-』になります。


この作品は当然デビュー作ですが、選考委員でも絶賛されています。いわば、レベルが高くなったラノベから育ったラノベ作家が出てきたわけです。


――――――――――――

名前 86

作品LV50

作品要素

SFファンタジー

☆☆☆

洗練された中二病

☆☆☆☆☆

次世代セカイ系

☆☆☆☆☆

――――――――――――


低レベルで時代遅れとなった読み方では、筆者が読めないわけです。

そこに気づき、装備を改め/攻略法を見つめ直す事で読む事が出来ました。


元々、筆者はこのタイトルが『エリア88』からきていると思っていました。ペンネームも88ですから、ただ『エリア88』の元ネタ、8.8 cm対空砲が由来ですね。


この作品は他からも影響を受けているようで、『カオスレギオン(著者:冲方丁)』の小説版もその一つ。これには筆者も納得したようです。


文章の癖も強い。近年/はやりの難解漢字やカタカナのルビが多く使われています。

ある種、洗練された中二病文学ですが、これは読み慣れてないと脳内で突っ込みがしたくなって、キツいです。

これは冲方丁氏にも似た感じテイストです。


それに登場人物はシリアスとお花畑なセカイ系な感じで、物語世界も彼らに合わせてくれます。キャラクターありきなお話、そう、キャラクター小説ですから。

ただ、原初のセカイ系ほどセカイらしさを感じないのはハードな世界観のせいなのか、割とご都合主義が先に見えているせいか。ともかく、次世代セカイ系といった方がいいのかもしません。

ただ、一歩間違えるとなろう系にもなりかねない感じはありました。


とにかく、筆者が慣れたゼロ年代前後でのラノベフォーマットとは別物です。それでも、突っ込み所は抜きにしても、高度化したラノベ様式とは言えます。


マンガで例えるのも変ですが、タイトル時点での筆者のイメージは『エリア』に対して、実際は『ノー・ガンズ・ライフ』ぐらい違っていました。

このイメージの違いに気がつかず、序盤で読めずにつまずいていました。


ちなみに、『ノー・ガンズ・ライフ』も独特な語感センスですよね。


また、今回まとめるに辺りで知ったのですが、この作者、女性とのこと。男性好みのガジェットだけに男性と勘違していました。確かに女性といわれると作中、納得する部分があります。『鋼の錬金術師』もそうですね。


ですが、本来、ラノベはあらすじやイラストだけの情報で読むのが普通です。

ここまで事前に情報収集することは不要なはず。

やはり、筆者のラノベ読書力が低いのが問題なのでしょうか?


でも、考えてください。こんなレベルの高い作品ではラノベ初心者には読むのはまず難しいでしょう。

しかも、そういった注釈も説明もなく、ただ評価だけが選考されている。


特に序盤は重い設定の上、独特な文章でこの世界観が掴みにくいです。

いっそ、名作古典小説を読んだ方が楽かも知れません。


この点はレベルが高くなりすぎたラノベ先駆者である、電撃文庫ならではの弊害かも知れません。


先も触れた、『塩の街』も当初、出版社側はハードカバーでの出版を望んでいたとのこと。

ただ、電撃ゲーム小説大賞、受賞作だけに文庫から出たとのこと。それがラノベの地位向上で、ハードカバーになった異例なケースとなった。

そして、『電撃ゲーム小説大賞』であったタイトルも次回は『電撃小説大賞』と名前を変えることになった。

この改名にはそういった背景もあったのだろうか。


高度化したラノベは初心者には厳しいモノになりつつあった。

ですが、なろう系はその点は優しいです。何しろ冒頭はチュートリアル。作品の内容説明、システムの説明を丁寧に女神様などが説明してくれます。

なんと親切なことでしょうか、初心者にはありがたい事です。


そう、なろう系フォーマットは誰でも分かるメリットがあります。

そのかわり、高いレベルの作品作りには適していません。


ここでもあえて、読書力を可視化して考えてみましょう。


――――――――――――

名前 なろう系

作品LV10

作品要素

ノージャンル

☆☆☆

テンプレ

☆☆☆☆☆☆☆☆

俺TUEEE

☆☆☆☆☆☆☆☆

――――――――――――


ラノベに慣れた人には、なろう系は箸休めですが、ラノベ初心者には問題なく読める入門書です。


昔、ジャンプは硬派な作品が多い中で編集者が雑誌に足りない低学年向け/ギャグマンガを求めていたそうです。それが『キン肉マン』だったのです。


ただ、なろう系の弱点はすぐに読者のレベルが作者を超えてしまいます。低レベルである以上、これは仕方がありません。


ただ、『キン肉マン』の読者は逆に作者のレベルにあわせて読む作品です。

作者もその場の盛り上がりを重視でやっているとのこと。

なろう系もこういった配慮をしていると、レベルの低さが逆に武器となります。


その結果、なろう系で物足りなくなった読者は巣立ちした読者は何処へ行くのか。

先に述べた通り「マンガを読めない子供が増えている」と聞きます。つまり、なろう系コミカライズもマンガの読み方を学ぶには適しています。

なろう系コミカライズは実力のあるマンガ家で化けるケースもあり、マンガ読みにも耐えられる作品もあります。


それに、なろう系から『86-エイティシックス-』へのステップアップは少しキツいかも知れません。何しろ、なろう系の読書力では高レベルなラノベは太刀打ちできません。

そもそも、ラノベには明確な初心者向けは提示されていません。読書力に依存する作品を売り出すには『86-エイティシックス-』はある意味、不親切な作品なのかも知れません。


