第6話世界最大最強虫王決定戦・ワールドブロックB
我はどうやら修羅の門を一つ開けただけに過ぎなかったようだ、次からは様々な猛者達が命と勝利をかけて戦う、本当のバトルだ。このバトルに出る猛者の中には、我同様に相手を殺してしまう者たちがいるようだ。そして外から、我らの名を言う声がした。
「ワールドブロックB・出場戦虫紹介
東南アジア代表・スマトラオオヒラタクワガタ、ベトナムオオムカデ、パラワンオオヒラタクワガタ
南米代表・ヘラクレスヘラクレス、ヘラクレスオキシデンタリス
アフリカ代表・オオエンマハンミョウ、ダイオウサソリ、タランドゥスオオツヤクワガタ
北米代表・グラントシロカブト、デザートヘアリー
全十匹。」
そして我は、見えない壁の中で出番を待っていた。我は誰がいいとかそんなのはどうでもよく、ただ戦う事を望んでいた。そして出番が来た、我は先程より広い見えない壁の中に入れられた。そして我と戦う相手が来た、相手は前足が変わった形をしていて後部の先が細く、先端に針が付いている。
「一回戦第二試合」
そして見えない壁の中に、明かりがついた。
「赤コーナー・インドネシア、ベンクール出身・インドネシアの破壊王・スマトラオオヒラタクワガタ!九十八ミリ。」
「青コーナ・カナダ出身・猛毒を持つボクサー・デザートヘアリースコーピオン!百二十ミリ。」
そして我と相手は互いに、見つめあい戦闘態勢に入った。
「レディー・・・、ファイトーーーっ!」
そしてバトルが開始された、我は理性を完全に無くして相手に向かって行った。相手は後部の先にある針を、我に刺そうとぶつけてきた。しかしこの時我は片腹痛いと相手の攻撃など、どこ吹く風と受け流していた。我は相手の胴体を挟んでいた、すると不思議なことに体から水のようなものが出て、相手の動きが停まってしまった。我は見えない壁の角に相手を押し付け、潰そうとした。そしてついに、相手の体は切断され二つになった。
「カンカンカンカンカーン!勝者・スマトラオオヒラタクワガタ!」
我は特に何も感じることはなく、見えない壁から出された。
「つまらん、あれ程の変わり者がこんなにあっさりとやられるなんて・・・。」
我は次の強敵に期待した。
我の出番が再び訪れた、そして我と一緒に対戦相手が見えない壁の中に入れられる。相手は我より二回り小さいが、その小さな体から凶暴な闘気を感じた。
「青コーナ・アフリカ出身・肉食昆虫界の孤高の覇王・オオエンマハンミョウ!
六十三ミリ。」
我は小さきながらも相手を倒す力があることに、敵ながら感心した。
「レディー・・・、ファイトーーーっ!」
そして戦闘開始、我はオオエンマハンミョウを顎で挟もうと襲い掛かった。しかしオオエンマハンミョウは動きがかなり早く、我は捕まえるのにてこずってしまった。
「何て早いんだ・・。」
オオエンマハンミョウは自身の方からも向かってくるが、我が捕まえようとするとすぐに逃げる。我を馬鹿にしているのか、それともこれがオオエンマハンミョウの戦い方なのだろうか・・・?
