第19羽
おはようございますっ!
本日はお天気も良く、何とも清々しい朝です。 きっと今を感じている世界の皆も、私のように明るく、前向きな気持ちになれていると思うなっ。
さて、私事ではありますが、今日は水崎真尋にとって記念すべき日となりました。 実は私……
――――人生、『初デート』なのです……っ!
このまま空くんからお誘いがなく、『幻のチケット』となってしまうかと不安に思っていたら、「真尋ちゃん、週末空いてる?」……だってぇ……。
緩む……つい顔がユルユルになっちゃうぅ……っ!
「母さん、俺の娘がいつになく締まりのない顔に……」
「そうね父さん、今日は休日、学校はない筈だけど……」
あんまり可愛い格好は似合わないけど、ギリギリまでそれを追求したと自負しております!
やはり清純さを出したいので “白” は大事、なので白いセーターを着て、パンツだと私は本当に可愛気がないのでグレーのワンピースを上から着てみました。 ちょっとエプロンぽいのが家庭的で柔らかい女の子を思わせる……かとっ!
今日は前と違って下着の色も覚えてるし―――やんっ♪ そんなの覚えてても仕方ないでしょ、真尋ったら……!
「母さん、ウチの娘、キモいな」
「父さん、春だからよ」
「……お父様、いつもお仕事お疲れ様です。 お母様、産んでくれてありがとう。 真尋――――行ってきますっ!」
きゃーー早く待ち合わせ場所に行かなくっちゃ〜。 もし電車が止まって歩いても間に合うぐらいに行かなくっちゃ〜。
「……休日にも、あったんだな」
「ええ」
「「―――
◆
―――ああ……何もかもが “初体験” 。
こうして彼が来るのを待つトキメキも……。
空くんがデートだと思っているかはわからないけど、私にとってこれは間違いなくデートだ。
どこに行くのかな? ううん、どこでもいい、どこにでも連れてって……。
はぁぁ……待ち遠しいけど、この待ち時間も捨て難い―――
「真尋ちゃん」
「――なぁっ!?」
「ご、ごめん、驚かせた?」
「う、ううん全然」
も、もうっ……! あんなにアンテナ張って歩いて来る空くんを見ようと思ったのに、真尋のバカ!
いきなり失敗だよ、空くんを驚かせちゃっ――――
「………イイ」
「??」
上はネイビーのシャツに少し大きめなサックスブルーの長袖シャツ、下は淡くくすんだピンク色のパンツに白いスニーカー………こんなのまるで、アイドル雑誌の表紙から飛び出してきたみたい………。
「早く来たつもりだったけど、真尋ちゃんには敵わないな」
「あ………」
「ま、真尋ちゃん……っ!」
――――はっ……私………。
「大丈夫?」
「ご、ごめんなさいっ……」
な、なんてことを……。
空くんの私服とあの “天使の微笑み《エンジェルスマイル》” で一瞬意識が……わ、私………
―――空くんにもたれかかっちゃった……っ!
「具合が悪いんじゃないの? 今日はやめて家に送ろうか?」
「ちち、違うの……っ! ちょっと躓いただけで、全然元気だよっ」
「……そう? 無理しないでね?」
「う、うん、私身体頑丈だからっ」
もう、危うくデート終了だったよ……こんな事で初デートが終わりなんて残念すぎる。 しっかりしなきゃっ!
「真尋ちゃんは甘いもの大丈夫?」
「うん、好きだよ」
「良かった、じゃあご案内しますね」
「……はい」
甘いものかぁ。 空くん自体が甘いのに、この上デザートを食べてる空くんなんて、私―――― “目が虫歯” になっちゃうっ………。
こうして一緒に歩けるだけでも嬉しい。 最近ライバル達に押され気味だからね、私だって頑張るぞっ。
◆
「へぇ、可愛いお店」
やって来たのはオシャレな外観のカフェ。 ここで空くんとお茶するのかぁ。
「僕も来たことないんだけどね、色々調べてたら美味しそうだったから」
私の為に調べてくれたのかな?
なんか、こういうの嬉しい。
店内に入り、テーブル席に向かい合って座る。
このお店のオススメはパンケーキらしく、私は空くんと同じ物を注文することにした。
「こういう所ってさ、女の子と一緒じゃないと入りづらくて、真尋ちゃんのお陰で来れて良かったよ」
可愛い。 でも空くんは私よりこのお店に似合うと思うよ。 そしてさりげなく “女の子” 、頂きました。
私は空くんに女の子として認識されている、一つハードルをクリアしたねっ………大分低いハードルですが。
「私はこういう所似合わないと思うけど、空くんが喜んでくれるなら、い、いつでも言って」
「似合わない? どうして?」
どうしてって……それはあんまり、言いたくない……な。 でも、聞かれちゃったし………
「なんか、絵的に……」
「そうかなぁ?」
そう、だと思うけど。
私がちょっと落ち込みモードに入りそうになっていた時、注文したパンケーキが運ばれて来た。
「へぇ、見た目もキレイだね」
「うん。――ん?」
テーブルにパンケーキを置いてくれたウエイトレスさんが何故か立ち止まっている。………空くんを見つめて。
……気持ちはわかるけど、お仕事中ですよね?
まったく、うかつに外に出したくないですねっ!
「ねぇ真尋ちゃん」
「な、なに?」
話しかけられた私はすかさず表情を乙女に戻す。
「写真撮ってもいいかな?」
「あ、うん。 そうだね」
空くんインスタとかやってるんだ、意外だな。
「――えっ……」
「え? 撮っても良かったんだよね?」
「……うん」
撮るって、パンケーキじゃないの? 空くん今……
――――私を撮った………?
「ほら見て」
そう言って空くんは携帯の画面を私に向けて、
「真尋ちゃんとパンケーキ、似合うと思うけどな」
――――っと、止まったぁ……っ!
こ、ここでまた失敗したらデートが終わっちゃう……っ! 耐えるの、耐えるのよ真尋!!
「は、はは、ありがとう」
「あ、そうだ」
「は、はい?」
「真尋ちゃん、私服も可愛いね」
も、無理―――――あぁ、終わっちゃう…………
――――ダメッ!!――――
「い、いただきましょう……空くん……」
「うん、そうだね」
瞬間、今まで見てきたヒロイン達が総動員で “ダメ” をくれた。
危うく空くんの前で “顔面パンケーキ” するとこだったよ…………。
凄く嬉しくて、楽しいけど、
――――持つかしら………私…………。
あ、私も空くんの写真撮りたい――――。
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