第4話世界最大最強虫王決定戦・東南アジア代表選抜

 我はあの日から戦いのより深き道を歩むことになった、そして俺は修羅となるための門を叩く・・。

 我はある日、闇の中にある一つの光を目指して飛んでいた。何故かというと、体がそこに行きたいと自然に思ってしまうからだ。我は大小様々な者たちと一緒に、白く広い場所に止まっていた。そして我は自分より大きい「ヒト」と呼ばれる者らに捕らえられ、何処かに入れられた。我は外に出ようとしたが、見えない壁に阻まれてしまい、外に出られなかった。

「我の自由は奪われてしまった・・・。しかしこれは、今まで殺してきたことへの因果応報かもしれん。」

 我はそう思い、大人しくしていた。


 そしてあくる日、人が不自然なことに我を見えない壁から解放し、木の上に置いた。「これはどういうことだ?」と思っていると、周りから声がした。

「東南アジアブロック・一回戦第三試合」

 そして我の正面には、黄色と黒の二色の色を持つ者がいた。どうやら我らとは違う族のようだ。

「赤コーナー・インドネシア、ベンクール出身・インドネシアの破壊王・スマトラオオヒラタクワガタ!・九十八ミリ。」

「青コーナ・インドネシア、スマトラ島出身・凶暴印のツートンカラー・ラコダールツヤクワガタ!・七十五ミリ。」

 しかし相手は我より小さい・・、結末は見えていた。

「レディー・・・、ファイトーーーっ!」

 カーン!という音と同時に、私の意識が消えた。私は素早く相手の下に回ると、顎で締め付け持ち上げた。我はそのまま木の端の方まで相手を運びながら、締め上げる力を段々強くしていった。我の顎は相手の胸の繋ぎ目を挟んでいたので、メリメリという悲痛な音がした。そしてついに相手の胸の繋ぎ目は破壊され、頭と前足・胴体と二対の足が分離して落ちた。カンカンカーン!というけたたましい音で、我は意識を取り戻した。

「勝者・スマトラオオヒラタクワガタ!」

 我はその後、木から外され再び見えない壁の中に入った。

「我はどうやら戦うために捕らえられたようだ、でも我の戦いを見て一体どうしたいんだ?」

 我はヒトという者の考えが、理解できなかった。

 そしてしばらくして、我は再び見えない壁の中から木の上に移された。今度の相手は三本の角を持つ者だったが、前に戦った奴と比べると角が細長く二つの角の幅が狭い。

「青コーナ・インドネシア、ボルネオ島出身・ボルネオの狂乱神・モーレンカンプオオカブト!九十二ミリ。」

 そして「レディー・・、ファイトーーーっ!」と「カーン!」という二つの合図で、私の意識が消えた。今度は真ん中の角の付け根と頭を挟み、胴体と切断して地の上に投げ捨てた。

「これで二匹目・・・、我は殺した。こんなことを続けてもいいのか・・?」

「そうだ、ずっとそうしているがいい。お前は戦っているだけで十分だ。」

 シャイターンの声がした。

「お前は我に殺しを強要させて、どうしたいんだ?」

「ふん、我はこの世の歴史に「災い」というシミを付けたいだけだ。」

 我はこのまま殺し続けることを覚悟して、再び見えない壁の中に入れられた。それからしばらくして、私は見えない壁の中で人の声を聞いた。

「主任、このブロックもう一度最初からやり直しましょう。」

「何故だ?これから面白くなるというのに・・・。」

「あのスマトラオオヒラタクワガタですよ、あいつはこれまでラコダールとモーレンカンプを殺しています。あの二匹はブリーダーからの借り物で、死んだことを伝えたら相当ご立腹でしたよ。」

「まあそうだな、一応謝りに行こう。で、次の決勝戦はスマトラコーカサスと例の奴か・・・。」

 その人は静かに笑った。

「それで、このブロック戦は中止にしますか?」

「はあ?そんなの無しだ!続行だ、続行!」

「主任、お言葉ですが我々がしているのは虫相撲です。世界からありとあらゆるカブトムシ・クワガタムシが、真っ向から戦うのがこの企画の醍醐味です。あのスマトラは強いですが凶暴すぎです、こんな悲惨な虫相撲は誰も見てくれません!」

 するとドン!という音と直後、凄まじい声がした。

「いいか、よく聞け!ただ真剣に戦っているだけじゃ、今の世には会わないんだよ!どうして残酷なあの古代ローマのコロッセオでの戦いが、民衆に受け入れられたのかわかるか?そう、命がけだからだ。命に勝る宝は無い、だからみんな必死にあらがったり人情に阻まれることなく残酷なことができる。その必死に命を守る姿が、人間らしいからコロッセオの戦いが面白いんだ。だが虫の戦いはあくまで本能的な喧嘩、だから魅力に欠ける。だが、あのスマトラオオヒラタが来てくれて本当によかった。これでこの大会が大いに盛り上がるのだからな。」

 我はショックだった、ただヒトを楽しませるためだけに今まで戦っていただけなんて・・・。

「そうだ、人はときに他の者に強制をしいてそこからでる利益を食いつぶす。その理不尽による怒りを己が力にするんだ。」

 シャイターンの声がした、我は心の中で怒りをエネルギーに変えていた。

「ヒトは身勝手、我の戦いに楽しみを見出して我らをただおもちゃの如く利用する・・。ヒトがそう望むなら、なってやろう!己が苦しみ極まる宿命を受けていたことに、感謝するがいい!」

 我はこの時から、常に狂っていた。

 そして戦いの時が来た、相手は巨大で荒々しい三本角の者。鋭き目つきから、修羅場を数多く、くぐり抜けた相当の強者だ。

「赤コーナー・インドネシア、ベンクール出身・インドネシアの破壊王・スマトラオオヒラタクワガタ!・九十八ミリ。」

「青コーナ・インドネシア、スマトラ島出身・東南アジアの暴力神・スマトラコーカサスオオカブト!百二十五ミリ。」

 我と相手が木の上に着き、殺意の眼で睨みあった。

「レディーー・・・ファイトーーーっ!」

 カーン!と同時に我と相手は一気にぶつかった、相手もかなりの力を持っていて、我は少しづつ押されていった。

「どうした、お前らしくないじゃないか!」

 シャイターンが我を煽る、木の端まで追い詰められた時、ここで我と相手が一時離れる。しかしすぐに相手が向かってきた。

「確実に殺すには、あそこを挟む・・・!」

 我は向かってきた相手を薙ぎ払った、そして相手の上半身が浮いた隙に、相手の胴体を挟んだ。そして溜めていた力を使い相手を締め上げた。相手は前足をばたつかせ顎は少し濡れた。

「ぬおおおおおっーー!」

 更に力を入れると、グシャという音がして相手は動かなくなった。我が顎を放つと相手は、石のように落ちた。

「カンカンカンカンカーン!・勝者・・・・、スマトラオオヒラタクワガタ・・。」

 外からの声は我の力に、唖然としその後大慌てで我は見えない壁の中に入れられた。ここからさらに、修羅の道は続く。









 

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