第5話世界最大最強虫王決定戦・ワールドブロックA

 俺は日本ブロックの代表になった、俺と戦ったあのカブトムシも同じだ。ここからはいくつかブロックの優勝者が戦って、その中から更に強い者を決めるらしい。ちなみに俺と同じブロックには、変わり者がいるようだ。足が俺より多い者、前足が変わっている者、更には尻の辺りが尖っている者がいるようだ。

「ワールドブロックA、出場戦虫紹介。

 日本代表・ノコギリクワガタ、カブトムシ、オオスズメバチ。

 南米代表・ゴライアスバードイター

 南アジア代表・グランディスオオクワガタ、アンタエウスオオクワガタ

 東南アジア代表・ヒシムネカレハカマキリ、マレーキャンサースコーピオン、リオック

 アフリカ代表・ケンタウルスオオカブト、デスストーカー

 その他代表・ヨーロッパミヤマクワガタ、イスラエルゴールデン

                              以上十三匹。」

 その後俺は見えない壁の中で、戦う時が来るのを待っていた。そしてその時が来た・・・。

「ん?何だここは・・・、また見えない壁の中なのか?」

 そこは入れられた場所よりも広かったが、相変わらず壁の向こうが透けて見える。そして俺と同じ場所に現れたのは、全身が茶色で独特の体をしている奴だ。こっちを見て、前足を折りたたみながら身構えている。

「一回戦第一試合。」

 という声の後、辺りから闘魂を触発する音が聞こえた。

「赤コーナー・日本国、本州出身・大和の荒武者・ノコギリクワガタ!・六十ミリ。」

「青コーナ・マレーシア出身・カマキリ界一の名ハンター・ヒシムネカレハカマキリ!九十ミリ。」

 互いに睨みあい、動かない。

「レディー・・・、ファイトーーーっ!」

 カーン!と同時に戦闘開始。ところが相手は俺に興味はないと言わんばかりに、横を通り過ぎようとした。

「なに無視しているんだ・・・?だったらこっちから行くぞ!」

 俺は相手の胴体を挟んだ。すると相手はいきり立って、激しく俺の体を前足で挟んだり噛みついたりした。しかし俺は全然痛くは無かった。

「何しているんだこいつ?」

 そして相手は何とか俺の顎から逃げることができた、しかし俺がもう一度挟もうとすると、逃げるように見えない壁に登っていく。俺も登ろうとするが、木とは違ってすごくツルツルしていて登れない。相手が落ちてくることがあったので挟もうと近づくが、すぐにまた上に逃げる。そういう事を繰り返していると、「カンカンカンカンカーン!」という音がした。

「ヒシムネカレハカマキリ戦意喪失により、ノコギリクワガタ判定勝ち。」

 結果的に俺の勝ちになったが、どこかいまいちな戦いだった。そして俺の隣にある見えない壁の中から、カブトムシが取り出された。次の戦いに参戦するようだ。ところが、それっきりカブトムシが俺の前に現れることはなかった。

「あいつ、一体どうしたんだろう?」

 すると見えない壁の外から、こんな声がした。

「それにしても凄いな、あのデスストーカーというサソリ。カブトムシが毒殺されるなんて・・。」

「ああ、胸の繋ぎ目辺りだっけ?あそこに毒針を入れるなんて、神業だよ。」

 言っていることはわからないが、どうやらカブトムシは死んでしまったようだ・・・。

「カブトムシを戦いで殺すなんて・・、一体何者なんだ?」

 俺はデスストーカーがどういう者なのかを、頭の中で考えていた。

 そして俺の番が来た、今までとは違い俺は恐怖を感じていた。

「大丈夫、我が付いている。」

 俺は形亡き者の声に励まされた、そして俺は見えない壁の中でデスストーカーと対峙した。前足が変わった形をしていて、後ろの先が針になっている。

「赤コーナー・日本国、本州出身・大和の荒武者・ノコギリクワガタ!・六十ミリ。」

「青コーナ・アフリカ、エジプト出身・世界一非道な追跡者・デスストーカー!八十四ミリ。」

 互いに戦闘態勢に入った。

「レディー・・・、ファイトーーーっ!」

 勝負開始、しかし見た事もない相手なので、どうすれば勝機を見出せるかが分からない。

「相手の動きが独特だ、隙がつかめない・・。」

 デスストーカーはジクザクに動きながら、俺との距離を詰めてくる。しかし何故か俺と正面から向き合おうとしない。

「どうするつもりだ・・?」

 すると横から攻撃された感触がした、俺は奴の方に向き直ったがデスストーカーは俺から離れていた。

「こいつ・・・、あくまで接近を避けるつもりだ・・・。」

 それならこちらから行くしかない、俺はデスストーカーの斜め前の位置に回った。するとデスストーカーは尻の先を俺に向けて攻撃してきた。

「今だ!」

 俺はとっさにデスストーカーの尻の先を顎で挟んだ、するとデスストーカーは逃れようと暴れた。しかし俺は持ち前の踏ん張りで離さない。そうしていくうちにデスストーカーは疲れ、暴れなくなった。俺も疲れて顎を離したときは、もう俺には向かってこなかった。そしてデスストーカー戦意喪失で俺の勝ち、先程の戦いも入れて俺は未知と戦い勝利した。果たして次は、何者と戦うのか・・・?

 そしてついにその時が来た、ただ戦う場所は何故か木の上にもどっていた。そして戦う相手は、グランディスオオクワガタ。捕まる前に戦った奴に似ていた。

「一回戦ヒシムネカレハカマキリを破り、二回戦デスストーカーに勝利。大和の荒武者・ノコギリクワガタ!六十ミリ。」

「一回戦ケンタウルスオオカブトを撃破、二回戦不戦勝、三回戦リオックを破る。奇跡のパワー戦士・グランディスオオクワガタ!八十五ミリ。」

 そしてお決まりの「レディー・・・、ファイトーーーっ!」。たた俺とグランディスオオクワガタは、互いに動きを見計らっていた。時々顎の先で小突くと、顎で挟みにかかってくる。俺はグランディスオオクワガタよりも体が小さいため、隙を見つけて戦わないと勝てない。下手に動くと負けが決まる。

「よし、横から行くぞ・・。」

 そして横に回り挟もうとしたその時、グランディスオオクワガタはとっさの動きで俺を顎で挟んだ。

「しまった!放せ、放せ!」

 俺はグランディスオオクワガタの顎の中でもがいた、しかし俺は軽々持ち上げられ背負い投げられた。

「ここまでか・・。」

「あきらめるな、小さき猛者よ!」

 形亡き者の声が聞こえたとたん、俺は前足だけで木に捕まっていた。そして体中の力がみなぎるのを感じた。

「これは・・・、俺に勝てというのだな。」

「そうだ、そして運命の相手が来るまで勝ち続けるんだ!」

 運命の相手とは何なのか、しかし俺にそんなことを考える暇はなく、グランディスオオクワガタの横に回り込んだ。

「そりゃ!」

「なっ!先程落としたはず・・。」

 俺は全力でグランディスオオクワガタを挟み、そして期の端へと押した。そして木の端に着いた時、俺はグランディスオオクワガタを勢いよく押した。

「そりゃ!」

「まだだ!」

 しかしグランディスオオクワガタは木の端で粘る。

「ぬおおお!」

 俺は突進するかの如くグランディスオオクワガタにぶつかり、ついに落とした。

「カンカンカンカンカーン!ワールドブロックAの覇者は、なんとノコギリクワガタだ!」

 俺は勝利の喜びに浸かっていた、しかしこの後とんでもないことになろうとは思わなかった・・。



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