ここもマンガで例えれば、『ドラえもん』の読者が『ドラゴンボール』へ移行するのは問題ありません。ですが、『ドラえもん』から『ノー・ガンズ・ライフ』は難しいかも知れません。少年マンガから青年マンガですからね。でも、SF要素は似ていますが。


そもそも、マンガが読めるようになれば、メジャーであるマンガの方がマイナーなラノベよりも話題性は適しています。無理にラノベにいく必要性はありません。


それに一般作品で肌色が多いラノベも増えましたが、需要があるのでしょうか。マンガの方もきわどい一般作がある中ではあまり意味があるとは思えないのは、筆者が中年だからでしょうか。まあ、中年は素直にエロコンテンツへ行くだけですが。


ですから、ラノベの肌色成分は本当に限られた層でしかないのです。


恐らく、なろう系はラノベ業界には貢献しないのかも知れません。ここらはラノベ編集者の負けと言わざるおえません。


後、余談ですが、ラノベで作家の推薦文はレベルを高くするだけで、マンガの様に有名人ぐらいが評価してくれた方が読者には入りやすいのかも知れません。



散々、この文書を書いている筆者ですが、ラノベは控えめでマンガをメインに読んでいます。

そんな筆者ですが、『86-エイティシックス-』のコミカライズ版も参考に読んだのですが、絵もうまく、出来はいいのですが、酷く味がしない、魂が感じないと感想を言うしかありません。

主要人物は原作のキャラクターデザインに似せているけど、それ以外の人物は漫画家自身の絵でミスマッチになっている。それを含めて、これは原作由来のテイストを引き継いだためと思います。

『86-エイティシックス-』の内容はマンガとしては娯楽性が薄く、コミカライズで顕著になっただけです。

ただ、このコミカライズは欠点はありません。それと同時に特徴もありません。だから、読み終えた後で、本当に記憶に残らない作品。

まだ、腹を立ててつまらないと思う方が、マイナスでも作品を読んだという気持ちにさせてくれます。これはゼロです。


正直、癖のある文章を楽しむ作品をマンガにするのは難しいと思います。だから、読めない苦痛を感じてでも読んだ原作の方が、マンガ版より面白い。これは自分がコミカライズ作品に触れた中で珍しいケースでした。


ただ、『幼女戦記』のコミカライズはすごいです。絵も綺麗ではありますが癖のあり熱を感じ、印象的なシーンでは特に記憶に残ります。ここは作品自体も見せ場を効果的に見せた、理想的なコミカライズだと思います。


まとめとして、レベルが高くなったラノベは大人も読める作品となりました。ラノベ編集者からすれば、ヒット作を作り出した事は大成功かもしれません。ただ、高レベルにより本来の読者層である子供を置き去りにしました。

でも、なろう系はそれを補う形で、読者の中から出てきた存在。



つまり、ラノベ業界は足りない存在を、読者が補完して、読者に売りつけているのです。業界は完全に本来の意味を失っているのです。ラノベはジュブナイル、10代向けですから。その意味を失っている。

だからこそ、なろう系はラノベ業界には貢献しないのかも知れません。


今回は/少しまとまりがないような内容でしたが、皆様どうでしたでしょうか。楽しく楽しめる動画を目指しているのですが、まだまだと筆者共々感じております。


こちらも定番となりましたが、ご意見、ご指摘等は今後の励みにもなりますので、コメントで頂ければと思います。


正直、子供も大人も読める作品というと『銀河ヒッチハイク・ガイド』ぐらいがベストと思います。マンガだと、原点回帰も込めて『ドラえもん』ですかね。そもそも、『ドラえもん』の劇場版は子供だけで見るモノではありません、大人も楽しめる作品でなければ、映画業界としても定番になってないわけです。

先に挙げた『銀河ヒッチハイク・ガイド』も元はラジオドラマでした。そのため不特定多数に聞かれる作品である為、子供も大人も楽しめ作品であるのは当然です。

だから、ラノベ業界はこのままでは閉塞するしかないのです。


では、また。


『42』


――――――――――――――――――――――――

『86-エイティシックス-』の筆者評価

5点満点中 2点


この作品、読めない点よりも、対『電撃小説大賞大賞』に作られたと言ってもいい作品。実際に、『「電撃文庫らしい作品を」との選評を受け』とインタビューに答えている。

本来、小説であれば序盤は分かりやすくなければならないはずだ。

ここもマンガで例えれば、マンガ雑誌『ガロ』だ。つまり、高度化して比較的高い年齢層向けになったのが、電撃文庫である。

そんな作品は万人受けしないのは明確。それをラノベで世に出したのは減点するしかない。

多分、普通のラノベ様式でも他社なら出せたかもしれないが、それだと逆に電撃文庫では駄目という皮肉。


コミカライズをしたマンガ家もこの作品が読み切れてないから、あの出来なのかも知れない。


完全に余談となるが、筆者はセガサターン用シミュレーションゲーム『QUOVADIS 2〜惑星強襲オヴァン・レイ〜』が好きである。

ロボットモノのシミュレーションゲームだけに味方が撃墜されると運が悪いと戦死します。そして、新しい兵士が補充されるという設定。また、レベルアップしてなくとも元から優秀なキャラもいるため、戦死者よりも強いキャラだったりするので結構、シニカルな作品です。

『86-エイティシックス-』と雰囲気は似ている作品ではあるのですが、移植もしてないため、あまりおすすめが出来ないのが残念である。

版権は今、メディアワークスが持っている。

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