素直になれない妹と勘違いしてしまう姉
幼いころの記憶をたまに夢として私は見る。
そしていま目の前のこの光景も幼かった頃の夢だ。
夜、私が眠っていると不意に体が小さくゆすられて目が覚めた。
「お姉ちゃん!」
「ん・・・どうしたの?」
「トイレ、行きたいけど怖いから一緒に来て」
「仕方ないなぁ」
とその時の私は面倒だと思う反面夜の暗闇に怖がる妹の姿に
可愛いと思ったりもしていた。
けど、そんな妹も今では・・・
「ただいまー」
「お帰り、沙耶」
「・・・・」
私が声を掛けても何も言ってくれないようになった。
最初は気のせいかもと思っていたがそれが何日も続くうちに
私はこう考えていた。
もしかしたら自分は沙耶から嫌われているんだと
だから私も自然と沙耶と同じ空間に居るのを避けるようになり
仕事が終わる時間もなるべく遅くなるように残業になったりして
沙耶と会わないようにする。
「最近帰り遅いけどそうかしたの?」
と母親がそう問いかけてくるときもあったけれどその度に私は
「別にー最近色々と企画考えたりしてるだけだよ」
って答えている。
休みの日も私は、沙耶を避けて部屋で過ごすことが多くなった。
その度に私は胸が締め付けられるように痛む感覚に襲われて
気づけば涙を流していた。
そんな事をし続けて二年くらいたったある平日の深夜に
私がいつものようにお風呂から上がって次の日の準備をしていると
突然ドアを開けて沙耶が私の部屋に入ってきた。
「沙耶?」
「・・・」
「どうしたのこんな時間にはやく寝ないと寝坊しちゃうよ?」
自分でもわかるくらいに早口でそんな言葉が出てくる。
私の言葉に沙耶は黙ったまま私を見つめている。
数分程度、沈黙が流れていて私がその沈黙に耐えかねて
次の言葉を紡ぎだそうとしたその時、
「なんだ・・・・・・るの?」
「え?」
沙耶が小さく何かを呟く。
なんて言ったのかを聞き取れずに私が黙っていると
いきなり沙耶が私に抱き着いてきて私と沙耶はそのままベッドへと
倒れこんでしまう。
「さ、沙耶、一体どうしたの?」
「なんで、私の事避けるの?」
「な、何のこと?」
と私がとぼけると沙耶は私の事を見下ろしながら
「お姉ちゃん、私の事嫌いになったの?」
「嫌いになってなんかないよ、ただ」
「ただ、何?」
「沙耶、私と全然話してくれないし声かけても
何も言ってくれないから、だから私の事嫌いだと
思ったから私は沙耶と距離を置こうとおもって」
「違うの、私はただお姉ちゃんの顔を見ると言葉が出てこなくて」
という沙耶の言葉に私は耳を疑う。
つまり私は勘違いしてしまって沙耶の事を苦しませてしまったという
事になるのだから。
「沙耶、ごめんね私沙耶の事好きなんだでも沙耶の
行動で勘違いしちゃって」
「私も、お姉ちゃんの事大好きで、でもそれをちゃんと
言えなくてそれでお姉ちゃんが急に私の事避け始めたから
嫌われちゃったのかとおもって聞きにきたの」
「私は沙耶の事が好きよ誰よりも好き」
「私もお姉ちゃんが好き、お姉ちゃんの事が大好きなの」
という沙耶に私は胸が高鳴り鼓動も早くなるのを感じながら
沙耶を抱き寄せる。
沙耶も私の事を抱きしめ返してくる。
そんな沙耶に私は愛おしさを覚えるとゆっくりとキスをする。
私が離れるとすぐに沙耶は私を抱き寄せて再びキスをしてくる。
「お姉ちゃん、大好き」
「私もだよ沙耶」
とお互いに気持ちを伝えて私と沙耶は手をつないだまま
いっしょのベッドで眠った。
もう二度と沙耶に悲しい思いをさせたくないと私はまどろみに
意識を預けながらそう自分の心に戒めた。
百合短編集 時雨パーカー @nekomiyakaname
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