「ちょこまかと・・・。」
すると転機が訪れた、我の顎を避けたオオエンマハンミョウは足をもたつかせてしまい、その場に仰向けになった。
「よし、今だ!」
我はオオエンマハンミョウを顎で挟み、きつく締め上げた。ギシギシという音が戦場に響き渡る。
「さあ、今から苦痛の先を見せてやる。」
我は更に顎の力を強くした、オオエンマハンミョウは我の顎の中で力なくもがいている。凶暴な噛みつきも疾風の足も、全て封じられている。そして徐々にオオエンマハンミョウも、動きが弱ってきた。
「さあ、これで終わりだ!」
我はオオエンマハンミョウを更に強く挟んだ、しかし体だけはかなり頑丈でなかなか潰せない。挟んでいる間に「カンカンカンカンカーン!」という音がした。
「勝者・スマトラオオヒラタクワガタ!」
しかし我はそれでも挟み続けた、もはや相手を殺さないと勝利出来ないと思っていたのだ。そして我はヒトの手によって、オオエンマハンミョウを我の顎から外されてしまった。その時我はオオエンマハンミョウの死を、初めて黙認した。そこに小さきながらも最凶の闘争心を持つオオエンマハンミョウの姿は無く、ただ黒い塊が転がっているだけだった。
「てこずってはいたがよく頑張った。」
シャイターンの声がした。
「せめて、体に穴の一つでも開けたかった。」
我は悔しい思いで、見えない壁の中に入れられた。
そしてこの戦いも大詰めになった、我が見えない壁の中から出されようとした時、ふとヒトの声がした。
「いよいよ決勝戦まできたか・・・。ヘラクレスオキシデンタリスはこいつに殺されずに勝てるかな・・。」
そして我は木の上に置かれた、ここで戦うのは久しぶりのことだった。そして対戦相手のヘラクレスオキシデンタリスが現れた、ヘラクレスオキシデンタリスを見た時我は強者の風格をオオエンマハンミョウ以上に感じた。
「あいつ、ただ者ではない。勝つためには全力を出さないとだめだ・・。」
そしてついに、惨劇の幕が上がる。
「一回戦デザートヘアリーを撃破、二回戦オオエンマハンミョウを圧倒!スマトラの破壊王・スマトラオオヒラタクワガタ!九十八ミリ。」
「一回戦シード権勝利、二回戦ダイオウサソリを撃破、三回戦ヘラクレスヘラクレスに勝利!無敵の新帝・ヘラクレスオキシデンタリス!百五十四ミリ。」
そして「レディー・・・、ファイトーーーっ!」と合図とともに、我はヘラクレスオキシデンタリスに向かって行った。しかし冷静を失っていたというところを突かれ、一気に持ち上げられてしまった。
「どうだ!」
「我としたことが、持ち上げられてしまった・・。」
我はこのまま落とされる・・・、無意識ながらに確信した時だった。突然今までにない力が沸き上がるのを感じた。
「スマトラよ、そいつを殺せ!憎しみと衝動のままに・・・。」
シャイターンの声を感じた、そして我はこのどす黒い力で羽ばたきヘラクレスオキシデンタリスを宙に浮かせた。
「何だこれは!」
「ふんっ!」
そして我はヘラクレスオキシデンタリスを、叩き落した。しかしヘラクレスオキシデンタリスは、運よく木にしがみついた。
「何だ・・、この世の物とは思えないあの力は・・。」
ヘラクレスオキシデンタリスはおそらく、こう思っていただろう・・。我は一瞬も攻撃のスピードを緩めずに、ヘラクレスオキシデンタリスに襲い掛かった。そしてヘラクレスオキシデンタリスの胴体の繋ぎ目を、顎で挟んだ。
「ぐわわわわーーーーーーっ!」
ヘラクレスオキシデンタリスは全力でもがくが、我は容赦なく、顎で強く挟み踏ん張った。両顎がヘラクレスオキシデンタリスの胴体の中で、くっつこうとしている。そしてその時が来た!
「ガキッ!・・・・・・コトン。」
ヘラクレスオキシデンタリスが胴体の繋ぎ目で、真っ二つになった。この出来事に、外からの声も静かになった。
「・・・・・・。あっ、勝者・スマトラオオヒラタクワガタ・・。」
その後、我は見えない壁の中に戻される直前、こんな声を聞いた。
「何という事でしょう、このスマトラオオヒラタクワガタは昆虫の次元を超えている!もはや殺虫神だ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます