第4話

「ただいまぁ、母ちゃん。」

…………。

「母ちゃん…?」

俺が家に帰るといつも母ちゃんがおかえりと返事をしてくれるのに、家の中には妙な沈黙が続く。まさか…


俺は家の中を隅々まで探し回る。どこにも母ちゃんの姿はなかった。母ちゃんが持っていた物もなにもなくなっていた。おれは慌てて駆に電話をする。


「なぁ、駆…!」

「ん、どうした?そんなに慌てて。何かあったのか?」

「母ちゃんが…」

駆は俺のその言葉で全てを察したようだった。しばらく沈黙が続いた後、駆はこう言った。

「とりあえず、家の中にいろ。そして絶対謝るなよ。俺が今からお前の家に向かうから待ってろ。」


それから十数分後、駆がやって来た。


「智、大丈夫か…。いや、なんでもない。とにかく、落ち着いて、これからどうするか考えよう。」

「うん。」

「まず、俺らがこの世界を作ったのはいつだ…」


俺らはこの世界での出来事を振り返っていくことから始めた。駆に落ち着けと言われたが母ちゃんを失ってしまったショックがあまりにも大きすぎて、なかなか落ち着けなかった。冷静に考えようとしても母ちゃんとの思い出が蘇ってきて涙が溢れそうになる。落ち着こうと思えば思うほど母ちゃんの姿を頭に思い浮かべてしまって言葉にできない不安や自分への怒りがぐちゃぐちゃになって壊れそうになる。その負の連鎖が俺をどん底へと落として行った。

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