第73話 家族旅行

今年もこの季節がやって来た。そう、家族旅行だ。

「お兄ちゃん、風邪薬ならいつでも私が持ってるからね」

「ありがとう、でも、今年は大丈夫だよ」

とお兄ちゃんは笑った。


 今年は、お兄ちゃんが受験生なので、そう遠出はせず、近所のホテルに泊まるだけだけれども、いつもと違う場所に泊まるだけで、気分は違うよね。


 ホテルにつくと、ふかふかなベッドが私たちを出迎えてくれた。

「みて、お兄ちゃん。すごく、ふかふか」

ベッドはスプリングがきいていてとってもふかふかだった。ベッドの柔らかさを思う存分楽しんだあと、荷物をおいて、ホテルの最上階へ。


 最上階が食事スペースとなっていて、このホテルは海の近くなので、海が見渡せる。なんとも、豪華だ。


 夜ご飯はバイキング形式で、好きなものを好きなだけ食べれる。美味しかったので、ローストビーフをおかわりしてしまった。ダイエットあんなに頑張ったのに、絶対今日で体重が元に戻ってしまっていると思う。


 夜ご飯を食べて、部屋で寛いでいると、

「朱里、ちょっと、外歩かない?」

お兄ちゃんが散歩に誘ってくれた。お義父さんとお母さんの方を見ると、お許しが出たので、二人で散歩する。


 夜の海もいいなぁ。波音だけがこだまする浜辺をお兄ちゃんと手を繋いで歩く。

「星も綺麗だね」

お兄ちゃんの言葉に、空を見上げると、星がキラキラ輝いていた。静かな海に満天の星。

それになにより、隣にはお兄ちゃんがいてくれる。それが、とても幸せだと思った。

「大好きだよ、お兄ちゃん」

「僕も、朱里のことが大好きだよ」



 散歩から帰ると、久しぶりの旅行ではしゃいで飲みすぎていたお父さんは、もう眠ってしまっていた。そんなお父さんをみてお義母さんと顔を見合わせて笑った。なんだか、家族っていいな。


  その日、私は幸せな夢を見て眠った。

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