魔法人形と医療兵の少女(2/3)

最後の敵が倒れ伏したのを確認するとシラヌイは刀を二、三回振って血を落とし

鞘に仕舞うと地面に座り込んでいる仲間に話しかけた。


「お二人共、けがはありませんか?」

「は、はい撃たれそうだったんですが、その前にシラヌイさんが

敵を殺してくれたおかげで無傷です」

「貴方の方は・・・」

「ええ、特にけがはしてないわ。礼を言うわ

「ちょっと、アリサ!えっとすいませんこの子素直じゃなくて」


と片方の眼鏡をかけた少女がそう言うとアリサと呼ばれた金色の髪に

頭の後ろに真っ赤なリボンを付けた少女はシラヌイから顔をそむけた。


「特に気にしませんよ、本当の事ですからそれより、もうすぐ本部が

こちらに迎えのヘリをよこすと思いますので待つとしましょう」

「そうね、ところで他の隊員は?」

「私以外の隊員は出血多量、又は爆発の際の痛みによるショックで

息を引き取っておりました。」

「そう、まあいいわ。私達第4部隊は今回が初の戦場だったわけだし

死んでしまうのは仕方のないことよ」

「むしろ、私達だけでも生き残っているだけましだよね」

「ええ、そうねとりあえず移動するわよ魔法人形」

「移動?何処に行くのですか」

「いくら迎えのヘリが来るとはいえどもここは戦場よ?

その間に敵がここに来る可能性もあるわ、その前に死んだ隊員たちの亡骸から

せめて使える弾薬と武器後は、遺族に渡すためにドッグタグを回収するわよ」

「了解、現在の第四部隊隊長をアリサさんに変更し登録します。」

「ええ、シラヌイは辺りの警戒をしながらついてきてそれでスズは私と

シラヌイの間ね、貴方は医療兵なわけだしやられたら困るもの」

「りょ、りょうかい」


と言ってスズはシラヌイとアリサの真ん中に移動する。

そしてそのままアリサ率いる第四部隊のはそのまま死体のある地点まで進んだ。

死体は特に一つも欠けることなくそのままだった。

アリサは銃を構えたまま周囲を警戒しつつ死体の傍まで近づくと

シラヌイに身振り手振りで死体にトラップが仕掛けられているかを聞いた。

シラヌイはゆっくりとしたいに近づいて、魔術を行使した。


(魔術的な地雷やトラップの類は無し、アナログも確認できず、クリア)

「確認できました、しかし一応私が気づかないように仕掛けられている

可能性もありますので離れていてください」

「ええ、任せたわよ」


といってアリスはスズと共に少しだけ離れた。

そしてシラヌイは隊員の死体を探り始めた。

しかしトラップの類は確認できず何事もなく終わった。


「回収完了。」

「よくやったわシラヌイ」

「ねえ、二人共本部からの通信だよ」


とスズがいうと二人の耳に声が響いた。


「こちらは帝国本部。第四部隊応答せよ」

「こちら第四部隊隊長のアリサよ。本部迎えのヘリは?」

「それなんだが、何者かの攻撃により撃墜された。」

「なんですって?その敵は今どこに」

「敵の種類はランチャーとガトリング装備の二足歩行型機械兵だ。

そして現在は・・・そちらに向かっている!

どうにかしてそいつを撒きこちらの指定したポイントまで向かうんだ」

「・・・了解。」


と言いアリサは通信を切った。

そして先ほどシラヌイが地面に置いた隊員たちの持ち物をポーチに詰め込む。


「二人共、行くわよ!」

「残念ですが私はいけません」


そうシラヌイが呟いた。

それに対してアリサはすぐさま止まり声を掛けた。


「何言ってるの!?早く・・・」

「足止めしますので早く行ってください」

「そんな、ダメだよシラヌイさん!勝てるわけないよ」


とスズがそうシラヌイに言う。

そんなスズの頭をシラヌイは優しく撫でる。


「いいんです、私はいくらでも替えのある魔法人形です。

けれど、貴方達は死んでしまえばそれっきりなのです」

「でも、見捨てられないよ」

「ならば、私のコレを持ち帰ってください」


と言ってシラヌイは自らの頭から一つの棒を取り出しスズへと差し出した。


「これは?」

「私の記憶の媒体です。それさえあればまた会えますので、言ってください」

「あう、けど」

「行くわよスズ」

「アリサちゃん?」

「記憶媒体があればシラヌイは再生させられるだから、いくわよ」

「・・・・シラヌイさん、頑張って生き残ってくださいそしたらその時は」


とそこまで言いかけるとスズはそのままアリサと共に走り去る。

そしてシラヌイがそれを見送ると後ろから木をなぎ倒す音が響いた。

シラヌイが振り返るとそこには肩にランチャー両腕にガトリングのついた

二足歩行の巨大な機械が雨に打たれながら静かにたたずんでいた。


「敵生命体ヲ補足。攻撃ヲ開始シマス。」

「悪いのですがこの先には行かせません!」


といってシラヌイは腰の刀を抜き両手に逆手で持つと機械に向かって走り出した。


戦場に巨大な銃声が響き渡り雨はさらに激しさを増す。

魔法人形がどうなったのかそれを知る者はごくわずかだ。

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