第2話

COCOON




≪カレハ王国≫

この国は、クワコ一族が暮らし

沢山の木々に囲まれた小さな王国で在る。


その小さな王国に、小さな繭の形をした建物が在り、

此処に、この国の王子 “シロ”が、隔離されている。

国では、シロが大きな病気を抱えてるとして。

建物付近では、マスクを着用する事を義務付けられている。

その為、烏は、常日頃マスクを着用し、この国で過ごしている


今日も、いつもの様に、シロのお守を終えた烏は、国王の元を訪ねた。


「シロの様子は、どうだ?」

国王は、ギョロリと烏を睨み訊ねた。

烏に執っては、これも日課である。生まれつき身体の弱いシロの

面倒を見れる存在を探していた国王が、他国の噂を耳にし。

各国で、活躍した元傭兵の烏を、子守りとして、雇い

毎日、半日シロの面倒を見て、その日の体調・状況報告をさせているのだ。


「本日も、変わりなく。今も眠りについております。」

「そうか・・・。」

国王は、深い溜め息を吐き、再び烏を睨んだ。

その溜め息に続く様に、烏は、ゴホンっと、話を続けた。

「王様。シロ様は、今は、落ち着いては、いますが、いつ何時体調を崩されるか・・・。」


「在っては、ならぬ。」

国王は、自分よりも大きな烏を深く睨み、威嚇する様に、言葉を続けた。


「シロは、いずれこの国を任す 王になる者。病気などに負けていては、国一つ守れぬ。」

「それに・・・」

「万が一の事が在ってみろ。高い金を払って雇っているんだ。」

「どうなるかわかるか?」


烏は、表情を変えず頷き。その場を去った。


王がいる城から、立ち去り、人気のない場所まで来た烏は、

とある人物に電話を入れた。


電話越しから、ガラガラ声が鳴り響いた。


『調子は、どうだ?』

電話の相手は、烏が最も信頼を置く オオヒキだ。

「順調ですよ。ご心配なく・・・。」

『そうか。あまり無茶は、するなよ』

「・・・はい。」

『しかし、まさか“戦場の鬼”と言われたお前が、今や王子の子守りとはな・・・。』

「・・・」

『右腕は、まだ痛むか?』

「えぇ・・・時々。」

『そうかい』


2人の会話に少しの沈黙が生まれ、オオヒキが、本題に入った。


『で?どうだ?"例の薬”の効果は?』

烏は、ポケットから いくつかの薬を取り出す。


「ゴホンッ。えぇ徐々に王子の身体を蝕んでいますよ」



【COCOON(コクーン)】

最近開発されたカプセル型の毒薬。

徐々に、その毒が、身体に回り。

成人男性なら半年、子供ならば3ヶ月で、命を落とす。

徐々に効いてくる為、中々COCOONの影響と発覚する事もなく

今、闇社会では、徐々に出回る優れものである。


『そうか。今服用して何カ月目だ?』

「現在2カ月目と、4日。」「恐らくそろそろ効き目が、出てくる頃かと」

『わかった。では、我々もそろそろ動くとするか。』

「・・・了解しました」

『相変わらずお前は、ポーカーフェイスだな』


「はぃ?」

『いや、なんでもない。』

『決行は、お前の合図に任す。頼んだぞ 烏。』


そう言いオオヒキは、電話を切る。

これも烏の日課で在った。


子守りとしてクワコ王国に、潜入し。

COCOONを王子に、飲ませ。その効き目の報告をする。

そして、国の侵入口の確保から、どう攻め落とすかまでも

オオヒキに報告し、その日の為に、動く事。



次の日も、また次の日も。

烏は、シロの所へ行って、王様に報告し、オオヒキに報告。

変わらない日々でも在るが、少しづつ

烏の日常に変化が起きてきた。


それは、王子 シロの容体が急変し、いつもならば

ベットに座って烏の話を、目を輝かせ聞くシロが、

ベットで寝たっきりになってしまった。


その日も、いつもの様に 王様に報告を入れた。


「だからどうしたと言うのだ?」

しかし、我が子ながら、王は、動じる事もなく

いつもの様に烏を威嚇している。


「俺が、何かして “アイツ”の容態でも変わるというのか?」

「いえ・・・ですが」

「四の五の言う暇が在るなら、直せ」

「何年“アイツの子守り”をさせてると想うんだ!?」


烏は、何も言わず頷き、王の間から出て行く。


そして、オオヒキに報告する前に、もう一度

シロの様子を伺いに向かうと。シロは、苦しそうにしている


「傭兵さん・・・」

「大丈夫だよ・・・いっぱいお薬飲んで。すぐ元気になるからね」

シロは、苦しそうでも、烏に笑顔を見せた。


烏は、シロにいつもの様に、薬を飲ませ。

横に座り見守った。

しばらくすると、シロは、眠りにつき

烏は、シロに「おやすみ」と一言伝え、出て行き。


いつもの様に、オオヒキに電話した。


『待っていたぞ。烏。今日は、やけに遅かったんだな』

「えぇ。王子の容態に変化がありました」

その言葉に、オオヒキは、喜びゲコゲコと大笑いした。

『そうか!いよいよだな!』

烏は、少し黙り 再び王国の裏口。

見張りが、入れ替わる時間。などをオオヒキに伝え

オオヒキは、胸を躍らすように

『いよいよカレハの国が我らの領土となるのか!よくやった!』

『薬は、あとどれくらい残っている?』

「あと、7つです。」


『了解だ!明日の朝 我々も出発する!決行は?』

「1週間後の午後21時。最後の薬を王子に飲ませて。」

「電話の合図と共に」

『わかった・・・ゲコゲコゲコ』

『久々の国盗りだ!覆いに楽しもう!!』


そう言って、オオヒキの嬉しそうな声が、止み

電話をしまい。空を見上げる。


それから1週間後に向け、

烏は、王に、王子の容態をしっかり見れるようにと

子守りの時間を 少しずらして貰い。

報告の時間もずらし、オオヒキへの報告は、3日に1回に変更した。


徐々に弱っていくシロに、興味も薄れて行く王。

それでも報告する烏。

無理に笑おうとするシロも、あと5日を過ぎた頃から

喋る事も、少なくなり、ほとんどの時間 眠るようになった。


6日目。


子守りを終え、王への報告を終え

オオヒキに電話で、明日の計画を確認する。

全てが終われば、いつも通り “王の間”で落ち合おう。

あの日の様に。

と、約束するオオヒキ。


そして、電話を終え。

烏は、また空を見上げる。

6日目、カレハ王国最後の夜が、終わる。

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